第二部 第141話 懐かしい声
白い光が揺れる。
静かだった。
虚無界とは違う。
黒くない。
沈まない。
終わりもない。
ただ。
静かすぎた。
墓底の王が止まる。
崩れた身体。
壊れた鎖。
折れた杭。
最後まで。
王のまま。
低い声。
『ここから先は』
少し間。
『死者の墓ではない』
静かな響き。
『記憶の底だ』
白い光の奥。
揺れる影。
長い髪。
静かな瞳。
士郎が止まる。
目だけが細くなる。
忘れるはずがない。
低く。
「……セレナ」
静かな声が返る。
「遅かったですね」
少し間。
ほんの僅か。
息を吐く。
「二人とも」
翔の煙が細く揺れる。
視線だけ向ける。
沈黙。
そして。
短く。
「……ここまで来たか」
セレナが小さく頷く。
「ええ」
静かな声。
少し間。
翔を見る。
「虚無界まで来るとは」
ほんの僅か。
口元が揺れる。
「思いませんでした」
翔が煙を吐く。
短く。
「お前が言った」
少し間。
「士郎の所へ行けと」
セレナは静かに頷く。
「ええ」
視線が士郎へ向く。
そして。
また翔へ戻る。
「でも」
少し間。
「ここまで辿り着けるかは」
静かな声。
「分かりませんでした」
士郎が鼻を鳴らす。
低く。
「失礼な話だな」
セレナが少しだけ目を細める。
「でも」
短く。
「来たでしょう?」
沈黙。
士郎が肩を回す。
「まぁな」
笑う者が少し肩を竦めた。
『嫌だなぁ』
小さい声。
『再会系』
珍しく。
少し居心地悪そうだった。
白い光が静かに揺れる。
セレナの視線が。
二人へ向く。
少し間。
静かな声。
「話があります」
空気が。
少しだけ。
変わった。




