入学
連載機能を理解しておらず、大変申し訳ありませんでした。
こちらが第一話になります。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
あの時は本当に何もかもがどうでもよかった。
だからかもしれない。
俺がこんな間違いを起こしたのは。
「なぁ、母さん・・・。・・・これ、何?」
「制服」
「・・・俺には、スカートに見えるんだけどな」
「女子用だし」
「・・・っ・・・ふざけんなぁー!!」
とうとう堪忍袋の緒が切れて、叫びだしていた。
「入学初日から、ウケでも狙えってか!?俺はカマかー!?」
「だって、女・・・。そうそう、ウケ狙いよ」
その言葉で一気に脱力して、それ以外に着る物がないので、仕方なく、それを着てみた。
「なんか、足がスースーする・・・」
「あら、似合うじゃない」
「・・・うれしくない・・・」
「私に似て、かわいい顔してるんだから、自信を持ちなさい!!」
「一番かわいいのは?」
「私」
・・・なんというか、・・・なんだかなぁ・・・。
「行ってきます・・・」
もう、全てをあきらめるしかないんだろうな。はぁ・・・。
「あんたの従妹の名前は麻衣だからねー!!」
なんか、後ろの方で意味不明なこと、叫んでいるよ。
麻衣とは、男女の違いがあるがなぜか顔がそっくりな俺の従妹のことである。
あー、本当、ワケわからないよ、この親。
受験で一度来ただけの高校へ行くと、正門付近に黒山の人だかりとなっている。
その中には、生徒だけではなくて、派手なカッコした、保護者の姿も混じっている。
あん中に入らなきゃならんの!?
あの、臭くて、きつくて、ウザイババアの群れの中に入んの?
・・・やだなぁ・・・。
・・・でも、見なきゃ、どこにも行けねぇし・・・。
後で見るも、今見るも、苦しみは同じだぁー。
意を決して中に押し入ると、案の定、化粧や香水が入り混じったなんとも言えぬハーモニー が広がっていた。
ぐっ、くせぇ・・・。速めに俺の名前を探して、ずらからねぇと、死んじまう。
ずらぁと400数名の名前が並んでいるそのボードを睨み付けると、目の前に異様にミニマム なやつがいた。
何だか見覚えのあるとてつもなく長い髪・・・。
「お前、・・・広川里美?」
思いついた名前を思わず呟いていた。
そいつは後ろに振り返ると、不審そうな顔で(なんつぅ、地獄耳だ)
「・・・そうだけど、あんた誰?」
その顔にはやはり、見覚えがあった。
「俺だよ、俺。小学校まで一緒だった、片桐大!!」
「・・・ここ、女子高だけど・・・」
まじまじと俺の顔を覗き込んで、とんでもない問題発言を投下してきた。
そういや、俺、今スカートはいてるし・・・。
知らないやつに男だって知られたって、すぐ忘れるだろうから、別にいいけど・・・。
でも、知ってるやつ、特に里美なら、末代までネタにされるに決まってるよ!!
「・・・・の」
「の?」
えーと、えーと、なんかテキトーな名前は・・・
「の従妹の・・・、麻衣!!」
「・・・・・・」
そんな、信じてないです、みたいな顔して見んなよ・・・。
「ふぅん・・・、従妹、ね。そういえば昔写真で双子みたいにそっくりな子を見たことあるけど、もしかしてその?
でも、どうしてあなたが私を知ってるの?」
「そうその!・・・えっと、・・・大によくあなたの話を聞いていたし、写真も見たことあるから・・・?」
「そう・・・」
なんか、完全には信じてないみたいだけど、何とかこの場は乗り切った。
これで、変態のレッテルは消えたな・・・、ナイス、俺!!
「"片桐麻衣"なら、さっきあったわよ、ほら」
里美の指の先を追うと、確かにそこには、片桐麻衣の名前があった。
「あんたは9組で、私は5組だね。一応、よろしく」
そういうと、さっさと会場の方へ行ってしまった。
組み分けのボードを1組から10組まで眼を通したが、片桐姓のやつは、誰もいなかった。
行く時に、母さんが叫んでいた意味を、今更ながらにわかってしまった。
つまりは、俺に、"女"として通え。ということだったのかよ!!
チクショー!!!!!!
・・・はぁ、気づかなかった俺も悪いし・・・。
とりあえず、入学式は出るか・・・。