追憶2
あの後、俺はあの子のことについて調べた。
何せ、手がかりはメガネの子ってだけで。
くっそ、もー少し注意深く見とけばよかった、襟とか!!
そしたら、学年とかわかったのにさ。
クラスでふて寝してると、俺の前の方の席に、あの子がいた。
隣でくっちゃべってる山下を無理矢理彼女の方を向かして聞いた。
「あれ、誰?」
「同じクラスの"市ノ瀬みか"」
くだらないとばかりにまたおしゃべりに戻った。
"市ノ瀬みか"・・・。
メガネの子の手帳の中の一つの項目に、2重丸を書いた。
そうすることで、彼女とどこか共通点を見出せるような気がした。
「・・・で、"天使"は見つかったのかよ?」
話が終わったのか、山下がこちらに話しかけてくる。
「ああ、見つかった」
市ノ瀬の方を見ながら、俺は答えた。
「おい・・・、まさか"天使"を市ノ瀬とかいわないよな?」
「・・・なんでだ?」
「・・・はぁ」
何やら、盛大に溜め息をついている。
気になって、山下を見ると、頭を下にもたげて、やれやれといった感じで
「・・・お前、ほんっと、世間知らねぇよなぁ・・・」
「なんだよ、はっきり言えよ!!」
「・・・あのな、"市ノ瀬みか"は学年1,2を争う秀才だ。
そして、とっつきにくい。
別に何をしたって訳じゃないが、はっきりいって、付き合いにくいタイプだな。
なに考えてるのかわからないしな・・・」
「そんなの、付き合ってみなけりゃ、わかんないじゃないか!!」
「・・・」
呆れているのか、そうではないのか。
俺をじっと見ているが、やがて降参だとでも言うように、
「市ノ瀬と話したいなら、部活変えるんだな。
確か、市ノ瀬の入ってる部活、人数不足だっていってたぜ」
「マジマジ?サンキュー、貴重情報ゲッート!!イエー」
「おい、話は最後まで聞け。
市ノ瀬の入ってる部活は"百人一首部"だぞ、お前の嫌いな古典だ」
その時、俺の世界は一瞬止まった。
◆◆◆
結局、陸上部に退部届けを叩きつけ、百人一首部へ入部した。
陸部の顧問は最後まで俺を引き止めた。
しかし、あんなこと人に言えるわけでもなく。
「つまらなくなった」
とだけ、言っておいた。
百人一首部は、本当に人がいなかった。
顧問と市ノ瀬と他3人の計5名。
しかも、ALL女!!
でも、入っちまったものは、しょうがないよな?
正直、百人一首の意味とか文法とか勉強するのはつまんなかったし、わからんかったし・・・。
けどさ、百人一首で遊ぶのは意外と楽しかった。
市ノ瀬の優しいところとかも見られたし。
山下の言うとおり、はじめはとっつきにくいかな?とか思っちまったけど、
話してみればただわからないだけみたいだった。
ほら、俺たちって男と女じゃ何話していいかわかんなくね?
それで、話さないだけだったんだ。
市ノ瀬とは結構仲のよい友達になれた。
市ノ瀬よりもいっぱい札をとるために、嫌いな暗記も頑張って、やった。
そして、卒部する最後の時、初めて市ノ瀬よりも多くの札をとれた。
このとき、俺は市ノ瀬に告白することに決めた。
最初から、そういう風に決めていた。
やっぱ、彼氏・彼女の関係になるなら、同じガッコの方がいいじゃん?
市ノ瀬と同じガッコへ行くために、嫌いな勉強も頑張った。
ギリギリだったけど、合格した。
(もちろん、落ちることも考えて他のガッコも受けたけどさ)
卒業式の日、俺は市ノ瀬に告白するはずだった。
けれど・・・。