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お茶会へ行くアリス

「一緒にお茶会に行く?」


「そう、お茶会。いいでしょ?」


 俺が仕える姫、アリスは無邪気な笑顔を見せてそう言った。お茶会に行くとはどういう事なのか。


「私も一緒に行ってもいいですか?」


「勿論!」


 エインセールもついてくるようだった。


「第一お茶会って、ぐえっ!「いいから行くの!」」


 喋ってる時にいきなり袖をぐいっと引っ張られたので変な声が出てしまった。そのまま、袖を引っ張られながらノンノピルツへ歩いた。

 ノンノピルツをしばらく歩くと目立たない店が見えてきた。看板には『不思議でおかしなお茶会』と書かれている。妙な名前。だけど、ここがアリスの言っていたお茶会なのか?するとアリスは店の前で立ち止まった。


「不思議な名前ですねー」


「そう、この不思議な名前の店、ここがお茶会!あたしの知り合いがいるの」


 アリスが扉を開けると扉についていた鈴がカランカラーンとなった。すると中にいる丸いトレーを持った金髪青目の女の子が笑顔で近寄ってきた。


「いらっしゃいませー。三名様ですねー……ってアリスだぁ!縁の深い人物って言うのはアリスだったんだね」


「わっ、グレーテル。久しぶりだね」


 グレーテルと呼ばれた少女が発した言葉には少し不可解な所があったが特に意味もないだろうし気にしないでおこう。二人は互いに抱き合う。グレーテルはアリスよりも身長が少し低く、頭をアリスにぽんぽんされてた。うーん、なんか癒やされる。


「グレーテル、何ぼさっとしてんの?……あ、アリスだ」


 店の奥からグレーテルそっくりの男の子が出てきた。でも、グレーテルとは目つきが違う。グレーテルがぱっちりなのに対してこっちの子は切れ長の目だな。


「やっほー、ヘンゼル。帽子屋はいないの?今日はお茶より帽子屋目当てなんだけどー」


 いつの間にかアリスはグレーテルから少し離れて、ヘンゼルと呼んだ男の子にヒラヒラと手を振る。ていうか、帽子屋って誰だ?


「えー、帽子屋?何処行ってたっけ……。でも、出かけてるよ」


「えー、嘘ー。なんで居ないのかなぁ?」


 アリスは肩をガックリと落としていた。エインセールはグレーテルと何か話している。それを眺めてるとヘンゼルが俺に声をかけた。


「おにーさん誰?アリスの従者?」


「ま、まぁ、そんな所だ」


 いきなりの事でちょっと動揺した。そっちに気がいってて俺は背後から忍び寄る影に気づかなかった。


「初めまして、僕が帽子屋です」


 背後から声をかけられて咄嗟に振り向いた。そこには青い髪に帽子を被り、ニコニコと笑う青年が立っていた。手には暴れる鴨を持って。


「帽子屋っ!」


 アリスはその帽子屋に飛びついた。帽子屋もそれに反応出来ずにそのままアリスに押し倒される。


「お久しぶりですね、アリスさん。というか離れてください、鴨が逃げます」


「あー、ごめんごめん。つい」


 そう言いながらアリスは帽子屋から離れる。帽子屋は立ち上がり、服についたホコリや小さなゴミをはらった。


「そうだ、アリスとアリスの従者がいる事だし、その鴨をアルクに頼んでソテーにしてもらおう」


 ヘンゼルが提案する。丁度俺達が来た時には客足は少なくなっていたようだから調理しても大丈夫なみたいだ。


「そうだよ!それがいいよ!」


 グレーテルもそれに賛成する。鴨のソテーか……美味そうだな。


「じゃあ、頼んできます。アルクー?鴨のソテーをこれで作ってくださーい」


 すると中から銀髪で褐色の肌をした女性が現れた。うわー、スタイルいいなー。


「何、帽子屋。これでソテー作んの?というか、私に言ってくれれば狩ったのに……」


 狩るとかなんか物騒だな。


「そうです、お願いします。今日は久しぶりにアリスが来たので」


「!? ……そうか、分かった」


 ハスキーボイスでちょっと男みたいな喋り方だな。でも、アリスって言葉に反応したのはどうしてだろう。


「さぁ、こちらの席へどうぞ。グレーテル、案内して下さいね」


「はーい。アリスと従者さん、こっちこっちー」


 グレーテルがトレーを振りながら案内する。通された場所は温室のような場所だった。色々な花が咲いていてとても幻想的で綺麗だった。その一角にあるテーブルにグレーテルがいた。


「ここに座って待っててねー」



 待ち時間はこの店についてアリスに聞いていた。この店は雑貨店兼カフェらしく、帽子屋がいるのに帽子は売ってないおかしな店で、従業員は帽子屋以外にグレーテルとヘンゼル、そしてあのアルクという女性だけらしい。なんでも帽子屋に拾われたとか。

 アリスは昔からお世話になっていたらしくちょくちょく訪れていた。初めて来た時にはすでにヘンゼルとグレーテルはいたらしい。今と殆ど変わらない姿で。二人曰くかなり前から姿が変わらなくなったそうで、理由は二人にも分からないようだった。それは氷の女王 ヴィルジナルに何処か似ていた。


「うーん、店名通りのお店ですね」


 エインセールが呟く。それもそうだな。


「アリス的にはーー「鴨のソテー、どうぞ」わあっ!やっと来たぁー。美味しそう!」


 アリスは出されたソテーを速攻で食べる。つーか、いつフォーク持ってたんだよ。


「うーん!美味しいー!丁度お腹空いてたんだよね~」


 出されたソテーからはいい匂いがしてきて俺の腹も空いてきた。よし、食うか。

 エインセールにはソテーは結構大きかったので小皿に小さく切ったやつを置いておいた。そしたら、エインセールも何処からか自分専用のフォークを取り出して食べ始めた。


「確かにこれ美味しいですー」


 俺が食べ終わる頃にはとっくにアリスは食べ終わっていて、俺が食べ終わるのをまだかまだかと待っていた。


「ごめん、遅かったな」


「いいよ、いいよ。ぜーんぜん平気。だって、ルーツィアよりは速いもん。ルーツィアはなんか味わって食べてる?から遅いんだもん」


 自分の仲間の事そう思ってたのか……。まぁ、アリスらしいな。


「そうだ、今日来た理由はこれじゃないんだー。帽子屋の所に行くよ」


「ああ、分かった」


アリスはどこかへ向かった。そして、行き止まりにつくと何かブツブツと言っていた。


「心……き……は何も…………け…れる。心……聖……何も…も………する」


「なんなんでしょうか?」


「さぁな」


 小声で喋っていると壁と思っていたところがくるりと九十度回って奥に通路が見えた。そこを歩いて行くと帽子屋が革で出来た椅子に座り机に向かって何かを書いていた。「帽子屋」とアリスが声をかけると帽子屋は顔を上げた。


「何ですか?レディ。ここは子供が来るところじゃ「子供じゃないわ、私ももう立派な大人よ」……そうですか。では用件をどうぞ」


「ローズリーフ、その在り処を」


 先程と顔つきが変わった二人を俺とエインセールはただ見ることしか出来なかった。

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