第二部 第90話 勇気
静寂。
◇
風が。
◇
止まった。
◇
「……やる」
◇
若い男の声が。
◇
小さく。
◇
でも。
◇
逃げなかった。
◇
士郎が、少し止まる。
◇
そして。
◇
笑った。
◇
獰猛に。
◇
「いい」
静かな声。
◇
「じゃあ最初の仕事だ」
◇
男が、目を見開く。
◇
「え?」
◇
士郎が、広場を見る。
◇
鎧の男。
◇
商人。
◇
神官。
◇
地主。
◇
まだ。
◇
顔を歪めていた。
◇
そして。
◇
民。
◇
痩せた子供。
◇
老人。
◇
腹を空かせた人達。
◇
全部。
◇
見る。
◇
静かな声。
◇
「椅子取り終わらせろ」
◇
風が。
◇
止まった。
◇
男が、固まる。
◇
「……は?」
◇
笑う者が、頭を抱える。
◇
『急!!』
◇
『ブラック企業より雑!!』
◇
士郎が、鼻で笑う。
◇
「王やるんだろ」
◇
少し間。
◇
「なら決めろ」
◇
静かな目。
◇
冷たい。
◇
「誰助けて」
◇
「誰切るか」
◇
男が。
◇
止まる。
◇
怖い。
◇
重い。
◇
責任。
◇
全部。
◇
来る。
◇
だが。
◇
後ろ。
◇
子供。
◇
老人。
◇
母親。
◇
全部。
◇
見えた。
◇
深く。
◇
息を吸う。
◇
そして。
◇
初めて。
◇
前を見る。
◇
静かな声。
◇
少し震えていた。
◇
「……食料庫」
◇
広場が。
◇
止まる。
◇
男が、続けた。
◇
「開ける」
◇
商人が、顔を変える。
◇
「なっ——!?」
◇
男が、止まらない。
◇
「子供」
◇
「老人」
◇
「怪我人」
◇
少し間。
◇
民を見る。
◇
「腹減ってる奴優先だ」
◇
風が。
◇
揺れた。
◇
神官が、怒鳴る。
◇
「ふざけるな!!」
◇
「蓄えを崩せば国が——」
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男が、初めて遮る。
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震えている。
◇
でも。
◇
逃げない。
◇
「国って」
◇
少し間。
◇
怒った目。
◇
「民が死んでも残るのか?」
◇
静寂。
◇
商人が、後退る。
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鎧の男が、顔を歪めた。
◇
「黙れ!!」
◇
剣。
◇
抜く。
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その瞬間。
◇
霧。
◇
通り過ぎた。
◇
静寂。
◇
鎧の男。
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崩れる。
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終わり。
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翔が、もう戻っていた。
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煙を吐く。
◇
静かな目。
◇
「邪魔」
◇
少し間。
◇
「長い」
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笑う者が、数秒止まる。
◇
『早っ!?』
◇
『しかも理由それ!?』
◇
士郎が、腹を抱えて笑った。
◇
「ハハッ!!」
◇
そして。
◇
男を見る。
◇
静かな目。
◇
少しだけ。
◇
試す笑み。
◇
「続けろ」
◇
静かな声。




