第二部 第116話 怪物の答え
虚無界が静まる。
黒い海。
沈んだ城。
崩れた王達。
その中心。
巨大な王が立っていた。
都市ほどの剣。
折れた冠。
死んでいる。
なのに。
威厳だけが残っている。
『お前達は』
低い声。
空間そのものが軋む。
『何を守る』
沈黙。
士郎は動かない。
考えているようにも見えない。
ただ。
巨大な王を見る。
少し間。
低く息を吐いた。
「別に」
静かな声。
「守るために生きてねぇ」
黒い海が揺れる。
王の目が細くなる。
士郎が続ける。
「欲しいもん取る」
少し間。
「邪魔なら潰す」
短い。
飾りもない。
正直だった。
笑う者が少し笑う。
『君らしい』
王は黙る。
怒りも。
失望もない。
ただ。
聞いていた。
翔が煙を吐く。
静かな沈黙。
そして。
短く言う。
「守る気も」
少し間。
「壊す気もない」
黒い海が揺れる。
「必要ならやる」
静かな声。
「それだけ」
王の視線が止まる。
二人を見る。
長い沈黙。
やがて。
低い声。
『空だな』
静かな響き。
『王ではない』
少し間。
『怪物か』
士郎が鼻を鳴らす。
「今さらだな」
低い声。
「何人も言ってた」
王がゆっくり剣を持ち上げる。
都市ほどの刃。
空が軋む。
だが。
殺意とは少し違う。
試していた。
『なら』
低い声。
『問う』
少し間。
『守る理由もない怪物が』
巨大な目。
士郎を映す。
『何故』
静かな声。
『王を作った』
沈黙。
黒い海が揺れる。
ユース。
笑う子供。
働く兵。
小さな国。
一瞬だけ。
頭を過る。
士郎は少し黙った。
低く息を吐く。
「……知らねぇよ」
少し間。
視線は逸らさない。
「気付いたら」
短く。
「そうなってた」
翔が煙を吐く。
小さく。
「多分」
笑う者が。
少しだけ笑った。
『それ』
少し間。
『案外、答えかもね』
黒い海が。
深く揺れた。




