ここは女子高だったよな?
2年生になりました。
新学期。
それは妙に心が落ち着かない、そんな日だ。
学年の変わる学期は、特に。
俺、片桐大もそれは例外ではない。
まぁ、普通の人とはかなり違った心配をしているだろう以外は。
「なぁ、母さん。俺、いつまでS女に通うんだ?」
「あらあらまぁ・・・。まぁちゃん、早くしないと遅刻よ」
いや、まだかなり余裕があるけど。
「まぁちゃん、教室一番乗りするんだしょう?さぁ、早く早く」
んなこと、いつ言ったんだよ!?
ぐいぐいと玄関に追い詰められて、
「いってらっしゃい」
バタンッ。
空しくドアが閉められ、再び開くことはなかった。
ご丁寧に靴とカバンが外に出されていた。
・・・俺、まだ朝飯食ってないんですけど・・・。
はぁ・・・、なんだかなぁ・・・。
靴をはいて、カバンを持って、しょうがないから学校へ行った。
暇人というものは多いもので。
教室に着くと、黒板の方に人だかりができていた。
そーいえば、黒板にクラス分けを掲示すっつってたな。
・・・あの中に入るのは・・・、ちょっと・・・。
しばらく、待って人がいなくなってから、ようやく俺は自分のクラスを探せた。
えっと、片桐麻衣 10HRね。
荷物を持って、二年のクラスに行くと、そこには人がかなりいた。
しかし、その中で一際目立っていたのは・・・。
おいっ、ここ!!
女子高だったよな!?
なぜに、男がいるんだ!!
教室の中央で、他の頭よりも抜き出ているその顔は、完全に男だった。
茶色のサラサラとした短髪に、くっきりとした二重まぶた。
鼻筋はすっと通っていて・・・。
う"・・・、かなりカッコいい。
くっそぉ~、こーゆーヤツがいるから、俺がモテないんだ!!
はて、しかし、SHRがそろそろ始まるのにこいつ出て行かなくていいのか・・・。
疑問に思いつつ、とりあえず、自分の席へ着いた。
と同時にチャイムが鳴り、それぞれ席につく。
ヤツが、俺の右斜め前の席に座った。
おいっ!!
男の席もあるんかいっ!!
だったら、俺だってなぁ、わざわざ女装してまで・・・。
ふと、下を見たら、スカートが見えた。
えっ・・・、もしかして・・・女ぁ!?
・・・まっ、まさかね・・・。
どーみても、女装した男だろ?
そうこうしている内に、担任が入ってきていた。
女で、火野先生・・・らしい。
簡単な説明の後、定番の自己紹介。
淡々と続いていった後、ついにヤツの番が来た。
「八王子 結花。渾名は王子。部活はバスケ。よろしく」
彼、いや、彼女は・・・・、れっきとした女だった。
待て待て、あれが女だったら、俺も絶対女だ。
秀だって、女だ!!
しかし、後から里美に聞いたところ、
「八王子 結花?あぁ、彼女は有名よ。何、知らなかったの?」
と、女であること証明されてしまった。
休み時間になると、王子の周りに女が集まる。
キャーキャーと黄色い声があがる。
いつからここは宝塚になったんだよ!!
ここに、本物が男がいるってのによ・・・。
果たして、これはモテない男のひがみなのだろうか?
学年が変わると、委員会や教科係というものを決めなければならない。
去年と同じ暇で目立たず、人気もない図書委員でもやろうと思っていた。
しかし・・・。
「よ~、キリ!!一緒にHR展リーダーやろうぜ」
なぜ、俺?
王子が肩に手をかけ、親しげに話しかけてきた。
「んなメンドそうなの・・・」
イヤだと言おうとしたが、周りの異様な視線を感じた。
クラス全員が俺を睨みつけているのだ。
「皆、おれと組みたいんだよ。・・・去年は大乱闘になりそうになったしな。
こちとら、人気で成り立つアイドルじゃねぇっつーの!!」
小声で耳打ちさせて、思わず同情した。
ああ、こうゆうヤツって、結構大変なんだな。
けどな。
だからって、俺を巻き込むんはねぇ!!
