どうして、こうなったんだろう…
卒業式の日に意中の子を呼び出して告るのってベタだよな。でも、そんなベタもさ、伝統的でいいと思うんだ。
苦い記憶も甘い記憶もある中学校の卒業式を終え、一ノ瀬さんを呼び出した場所へ向かう。校舎裏に卒業式が終わった後に来てくださいって、受験が終わった日に下駄箱に仕込んでおいた。恥ずかしくて名前は書けなかったけれど、彼女はとても優しい人だから、来てくれるはず。だって、彼女がちゃんと手紙を読んだところを確認したしね。
ストーカーとか言うなよ?受験の時って、基本的に学校に来なくてよくなって、合否の報告に来るとき以外は来るか来ないかわからないから。M高の合格発表の日に俺も彼女も合格したのをこの目で確かめて、ダッシュで学校来て、ずっと下駄箱で張ってたから。え?そのまま告ればよかったのにって?ちょ、心の準備ってものが必要だろ。まず、俺の成績じゃM高なんて受かったら奇跡のレベルだったんだから。受験終わって何度も答え合わせして、ギリギリ合格ライン上で、受かるか微妙なところだったのだ。だから、滑り止めにも手を抜けなかったから、心の準備なんてできるはずもない。
そんなことを想いながら、半分散ってしまっている桜の中を歩いている。卒業式が終わったばかりで、みんながみんな、友達と写真を撮ったり、卒業アルバムを交換してメッセージを書きあったりしている。俺は、もうメッセージの交換もしてしまったし、写真もそんな撮る必要もない。クラス写真と部活写真、あとは山下とかその辺と適当に撮ったくらいだ。はっきりいって女子ほど写真にこだわりもないし、カラフルにメッセージを書くこともない。本当に仲いい奴は後で電話したりできるしな。ちなみに俺は高校合格記念に携帯を買ってもらったから、アドレス交換してるから、なおさら必要性を感じなかった。
ちなみに、部活メイト(百人一首部)の子達にメッセージを求められて、書いたのだが、黒一色で書いていたのは俺だけで。女子のカラフルな丸文字の中でひどく浮いていた。俺のアルバムも、一部カラフルになったことをここに伝えておく。なんだかんだと途中入部で短い期間だったが、メッセージを交換するほど仲良くなった。
一ノ瀬からは、高校でもよろしくねと書いてあって、ちょっと舞い上がってしまったのは、しょうがないと思う。ニヤニヤが止められない顔ははたから見ると気持ち悪いかもしれないが、勘弁してほしい。
そんなことを考えながら、歩いていたからか校舎裏の生垣に足を突っ込んでしまっていた。
うん。ちょっと浮かれすぎかもしれない。なんとなく生垣の中に入ってしゃがみこむ。
別に、一ノ瀬がどんな風にやってくるのか見たくなったとかいうわけではない。ほんの出来心だ。というか、今更になって緊張してきて、心を落ち着けるためにしゃがみ込みたくなっただけなのだ。
深呼吸をして、鼓動を静めていると、複数の足音が聞こえてきた。
うん?複数?
そっと低木の間からやってきた人物を見つめると、一ノ瀬さんと一ノ瀬さんとよく一緒にいる土屋さんと新田さんがいた。
なんなんだろうか?普通、意味深な手紙が来たら、一人で来ないか?それとも女子は複数じゃないと行動できない人種なのだろうか…?
一ノ瀬さんの性格では、人を思いやることができるから、一人でやってくるものとばかり思っていたが、俺の勘違いだったようだ。複数の人の前で告るとか、どういう上級者だろうか。ちょっともやっとしたが、仕方がないと覚悟を決めようとした。日を改めるとか、ましてやメールで告るとかは考えられなかった。直接伝えたかったし、勢いがないと告るとか一生できない気がしたからだ。
立ち上がろうとしたとき、一ノ瀬さんたちが話し出した。
「何?誰もいないじゃない」
「みかの勘違い?からかわれただけだったりしてー」
「っていうか、私てっきり片桐がいるかと思った!」
「つっちーも?あたしも思った!あいつなんか怪しかったし」
「…えっと、つっちーもにぃちゃんも先帰ってていいよぉ?こういうのって、一人で行くものじゃないかなぁ?」
あー、土屋さんと新田さんが勝手についてきたパターンですか。じゃぁ、しばらく待てば、二人は帰るかな。そっから出てけばいいか。
「みか一人じゃ心配だから来たんじゃない」
「そーそー。っていうかぶっちゃけ見たいし。みかを呼び出すとか何って?」
「ねー。片桐だったらウケたんだけどねw」
「確かにw」
「…ウケないと思うよぉ?片桐くんって普通だよ?」
「いやいやいや、何いってるの?片桐だったら笑い倒せる自信ある!」
「そぉそぉ!陸上でブイブイ言わせてたのに、すっかり暗くなってさ!」
「「ウケるよねー!!」」
陸上でそこそこ強かった俺は、当時は調子にノッていたといわれて、いまだに何かしら言ってくる奴がいる。こいつらは、まだマシな方だ。確かに、生来のお調子者でなんとなくみんなの流れにノッていたのは否定できない。
「…陸上で負けてしまったのは残念ですが、勝負は時の運ですから。しょうがないと思いますよぉ。あと、私と片桐君は無関係ですよ?それに…」
無関係。
その言葉に俺の時は止まってしまった。
一ノ瀬さんがなにやらまだ話していて、土屋さんに新田さんも話していた。でも、口の動きが見えるだけで、何も聞こえなかった。
仲良くなれたと思ってた。同じ部活になって、試合をして、受験を励ましあって勉強して、卒アルにメッセージを交換して…。
ああ。全部、俺の勘違い、だったのか。
そのあと俺はどうしたのかわからない。
気が付いたら、家で眠っていた。
携帯には、卒業式を終わってから遊ぼうと約束していた奴らからメールがきていた。
でも、何もする気になれずにそっとごめんというメッセージを送って、メアドを変えた。
数日間、本当に無気力で食事さえとれずにいて。
会わせる顔がなくて、M高にも行く気になれず、親に無理を言ってほかの高校に行くことを了承させた。
そうして、なぜか女子高に通っている俺がいる。
どうして、こうなったんだろう…。




