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◆蛙の子はお玉杓子のようでした。

メイ視点のストーリー。

まだまだリクエストは募集してます!どうかネタを下さい(笑)


デフォルメ→デフォルトに修正。ご指摘くださった方、有難うございました。

 えー、どうも、メイことメイドリヒです。何でこんな事を書いているかというと、父さんからの依頼、ローゼンフォール家がリーンの様子を心配しているから普段の生活を纏めてきてくれ、というもののためなんだが……これ、本当にローゼンフォールに送って大丈夫かなぁ?


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


◆A.M 6:55 〈食堂〉


「ふぁ~……おはよ……」


 オレが珍しく早く起き、食堂でアル、ソルトと朝食を選んでいると(この学校は基本バイキング。流石金持ち学校)、眠そうに目を擦りながらリーンが起きてくる。ふらふらと揺れるその様子は、今にもパッタリいきそうで見ててハラハラする。


「おはよーさん」


「おはよ、眠そうだな」


「おはようございます……因みにリーン君?昨日は何時まで仕事してたんですか?」


 今にも寝そうな様子に、アルが本人に直接尋ねれば、半覚醒のような声でとんでもない答えを返してくる。


「んー……?昨日っていうか今日かな……気付いたら寝落ちしちゃってたけど、多分3時位」


「……あの、せめてどんなに遅くとも1時2時には寝ましょうよ……ソレ睡眠時間3時間あるかないかくらいですよね?」


「しかも寝落ちって事は、仕事終わってないのかよ……どんな量だよ」


 諭すアルと呆れるソルトに、リーンは苦笑をもって返す。こいつが苦笑で返す時は、無理だと言う意味だ。


「それはそーなんだけどさぁ……今は忙しくって」


「今()、の間違いでしょ~?」


 唐突にひょこりと顔を覗かせたスゥにソルトがのけ反る。オレとアルは気配で分かるから論外。


「それは……まぁそうとも言うんだけど」


 正直オレもリーンがどんな仕事をしているのか知らないんだが、この様子だとかなりの機密度の仕事を熟しているのだろう。オレは学が足りなくて書類仕事は殆ど回ってこないけど、コイツはそこに関しちゃ全く問題ねぇからな……


「でもリーン君、良く授業中寝ないよね~。私だったら絶対寝ちゃうもん」


 ああ、確かに。こいつが寝てる所なんて、ぶっ倒れた時以外殆ど見た事ねぇな。オレなんか毎回授業で寝てんのに。


「あはは……その分倒れた時に寝てるからねぇ」


 ……リーン、それ、朗らかに笑うトコじゃねぇだろ……






◆A.M 9:07〈一限目・魔術基礎〉


「……という意味がこの魔方陣には隠れていて―――」


 何故か分からないが唐突に意識が浮上する。それでも眠い目をごしごしと擦って少し辺りを見回すと、殆どの生徒が真面目にペンを動かしている―――約一名は明らかにノートでは無い物に。

 てかリーン、ノート開いてすらねぇし。それでなんでいつもあんなに問題解けるんだ?授業聞いてる素振りすら―――って、あ。


「……ローゼン、いい加減言い飽きたんだが、せめてノートは開け」


「いや、開けって言われてもどうせ殆ど真っ白ですよ?」


 リーンの前に仁王立ちする先生に向かってとんでもない発言をする。ってちょい待て!つまりノートとった事すらないのか!?


「……お前、ホント世の中舐めてるよなぁ……じゃあ、せめて一問答えろ。黒板に書かれている魔術について詳しく述べよ。そして陣の中で足りない文字は?」


 うげ、なんだあの魔方陣。五芒星の周りにパンの絵が描いてあるとか、意味不め―――


「アレですか?確かシグザンド写本の中の魔方陣ですよね?ペンタクルの周りにパン切れ置いてますし」


 ―――いじゃなかったらしい。アイツの頭の中が魔導書なんじゃねぇかと疑うオレは悪くないと思う。

 周りの生徒は(リーンの非常識ぶりに)またかと呆れるヤツと、ポカンと呆けるヤツ、そして最早慣れたと苦笑する一部に分かれている。


「詳しくって言われても、殆ど謎に包まれたもので、分かっているのは恐るべき霊の攻撃から防御する陣って事と、注意書きが細かい事位しか……ええと、結界内で火を使ってはいけないとか、結界を書くのに多くの色を使用してはいけないとかそんな注意だった筈……あと足りてないのは水で書いた三日月で文字じゃ無いですよね。そんな引っ掛けには引っ掛かりませんよ」


 首を傾げるリーンに先生も重い溜息をついた。てかおい先生、性格悪いぞ。いくら常識外の存在とはいえ一応は生徒に出す問題だろ。


「……正解だ。全く、お前の頭を一回解剖してみたいぞ」


「嫌ですよ。そんなグロッキー」


 本気で嫌そうな顔をするリーンに、おなじみメンバー達は呆れて物も言えなくなっている。一体何をやったらあんなハイスペックが出来上がるのか。早く技術が発展して脳みそ交換とか出来るようになんねぇかな?







