表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハッピーエンドじゃ終われない  作者: りゅう
2年生
40/44

修学旅行って、二年でありましたね。

「今年の修学旅行はハズレだよな」

「そうだね。今年に限って、京都・奈良・宝塚なんて…。去年は北海道だったのに」

「なんで宝塚の観劇が修学旅行に入ってるんだ?芸術を修めろってことかもしれないけど、私たちは違うよね」

上記の会話は、王子、鈴木さん、俺の順番である。

そう、修学旅行の行先について文句を言っているのである。

文系の一部を除いて、進学校であるS女は基本的に芸術系の授業は二年以降ないのである。一年の時は選択制で、美術・書道・音楽の中から一つを選んで学んだ。俺は書道を選んだ。なぜなら、一番楽そうなのは音楽なのだが、音痴なうえに楽譜が読めないので、大変になることが目に見えていたからだ。ちなみに、小学生のころ、片桐君が歌うと音が狂うから口パクにしてよ、と言われたくらいである。

まぁ、今はそこまででもないが、ちょっとしたトラウマ級だ。それ以来、人前で歌うのは、苦手になった。

気心知れた仲だったなら別にいいのだが、クラス全員の前で歌うとか、公開処刑過ぎて泣けてくる。

と、話がずれたが、今は修学旅行の話だ。

LHRの時間を使って、修学旅行での班をつくり、行先について話し合う時間である。班は3名から6名の間でつくることになり、俺、王子、鈴木さんの3名で班になることになった。ちなみに、ホテルも同室である。

冒頭で話した通りだが、なぜか俺たちの代の修学旅行先が北海道から京都・奈良・宝塚に変わってしまったのだ。噂によると、宝塚ファンの先生が、せっかく宝塚階段と呼ばれる階段のある学校なのだから、宝塚を見るべきだと主張したからだと言われている。

はっきり言おう。俺は宝塚に興味ない。というか、宝塚階段があるからって見るべきとかおかしいだろ。単純に女子高だから通称でそう呼ばれているだけで、正式には中央階段という名前なのだから。

というわけで、文句たらたらなのである。この近隣の中学生は、みな、中学校の修学旅行が京都・奈良だったのだから仕方ないだろう。俺だって、京都・奈良だったから、どうせだったら、違うところに行きたいと思うのが人情だろう。

一日だけある班別自由行動に関して、どこを見て回るかのテーマをまず決めていた。なにせ、修学旅行。額を修める旅行なのだから、帰ってきたら、テーマ別に発表も行わなければならない。適当なテーマにすると、発表の時に困るのは俺たち自身なのだ。

「うーん、月並みに新選組とかどう?私中学の時に調べたから、だいたいわかるし」

「へぇ、キリ、中学の時のテーマ新選組だったのか。俺は血天井を題材にしたオカルトをまわったよ(笑)」

「オカルトで大丈夫だったの?」

「私の方がまともなテーマじゃん」

「中学のころに同じ班になったやつが、いわくつきのところ周りたいってゆうからさ。そうなったの」

「そうなんだね。そういうテーマも面白そうだね」

なんて、雑談に入ってしまって、少しも話が進まない。

他の班も同じようなものだったらしく、来週までにテーマを決めてくることで授業は終わりを告げた。

「じゃ、俺部活だから」

そういって、王子は颯爽と去っていき、鈴木さんも塾があるとのことで、また明日の昼休みに話し合うことに決まった。カルタ部は大会前以外は基本的に週一なので、暇なのは俺だけなのだ。

さて、俺も帰ろうかななんて思っていると、教室に里美がやってきた。

「キリ!今帰るところだよね!ちょうどいいから来て!」

なんて、腕を引っ張られて、教室を後にする。

「片桐さん、さよなら」

「また明日ね」

なんて声に応えながら、里美と一緒に部室へと足を運んだ。

そう、今や教室で俺の居場所ができていた。王子だけではなく、鈴木さんとも一緒にいることで、王子親衛隊からにらまれることが少なくなり、教室でも挨拶をする子や、宿題を教えあうことさえできるようになった。これもひとえに王子と鈴木さんのおかげだ。今を楽しもうと、今までは避けていたクラスメイトとの接触も、今はやっている。俺が今を楽しむためだ。クラスメイトにとってその他大勢の一人にしかすぎないけど、でも、俺が楽しめるからいいのだ。

部室に着くと、部活日でもないのに、悪と塚本さんがいた。二人は教科書を開いている。

「二人とも、連れてきたよ!」

「ナイスよ、里美」

「ありがとうございます、里美さん」

わけのわからぬまま、俺は部室に入り、悪と塚本さんの前へと連れられた。

どうやら、数学のテキストをやっているらしく、わからない問題があるらしい。ちなみに里美は数学からドロップアウトして、その代わりに美術を選択している。

「さっそくで悪いんだけど、この問題わかるかしら?」

悪がテキストの問題の一つを指し示す。

それは、数列の応用問題で、単純に考えるとひどく時間のかかる問題であった。

「へえ、文系って今ここやってるんだな」

俺は、ノートを取り出して、解き方を書いていく。

実は、人に説明するのって苦手だ。数学の場合、俺は感覚で解く部分が多く、一瞬わからない問題でも、なんとなく式を浮かべてやっていくと公式が思い出され、勝手に解けてしまうタイプなのだ。

「はい、できた」

そういって、ノートを差し出すと、悪と塚本さんが感心したように俺を見る。しかし、里美はというと。

「なんで説明しないの?こんなんでわかるの?」

と、数列をやっていない里美には公式がわからないらしく、ちんぷんかんぷんみたいであった。

しかし、そんな人間に教えられるほど、俺も頭がよくないので、教科書を取り出して、公式を見せた。

「ここの式はこの公式に当てはめるんだけど、その前に…」

こちらが親切に教えてやってるのに、里美は興味がないのか、つまらなそうに中断させた。

「そーゆーのいいから。悪と茜がわかるようになってるか知りたいだけだから!」

むー、人が説明してやってるのにその態度はどうかと思うぞ。

「大丈夫ですよ。キリさんの解き方、わかりやすいですから」

塚本さんがそっとフォローしてくれる。

「そう?茜が言うなら間違いないか」

そう、塚本さんは副部長なのに、部長の悪より信頼されている。だいたい、意見がわれたとき、塚本さんが意見を調整して、まとめ役をしてくれるのだ。これは、きっと穏やかででも芯のある塚本さんの人柄のせいなのだと思う。そういうところは、素直にすごいと思う。

数学の問題もひと段落付き、お礼にと自販機で買ってもらった紙パックのジュースを飲みながら、修学旅行の話になった。

「悪と茜は同じ班になったんだよね。テーマは決まった?」

「まだよ。だいたい、なんでまた京都・奈良なのかしら?どうせなら北海道に行きたかったわ」

「そうですね。京都・奈良も素晴らしいですが、新しい場所に行きたいものですよね」

「あたしは、宝塚楽しみだけどなぁ。一生に一度くらい見てみたくない?」

「そういうもんか?私はあの厚化粧が怖くて好きじゃないけどなぁ」

「キリはお子様だね。あのお化粧が宝塚のいいところじゃん」

などと、会話をして、下校時間まで雑談をして過ごしたのであった。

今まで、里美に強制されて残っていた雑談の場も、今日は本当に楽しかった。気の持ちようで、全然違うんだとはっきりと思った一日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