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ハッピーエンドじゃ終われない  作者: りゅう
2年生
27/44

どうせ、そうだってわかってたさ。

期末テストの結果がすべてわかり、手元の成績表は過去最高順位を記録していた。

今まで、400人中150番台だったのが、58番へと上がっていた。(ちなみに、入学直後の実力考査は含まない。県内屈指のM高に受かった実力は、ラッキーだったとしても高かったのだ)担任に、成績表を渡されるとき、片桐はやればできるんだから、この調子で頑張れと言われた。

ほくほくした顔をしていた俺が気になったのか、王子にデコピンされた。

「痛いなぁ。なんだよ、王子!」

「顔が緩みまくってるから、カツ入れたんだよ。なんだ?そんなにいい成績だったのか?」

よくぞ聞いてくれたと俺は、成績表を王子に見せつける。

「じゃん、なんと100番近く成績が上がった!」

「おー、おめでとう!」

王子が俺の頭をよくやったとばかりになでる。それに気分を良くした俺はもっと褒めろと言わんばかりに聞き返す。

「王子はどうだったん?」

俺よりは下だろうと根拠のない自信を持っていた。

「いつも通りだよ」

と、成績表を手渡してきた。そこには、21番。俺よりかなり上の成績を示していた。口をパクパクさせて成績表と王子を見比べる。

「鈴はもっと上だぞ」

と、絶望的な数字を耳元でささやかれた。学年順位2番。それが鈴木さんの今回の成績らしい。

なんと鈴木さん、1年の頃から学年一桁から落ちたことがないという。あまりの次元の違いに俺は、うなだれる。そうだ、バカが少し頑張ったって、バカからなかなか上には上がれない。忘れていた事実を思い出す。

「まぁ、受験までまだ時間あるから大丈夫だよ」

そういって肩を軽く叩かれるが、俺はどう反応をすればいいかわからなかった。

受験。俺はどうなるのだろうか。

今は、麻衣として女子高に通っているが、本来俺は男だ。このまま受験などできはしない。

麻衣が大(俺)として、留学しているというが、彼女はどうする気なのだろうか?いつまでもこのままでいられるわけではないのだ。

家に帰って母親に聞いてみるかと、俺は思考を放棄した。


終業式をするために、講堂に移動する。王子と鈴木さんは横で、夏休みにどこか行きたいねと話している。ちなみに俺も強制参加っぽい。別にいいんだけど、二人で行っても罰は当たらないよ?

出席番号順に並び、椅子に座って長い校長先生のお言葉を頂く。夏休みははっちゃけるなよという話だ。あとは、こんな本を読んでこういう風に思ったから、君たちも社会に向けてうんぬんかんぬん。

うん、正直右から左に声が通り抜けて、頭に残らない。あくびを噛み殺しながら明日から始まる夏休みに思いを馳せる。

かるた部は夏休み中も一応活動をするらしい。秋に大会があるので、その練習である。先輩も抜けてしまい、後輩もいないかるた部はとうとう4人だけの活動となってしまった。もう何度も練習をしているため、お互いの札の置き方のくせや得意不得意の札などわかりきっていて、あまり練習に意味はないのではないかと思っていたりする。大会になるといろいろな癖をもつ人たちと当たるから、逆に練習相手を固定してしまうとそれに慣れてしまい、取りづらくなるように思える。俺の勝手な言い分だけどね。

ちなみに、4月に新入生歓迎会で部活紹介という名の新入生獲得合戦があったのだが、宮本先生がそんな行事があったことを忘れていて、気が付いた時には申請期間が過ぎていて、参加できなかったのだ。その結果、新入部員0という状態になってしまい、来年俺たちの引退をもってかるた部は廃部が決定している。おそらく、1年生はかるた部という部活があること自体知らないだろう。

そんなことを考えていたら、耳につんざくようなブーイングが聞こえてきた。

「ふざけんなよ!」

「スカート短すぎるだろ!」

なかなか口汚く罵っているのは、校則違反で何度注意されても化粧をしてくるギャルっぽい子たちだ。ほかのおとなしい子たちも不満を口に出している。

なんなんだとステージを見ると、そこにはブレザーの見慣れない女子用と男子用の制服を着ている女子2人がポーズを決めて立っていた。

先生たちが生徒を静かにさせた後に響いたアナウンスによると。

来年度の募集から男女共学になり、それに伴いステージで着ている制服に変更になるということである。今、俺たちが着ている制服はセーラー服で、校則によりスカートは膝が隠れる長さとなっている。それを不満に思っている生徒は多く、普段はゴム製のベルトで長さを調節して膝が見える長さにしている子をよく見かける。風紀チェックの時に、スカートの長さを戻せるようにだ。強者になると、スカートを切って、短くしている子もいるのだ。そんな中で、新しい制服のスカートの短さに激怒しているのだ。抑圧された不満を一気にぶつけたのだろう。

だが、お前らはそれでいいかもしれないが、俺は違う。

男女共学、だと?

俺はこの女装生活からはれて男に戻れると希望を抱く。共学になれば、俺は堂々と男の制服を着て歩けるのだ。スカートの長さなどどうでもいい。

しかし、男女共学になるのは来年の1年からで、今の1年、2年に男子が入ってくることはないこと。また、制服は今のままセーラー服であることが説明された。

一瞬見えた希望は、すぐに潰えてしまったのだ。俺は、心の中で涙を流したのは言うまでもない。

どうせ、そうだってわかってたさ。

その後は、特にトラブルもなく無事に終業式は終了した。


教室で、王子と鈴木さんとで夏休みの予定のすり合わせをして、みんなの部活や習い事が被らない日に遊ぶことに決定した。あとはメールで連絡を取り合うのだ。

部活に顔を出し、いつも通りに練習をした後で、今日で最後の活動となった先輩を送り出す。

「今までありがとうございました」

2年生代表として、悪が先輩に花束を渡す。

「これで最後だと思うと寂しいけど、楽しかったよ。君たちも頑張るんだよ」

そういって、先輩は軽く笑って去っていった。

俺が男だということを誰にも言うことなく。結局のところ、先輩がどこまで俺のことを大だと疑っているのかわからない。けれども、誰にも言わなかったということは、それが答えなのだ。疑わしきは罰せずというやつなのだろう。

先ほどまで先輩がいた空間を見て、俺は奇妙なさみしさと安堵を感じていた。


その後、かるた部新体制として役職を決めたのはいいのだが、なぜか俺は会計を命じられた。部長はもともと悪だと決まっていたのだが、一番めんどくさい役どころを俺に押し付けたのだ。拒否権はもちろん存在しなかった。副部長は里美が立候補して終わりを迎えたのだが。宮本のやろうが、塚本さんだけ役職がないのはかわいそうだから、副部長にしようかと、勝手に役職を増やしていた。副部長は実質何もやることがないので、いてもいなくてもいい存在なのに!!ちなみに会計は部費の管理はもちろん、試合の記録、雑用などマネージャー的な立ち位置なのだ。

どうせ、俺の立ち位置はそんなものなんだ。わかってたさ!!


ストックがなくなったため、次回更新予定は土曜日となります。

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