「決定!!おれとキリがHR展リーダーで決まり」
「な・・・!?やるなんて言ってな・・・」
さっきの倍以上の視線が突き刺さる。
「王子に指名されてやめるなんて・・・」
「てゆーか、なんであんな子なんかと・・・」
ひそひそとなにかが聞こえてくる。
・・・俺に拒否権は無いんスね・・・。
なんだかなぁ・・・。
◆◆◆
放課後がやってきた途端、5,6人の女に囲まれた。
リーダー格らしい女が口を開く。
「どーやって、王子をたらしこんだの!?王子はみんなのモノなのよ!!」
何なんだよ、一体!!
そもそも俺は何もやってねぇ!!
「しらばっくれるんじゃないわよ!!
王子は今まで誰も自分から誘うことなんて無かったんだら・・・。このあばずれ!!」
あばずれって・・・、俺、男だし・・・。
「かわいい顔してるからって、調子にのってんなよ!!」
「あんた、ウザイんだよ!!」
いや、あの、何を見て言ってんだよ?
っつーか、俺が一体、何をした!?
パニくっていると、この話の張本人、王子がやってきた。
「・・・どうやら、穏やかじゃないみたいだけど・・・。何をしてるのかな?」
「王子!!」
辛らつな言葉を放っていた口達が、嬌声をあげる。
「一人に対して、六人ね・・・。素晴しい比率だな」
「違うんです!!私は無理矢理・・・」
「「私も!!」」
次々と責任を押し付けあう。
女の友情って・・・。
「・・・そんなコトはどうでもいいんだよ!!キリに手ぇ出すんじゃねぇ!!」
凄みの効いた低音ではっきりと言う。
何つー迫力。コイツ・・・、本当は男だろ?
俺でさえ、押し黙ってしまった中、勇気あるリーダー格の女が。
「・・・どうして、こんな子・・・」
「キリはおれの・・・幼馴染なんだよ」
・・・。
ん?
はいっ!?
俺、王子と幼馴染だったんだ?
スマン、すっかり忘れてたよ。
へぇ~、そうだったんだ。
王子はそれだけ言うと、俺の肩を抱いて、ゆっくりと歩き出した。
後ろからは、くやしいのか、歯軋りが聞こえる。
校門を出て、しばらく歩いて、おもむろに口を利いた。
「ゴメン、俺、すっかり忘れてた。幼馴染だったんだな」
驚いた顔をして、こっちを見つめる王子。
何?俺、なんか変なこといった?
「あ・・・。ゴメンゴメン。違うよ。キリは、本当は幼馴染じゃないんだ」
「えっ、そうなのか?じゃ、なんで・・・」
「そうでもしとかないと、納得しなそうだったし」
「はぁ・・・」
「何?恋人って、方がよかった?」
「は!?」
「・・・冗談。それだと、逆にイジメられそうだしね。幼馴染ってことにしておいたけど、よかった?」
いや、あの・・・もう、過ぎた後に言われてもなぁ。
っつーか、幼馴染じゃなかったのか。
よかった、よかった。
俺の記憶力がどうかなっちまったのかと思ったぜ。
「・・・チヤホヤされるのはもう、馴れたけどさ。おれに言わないところは、最悪だよな・・・。これからも、何かあったらおれに言えよ。むしろ、
できるだけ、おれと行動を共にした方がいいな。・・・ああ、部活があるから送れないけど、気をつけて帰れよ!!」
そう言うと、走っていってしまった。
・・・って、ちょっと待て!!
これからも、あーゆーことがあるってことか!?
何なんだ?新手のイジメかよ、これは。
・・・俺が一体何をした!?




