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ここにいるの…

プチボラーです。

突然、物凄い衝撃が全身に走りました。

そしてそのまま私は、

真っ暗な穴の中へ、どんどん吸い込まれていきました。

何かにつかまろうにも、

私の手には感覚がありませんでした。

手どころか、

五感一切の感覚がどこかに

置き去りにされたようでした。


次に気がついた時には、

この場所にいました。

何がどうなったのか思い出すのに、

時間はかかりませんでした。

不意に聴覚を取り戻した私の耳に、

カンカンカンカンという音が、

聞こえてきたからです。

あの時、私が最後に聞いた踏み切りの音です。


あの日、私は出張が一日早く切り上がったので、

あなたを驚かそうと思いつき、

駅前のコーヒーショップで

こっそり待ち伏せをしていました。

そして、

とんでもないものを見てしまったのです。


あなたは知らない女の人と歩いていました。

それだけならまだ、

会社の同僚だろうとか、

大学の後輩だろうとか、

ただの友達に違いないと

自分を納得させることができたのです。

でも、あなたと女の人の間には、

3歳か4歳ぐらいでしょうか、

小さな男の子がいました。

あなたの好きなサッカーチームの帽子をかぶり、

あなたと女の人の手にぶらさがってはしゃいでいました。


私は思わず店を飛び出し、

あなたの後を追いました。

確か妹がいるって聞いたことがある事を思い出しました。

私は必死でした。

きっと妹さんと、その子供なんだ。

そう思い込もうとした時、

男の子があなたを見上げ、

にっこり笑って言ったのです。

「パパ」


カンカンカンカン

私の前で駅前の踏み切りが下りました。

それは足早に渡り終えた3人から、

私の存在を切り離すように思えました。

私はたまらなくなってバーを押し上げました。

そこまでは覚えています。

あの突然の衝撃を受ける前までの事は全部。


その場所で、想いを残したまま死んだ人間の魂は、

そこに留まってしまうと聞いた事があります。

私はどうすればいいのでしょうか。


誰か私に気付いてください。

私の想いを受け止めてください。

そうでなければ私は、

この暗い穴の中へ誰かを・・・・

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