俺の意見も聞いてくれ!
HR展リーダーというものは、6月に行われる文化祭でクラスの出し物の、まぁ、責任者みたいなものだ。
6月の前にも5月に合唱大会があり、色々と忙しい。
合唱大会の練習も出て、文化祭についても話し合い。
生徒会との相談や、クラスでの決定事項、提案書に報告書その他etc...
部活で忙しい王子、王子がいないと途端にサボり出すクラスの連中。
それをなんとかやり過ごす俺。
だからさぁ、これだけ頑張ってるんだからさぁ。
今学期初の部活にちょっとくらい遅れたって、許されてもいーんじゃないスか?!
目の前には、不気味に笑顔の悪、怒りを隠そうともしない里美。
困ったようにそれを見つめる塚本さん。
それらを楽しそうに眺める浜崎先輩。
いわゆる一触即発の状況で、逃げ出すこともできず、ただ腰が抜けたように座り込んで動けずにいた。
「キーリー。あなた、分かってるのかしら?大会まで、そんなに日が残ってないこと」
「だいたい何事も初めが肝心なのに、何、初日から遅刻してんの?」
「すっすみませ・・・ん」
悪と里美の怖さに、何に対して謝ったのか?
口からそんな言葉が出ていた。
「まぁ、反省してるのならいいけど・・・」
「・・・悪がそういうなら、まぁ、しょーがないなぁ」
今日はやけにあっさりと引いていく。
二人から素早く離れて、部屋の隅へ行く。
「皆、委員会、何入ったー?あたしは厚生委員♪」
「またなの?」
「だって、一番、楽できるし。まぁ、じゃんけんに勝てたからだけどね。そーゆー悪は?」
「風紀委員よ」
「私は、・・・環境委員です」
「うわー、一番めんどい所選んだね。ワックスがけとか、あたしやりたくないよ」
「茜は誰もやりたがらないから、やったのよ」
ただ単に、おしゃべりをしたかったらしい。
あぁ、だから、あんなにもあっさりとしていたのか・・・。
「・・・で、キリは?」
「・・・へ?あっ、・・・えっと、HR展リーダー」
「「はぁ!?」」
悪と里美の声がきれいにハモル。
「キリ、あんたわかってんの?文化祭の一週間前に大会あんのよ?」
「・・・はぁ・・・」
そうつぶやいた後。
「はぁ!?」
今なんとおっしゃいました?
文化祭の一週間前に大会!?まじですか?
「・・・その様子じゃ、わかってなかったようね・・・」
悪が軽く頭を抑えるポーズをする。
「あんた去年も大会でてたでしょ!!」
いや、知らねーし。
っつーか、この時期サボってましたから、ヨユーで!!
「・・・そういえば、去年はキリさん、いなかったと思いますよ・・・?」
小さく助け舟を出してくれる塚本さん。
「それにしたって、何でそんなメンドクサイのに入るのよ?信じらんない!!」
怒りMAXの里美がじりじりとこちらに攻めてくる。
「しょっ、しょーがねーじゃん。王子が勝手に巻き込んできたんだよ!!」
俺の発言は全く意に介されずに空しく響いただけだった。
うわー、もう、おしまいだ・・・。
目をつぶって、里美の攻撃に耐えようとした。
「君たちの行動はおもしろいんだけどさ。 私は文化委員長で、おまけに文化祭実行委員に入ってるんだよ?」
ずっと、こっちをおもしろそうに見ていた先輩の爆弾発言。
里美は一瞬、動きをとめて、それから、また攻めてくる。
「なっ、なんでこっち来んだよ!?」
「あんたがHR展リーダーなんてなったから」
「どーして先輩はよくて、俺はダメなんだよ!!」
「だって、キリだし」
人種差別だ!!
確実にイジメだろ!!
「今、実行委員の人数足りなくてさ。よかったら君達も、入ってくんない?」
絶体絶命のピンチに、またもや先輩の声。
「部活の人数だって少ないし、練習やるなら全員でやった方がいいだろ?
君達も実行委員になってくれたら、連絡するの楽になるしなぁ」
何気なく語られた言葉で。
「じゃぁ、私、入ります」
「茜が入るなら、わたしも」
「先輩の頼みじゃ、断れないから。あたしも入ります」
先輩の一言にすばらしい団結力を見せた三人。
あー、これで皆、同じ土俵に入った。
もー、俺だけ責められずにすむ。
「ありがと。じゃ、これにHRNOと名前書いてくれる?」
紙とボールペンが差し出され、次々と名前が書き込まれていく。
「はいっ、キリ」
目の前に差し出されたのは、紙とボールペン。
「?」
「早くHRNOと名前書きなさい」
なんで、命令形?
っつーか、なんでですか!?
俺。実行委員とか入るとか、一言も言ってねーし。
「何、聞いてたの?キリも入るの当然じゃん」
なに、当たり前発言しちゃってるんですか!?
ただでさえ俺、HR展リーダーで文化祭前忙しいんだって。
んなことやってる暇なんかないっつーの!!
「もー、めんどくさい。あたしが書く」
勝手に書かれた名前。
しかし、HRNOのところで手が止まる。
「あんた何番?」
「・・・」
はっ、誰が言うもんか。
これ以上忙しくなるなんて、ゴメンだね。
「いーよ、後で調べるからさ。ありがと」
先輩が紙とボールペンを取り、かばんに入れる。
はい?どーゆー意味ですか、それは!!
「明日の放課後から生物室に来てくれる?そこでやってるからさ。もちろん、キリもね」
「はっ、いや、俺入らないし・・・」
「往生際が悪いぞ、キリ」
「そうね、もう、入ることは決定したんだしね」
やっ、ちょっ、待とーぜ、おい!!
「じゃ、そろそろ部活始めようか、君達」
それぞれが、部活の準備を始める。
誰もが、俺の言葉に耳も傾けない。
おいっ、ちょっとでいいからさ。だからさ・・・。
俺の意見も聞いてくれ!!




