第二部 第138話 終わりの王
虚無界が静まる。
黒い海。
終わりの雨。
墓標のように落ちていた剣。
全部。
少しずつ。
止まり始めていた。
墓底の王。
細い身体。
砕けた鎖。
折れた杭。
崩れた剣。
初めて。
膝をついている。
空洞が。
士郎を見る。
長い沈黙。
やがて。
低い声。
『……壊れぬな』
壊れた響き。
『沈まぬ』
少し間。
『終わらぬ』
士郎が肩を回す。
低く息を吐く。
「しつこいな」
短い。
「何回言う」
墓底の王は怒らない。
ただ。
静かだった。
空洞が少し下がる。
『王達は』
低い声。
『皆』
少し間。
『終わった』
黒い海を見る。
『沈んだ』
『壊れた』
『諦めた』
静かな響き。
『だが』
少し間。
『お前達は違う』
翔が煙を吐く。
短く。
「褒めてるなら要らん」
墓底の王が止まる。
そして。
初めて。
ほんの僅か。
空洞が揺れた。
笑ったようにも見えた。
『違う』
低い声。
『羨んでいる』
沈黙。
黒い海が静かに軋む。
『終われぬものを』
少し間。
『少しだけ』
壊れた響き。
『懐かしい』
士郎の目が少し細くなる。
低く。
「知ってるみたいに言うな」
墓底の王は答えない。
ただ。
虚無界の奥を見る。
深い。
さらに深い闇。
黒い海の先。
世界の底。
低い声。
『先へ行け』
短い。
『ここは終わりだ』
少し間。
空洞が二人を見る。
『お前達には』
壊れた響き。
『まだ早い』
笑う者が少し肩を竦めた。
『あぁ』
少し間。
『案内してくれる気だ』
墓底の王が静かに立つ。
崩れた身体。
壊れた鎖。
それでも。
王だった。
『来い』
低い声。
『世界が終わる前に』
黒い海が。
静かに割れた。