◆A.M 11:48 〈三、四限目・家庭科〉


 トン、トン、トン……

 横からスゥが慎重に野菜を切る音が聞こえる。野菜、あんま好きじゃねぇんだけどな。とはいえ一応調理実習っつー課題なんだから文句は言えないけど。


 ザクッ、ザクッ、ザクッ……

 向かいからリーンがが揚がった豚カツを切る音が聞こえる。眼鏡の眼鏡―――じゃなかった。ソルトの眼鏡にに油が跳ねて多少は危なかったけど、そこは料理経験豊富なアルと作ってる本人(リーン)が大活躍だったので良しとしよう(ちっせぇ頃から学園に居るヤツって、自炊出来るの多いんだよなぁ。オレはよくリーンとかアルのトコに押し入ってるだけでやらないが)


 ボコ……ボコボコッ、ボコッ……

 下からネリアが作った焼きプリンがたてる音が―――いやいや、ちょいと待てよ。焼きプリンだよな?まかり間違っても魔女のバァさんがド紫な液体かき混ぜてる音じゃないんだよな!?


「ちょ、ネリア!?何なんだこの音!?」


 オレの隣で敢え無く皿洗い係になってしまったソルトがギョッとした声を上げたのは悪くない。マジ何の音だよコレ!


「し、知らないわよ!ちゃんとレシピ通りに作ったのに―――」


「ネリアちゃん~、なんか灼熱地獄のマグマみたいな音になってるよ~。食べれるの~?」


 包丁を一端まな板に置き、スゥがしゃがみ込んで下のオーブンを覗く。それと同時にリーンもしゃがみ、苦笑を漏らした。


「あー……固まらないで沸騰しちゃってるねぇ。一応小麦粉みたいなモノは使ってないから食べれるよ?食べれる、けど……これはねぇ……?うん、先生にはとろけるプリンを作ってみましたって報告しようか?」


 成程。確かにとろけるプリンだという事にしておけば問題は無い―――のだろうか?いや、単位下げられたくないからそういう事にしておくけどさ。取り敢えず、出してみねぇとどうなってるのか分からんしな。


「う……ごめんなさい」


「ああ、大丈夫だって。どこぞのボケ父は料理経験ないのに菓子作ろうとして案の定チョコレートを電子レンジで爆発させてたから、それに比べたら全然可愛い物だよ」


 ……どこぞのボケ父?コイツの父親って―――


「おい、それもしかしなくても前ローゼンフォール侯爵か?」


 オレと同じ考えに辿り着いたソルトが不安そうな声を上げれば、リーンは苦笑して頷いた。てかおいおい、仮にも大貴族の当主があの当時台所に立つとか普通じゃねぇぞ?


「チョコレート溶かすって言って皿にラップすら被せず電子レンジに入れて大爆発させてたんだよねぇ……その前は何を思ったのか電子レンジでゆで卵作ろうとして大爆発、その二回の所為で父さん厨房立つの禁止されたし」


 ……オレの中で大貴族っつったらやっぱ父さんなだけあって、たまにリーンから聞く前ローゼンフォール侯爵は目茶苦茶ぶっ飛んでるように感じる。いや、本当にぶっ飛んでたんだろうな。

 つまりリーンの苦労性はその当時からって訳か……


「どんなお父さんよ、それ……」


 作業を続けるリーンに全員が呆れの籠った目線を投げかければ、受けた本人は遠い目をして彼方を見つめ続ける。


「んー……一言で言うならローゼンフォールのパシリ?」


『ッブッ!?』


 い、今何つった!?ローゼンフォールの当主ともあろう人がパシリ扱い!?んな馬鹿な真似―――


「魔力もDとか直系の貴族として考えれば残念なスペックだったし、誰にでもすぐに頭下げちゃうし、気付いたらひょいひょい街に出かけて居なくなってるし、何の準備もしてないのに友人連れて来た~って連れてきたのがゼラフィード(王族)の当主だったり、ホントマジアンタ何してくれてんだって感じの残念も残念、ホントに関わると力が抜けていくような人だったからね。お陰で苦労しまくったよ」


 …………それは、まあ。何とも言えない人物らしいな……

 明らかにリーンの背は哀愁を漂わせ、疲れた顔をしている。


「成程~。リーン君の性格は反面教師の影響かぁ~……」


 スゥがしみじみと頷く一方で、アルが苦笑を漏らす。てかおい、コレ父さんに報告して大丈夫な内容なのか!?包み隠さず報告しろって言われたけど、マジで平気か!?






