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ハッピーエンドじゃ終われない  作者: りゅう
2年生
24/44

あっちの世界に行きかけてる!?

俺の疑問は母親によってすぐに解消されるとともに新たな問題が出てきた。

俺の従妹の麻衣はアメリカに留学中で、大として過ごしているらしい。なんでも、男装に憧れていたため、大手を振って男装できる今を楽しんでいるとのこと。もともと顔もそっくりなのでバレてないし、バレたとしてもニューハーフとして過ごすつもりだから問題ないとのことだ。

いやいやいや、大問題だ。なんで俺がニューハーフ設定になってるの?というか、大がアメリカに留学中なら、たまに出身中学とかに出没して、秀と走っている大はなんなんだ?ドッペルゲンガー?

「そんなの県外の単位制の学校通ってて、部活には入ってないでいいじゃない」

と母親の投げやりな言葉を採用するよりほかなかった。一応、中学の時に陸上で全国に行った俺は県内では有名で、県内の高校に進学したことにするとすぐに調べられるだろう。県外の単位制の学校ならば、秀のような真面目な奴の知り合いはいないだろうから、確かにその手は使える。

どの県かはぼかして、大は県外の単位制の学校に通い、走るのは今は趣味だという設定を秀に教えておいた。

具体的にどこの学校だとか、部活があるなら入るべきだとか、従姉妹としてどう思ってるのかなどなど、超長文メールが来たのでゲンナリした。

そもそも俺は現役を離れて三年になろうとしている。たまに秀と走っても、流すだけならともかく、真剣勝負は望めない。あいつが必死に努力して得たものに簡単には追いつけない。かと言って部活に入るのは不可だし、クラブに入るには試験もある。今、片桐大という存在は留学中だから、身分証明ができないから、受験すらできない。


走るのは、風を切って少しずつ肉体が削られ、俺という剥き出しの存在になるようで好きだ。トップスピードに乗った瞬間、景色が変わる気がする。ゴールテープを切るあの感覚も格別だ。走り終わって、息を整えている時に、安堵と寂しさが混じる。

陸上から離れてわかったことは、俺は走るのが好きだってこと。苦しかったり、どうしようもなく怖かったりするけど、それでも好きなんだって、思い知った。

けれど。

もう、勝負という名の舞台には立てない。

頑張れば頑張るほど、心が、周りから離れてしまう。

陸上という小さな世界だけなら、もしかしたら生きていけるかもしれない。けれど、学校という少しだけ大きくなった社会には、馴染めなくなる。期待という名のプレッシャーなら耐えられたかもしれない。けれど、悪意に晒されるては、生きていけない。

失敗をしてしまった後の失望からの悪意に俺は耐えられなかった。食欲が失せ、眠りが浅くなり、どんどん削られていく体力。精神的にも肉体的にも、人前で走ることができなくなった。あの時は、俺に期待も失望もしない、山下のようなクラスメイト、何も言わず受け入れてくれた百人一首部のみんな(ただ単に興味がなかったともいう)、そして、一ノ瀬さん。

それらの存在に救われた。食べるのも眠るのもうまくできるようになって。人前でも軽く走れた。

俺がもっと上手に人間関係を作れていたら、違ったかもしれない。でも、走り出したら、止まれない。負けず嫌いだから、夢中になって走り続ける。その時、周りに目がいかなくなって、人と上手に関係をつくれる自信がない。

今が、すごい楽だ。

好きなように走れるこの環境が、楽だ。このぬるま湯に浸かっていたい。


こんなこと、秀に言えるはずもなく。

大には、今、何を言っても届かない、とだけ伝えた。


さて、今日1日、文化祭頑張るか。

主に片付けを。

そうだよ、店番以外はサボる気だよ。

王子と鈴木さんのイチャイチャを見る趣味はないんだ。


そんなこと、朝には思っておりました。けれども、気がつくと王子と鈴木さんに捕まって、一年生の展示の評価をしたり、他のクラスを冷やかしました。

うん、忘れてたけど、HR展リーダーって、2年は1年の評価しなきゃだった。王子が言わなきゃ、確実に忘れて、生徒会に怒られるところだった。そこは素直にありがたかった。さらに、昨日がイチャイチャフィーバーだったのか、常時砂糖を吐く感じではなかった。相変わらず、王子と一緒にいると在校生に睨まれているが、なんとなく視線が柔らかくなった気がする。たぶん、鈴木さんがいたからだと思う。こう、考えたくないが、2人っきりだと付き合ってるように見えたのではないかと。いや、王子は一応女だから、俺と付き合ってても大丈夫だけどさ、今、俺女なんだよね。女同士でつるんでて、どうしてさとは思うけど。こいつらはレズなのかもしれない。

後日、鈴木さんより聞いた話だが、女子にとっての王子はアイドルのようなもので。大半は恋愛感情ではなく、ミーハーな気持ちだと。グループならともかく、2人っきりは特別な感じがするから、ダメなんだそうで。

うん、わけわからん。


こうして、文化祭最終日は特に問題なく終わり、片付けをした。クラスが片付き、最終チェックが終わり、王子と共に生徒会に報告。ここで王子と別れて、実行委員の片付けを行う。

「今度、2人で打ち上げしような」

なんて、王子に囁かれ、本当に2人で打ち上げをする事になるのは、少し先の話だ。

実行委員は、クラスの片付けが終わってから集まるので、必然的に終わりも遅くなる。

もう用をなした飾り達を、力任せにとって、跡の残らぬようにテープを剥がす。途中、里美に丁寧にやれと怒られ、スピードが遅くなった。別に後はゴミとなるだけだからいーじゃん。

そうして、片付けを終えて、実行委員長と顧問の先生から労いの言葉を頂いて解散となった。

尚、振替休日として、明日明後日は休みなのだが、実行委員の打ち上げで町に集まることが決定している。

サボりたいのだが、里美と悪に参加するという言質を取られてしまったため、サボれなくなった。俺は命が大事だから。

休みの日まで女装とか、メンドくさい。特に、母親の学校のお友達に会うなら、可愛い格好じゃなきゃね、と無駄に気合いの入った女装が。普段はユニセックスな服を着ているのでそのままでも問題はないと思うんだけどな…。

目の前にある、ピンクのワンピースを目の前にため息を吐く俺であった。せっかくイメージカラーが決まったんだからと、女装はピンクがメインとなっていた。

前は、スカートにかなり難色を示したはずなのに最近は、なんか、ズボンやスパッツを履けばスカートが気にならなくなってきている。

俺、あっちの世界に行きかけてる!?

自分の感性を恐く思った夜であった。

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