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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』 第二章 『王の死んだ世界編』
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第二部 第92話 開かれる門


「……食料庫を開ける」



若い男は、震える声でそう言った。



「手伝ってくれ」



少し間。



「俺一人じゃ無理だ」



士郎は吹き出した。



「初仕事で人頼るか」



「無理なもんは無理だろ!」



若い男は城を見上げる。



巨大な城門。



兵。



鍵。



権力。



何もかもが。



自分一人では届かない場所にある。



翔は煙を吐いた。



「無理だと分かって頼るなら」



少し間。



「まだマシだ」



士郎は鼻で笑う。



「いい」



「行くぞ」




城の食料庫前。



重い鉄扉が立ちはだかっていた。



兵達は青ざめて立ち尽くし、



商人。



神官。



地主。



必死に叫んでいる。



「開けるな!!」



「備蓄が尽きる!!」



「国が回らなくなるぞ!!」



若い男は喉を鳴らした。



怖い。



だが。



もう逃げなかった。



「開けろ」



静かな声。



兵達は動かない。



翔が煙を吐く。



「長い」



霧。



静寂。



揺れる。



次の瞬間。



扉を封じていた鎖が、



音もなく崩れた。



鉄の塊が床へ落ちる。



重い扉が。



ゆっくりと開いていく。



静寂。



中には。



食料が積まれていた。



肉。



干し肉。



小麦。



保存食。



果実酒。



飢えた民達が。



外で骨みたいに痩せているのに。



ここには。



腐るほど食料があった。



子供が息を呑む。



母親が口元を押さえる。



老人は。



何も言えず膝を震わせた。



若い男の顔が変わった。



恐怖ではない。



怒りだった。



「……ふざけんな」



士郎が少し笑う。



「いい顔だ」



若い男は民を見る。



腹を空かせた顔。



震える子供。



泣くことすら諦めた母親。



全部を見る。



もう迷わない。



「配れ」



静かな声。



だが。



今度は震えていない。



「子供と老人」



「怪我人が先だ」



少し間。



「動ける奴は運ぶのを手伝ってくれ」



民達は一瞬。



信じられないように固まった。



次の瞬間。



母親が崩れるように泣いた。



「ありがとう……!」



その声を合図に。



人が動き始める。



食料庫が開く。



城の中の食料が。



初めて民のために運び出されていく。



笑う者がぽつりと呟いた。



『……国っぽくなってきたな』



翔は煙を吐く。



「飯が出る国は」



少し間。



「まだマシだ」



士郎は若い男を見る。



「次だ」



若い男が振り向く。



「え?」



「食わせるだけじゃ終わらねぇ」



少し間。



「奪ってた奴らがいるだろ」



その言葉に。



商人達の顔色が変わった。




同じ頃。



城の奥。



隠し通路。



黒衣の男が息を切らして走っていた。



「報告しろ……!」



汗に濡れた顔で叫ぶ。



「次の王候補へ伝えろ!」



「国が取られる!!」

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