◆P.M 02:25〈第六限目・体育〉


「よッ!」


 蹴り上げたボールが宙を舞い、ガコン!!と大きな音をたててゴールポストに入る。おー、結構ギリで入ったなー。


「ナイスだメイ!」


「ホント運動神経どうなってんだよお前!?」


 夏の炎天下に外での授業は危険だって事もあり、割と温度が高くならない今の時期の授業はサッカー。女子は別のコートで別種目をやってるらしいがオレは知らない。


「おーい、そこ喋ってないで試合続けるぞー」


 やべ、先生の注意入ったし。

 急いで気を取り直すと、ピッという笛の音と共に再開される試合。勿論オレはボール目指してダッシュで走る。


「おいソルト!ボール寄越せ!」


「ふざけんな!お前敵だろーがっ!」


 うまい具合にボールを蹴っている所為で一向に横取り出来ない。が、そこは違う方向から蹴ればあっという間に盗めた。はっ、チョロイチョロイ。


「げ、おい!メイに盗られたぞ!」


 ソルトが何か叫んでるが無視。まぁ流石にこのままゴールまで持ってくのは難しそうだな……と考えると、丁度いい感じの位置に目立つ金髪。


「リーン!」


 一言叫んでボールを蹴り上げれば、それに合わせてかなりの速さで走り出すリーン。アイツも何気運動神経良いんだよなぁ。

 そしてボールがアイツに到達したところで、リーンは走る事無くボールを思い切り蹴る。って、あんなとこからゴール決める気か!?と、驚く間もなくボールは無事サッカーコートに入った。おお、ディフェンサー形無しだな。


「よっしゃ!よくや―――」


 チームの男子たちがリーンの方向を振り向きながら賛辞の言葉を叫ぼうとするが、それも直ぐに驚愕へと変わる。本来居る位置にリーンが居なく、目を見張ればカクンと膝をつき座り込んでしまった姿が目に入る。


「おいリーン!?」


「どうした!?」


 一瞬固まった後、動き出した皆がわらわらと周りに集まり出す。おいおい、またかよ。そう呆れつつも走って駆け寄れば、真っ青な顔色で弱々しく笑った。


「あ……ごめん……ちょっと、ふらついて……」


 最早デフォルトとなった状態だが、何度体験しても心配な物は心配だ。今朝から顔色が悪かったし、今までよく倒れなかったなーとか、今日は大丈夫なんだなーとか考えてたけど、案の定駄目だったらしい。こう見えてもオレもちょこちょこ体調崩す方だけど、アイツのは寧ろ虚弱体質に近いんじゃないか?


「まったく、調子良くねーなら無理すんなよ」


 ソルトが軽く小突き、諌めた所でリーンは小さくごめんと呟く。無理、無茶はコイツの十八番だから何を言っても無駄なんだがな。


「取り敢えず、皆さん試合続けてて下さい。僕が保健室連れて行きますから」


 そう言ったのは今の試合に参加していないアル。先生もアルにリーンを任せ、コートに集まっていた生徒を散らばらせる。


「あはは、いつもごめんね……?」


「そう思うならしっかり休息を取って下さいよ、もう……」


 苦言を漏らしながらリーンを背負い、校舎へと消えていくアルに、リーンは小さくなっていくばかりだった。……小さい言うと、マジでキレられるんだけどな……


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「っつーのが学校でのリーンの様子なんだけど……父さん?」


「ああいや……因みに倒れた後、どの位で復帰したんだ?」


「えーと……あの後熱出した上に食べ物戻したりしてロクに薬すら飲めず悪化の一方。そんな状態が三日続いた筈。んで見るに見かねたアルがやけに爽やかでやけに機嫌の悪いリーンの主治医呼んできて、そっから大体二日?」


「……アズル君が呼ばれたのか……あともう一つ、前ローゼンフォール侯爵の事はあまり吹聴するなよ」


「流石にそれはしねーよ……てか、あの話マジなの?」


「ああ……彼は色々と何というか……常識がバグっている人だったからね……正直、リーン君が真面に育つか本気で心配してたんだが、常識的に育ってくれて良かったよ……」


「え、アイツ常識的だったの?この間『風結界(ウィンディ・ウォール)』(CCランク)で『炎爆破(フィア・バースト)』(Bランク)なんか防いでたけど……」


「……まぁ、彼の子供としては常識的じゃないか?私は寧ろ校庭を粉砕しかねないと考えていたんだが」


「あ、ごめん。それ前にオレがやったわ。呼び出し喰らっちまった」


「少し待ちなさい。何だそれは。聞いていないぞ」


「…………あ」

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