第二部 第121話 墓守の問い
虚無界が静まる。
黒い海。
沈んだ王国。
砕けた玉座。
無数の剣。
王冠。
墓標のように刺さっている。
その中央。
玉座。
都市ほどの大きさ。
そこに。
墓守がいた。
痩せている。
細い。
なのに。
重い。
存在そのものが。
虚無界と繋がっているようだった。
『……また』
壊れた声。
古い。
遠い。
『王を連れて来たか』
士郎は動かない。
視線も逸らさない。
低く息を吐く。
「違うな」
少し間。
「通りすがりだ」
墓守は沈黙した。
見ている。
目はない。
なのに。
見透かされる。
そんな感覚。
翔が煙を吐く。
静かな声。
「気配が深い」
短く。
「沈み過ぎてる」
笑う者が少し肩を竦める。
『墓守だからね』
少し間。
『ここにいる王達』
静かな声。
『全部見送ってきた』
黒い海が揺れる。
墓守がゆっくり口を開く。
『通りすがり』
少し間。
『怪物ほど』
低い声。
『そう言う』
沈黙。
巨大な指先が。
ゆっくり動く。
海底。
沈んだ王冠。
折れた剣。
その一つを拾い上げた。
崩れている。
古い。
終わった王の証。
『王は皆』
静かな声。
『最初は違うと言う』
少し間。
『気付けば』
黒い海が低く軋む。
『何かを背負う』
士郎は黙って聞いていた。
説教とは思わない。
ただ。
古い話を聞いている感覚。
低い声。
「お前もか」
墓守の動きが止まる。
長い沈黙。
そして。
『私は』
少し間。
『背負った側ではない』
崩れた声。
『見送る側だ』
翔が短く言う。
「墓守」
『そう』
静かな声。
『王の終わりを見る』
少し間。
『役目』
士郎が周囲を見る。
沈んだ王国。
折れた冠。
終わった文明。
低く息を吐く。
「随分と、面倒な役だな」
墓守は否定しない。
ただ。
ゆっくり。
こちらを見る。
『なら』
低い声。
『問おう』
虚無界が静まる。
黒い海。
沈んだ墓標。
全部が止まる。
『怪物』
少し間。
『お前達は』
壊れた声。
『何故、まだ沈んでいない』
空気が。
わずかに重くなった。




