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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』 第二章 『王の死んだ世界編』
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第二部 第87話 民の視線



風が。


少しだけ吹いた。



誰も。



鎧の男を見ていなかった。



視線は。



若い男へ向いていた。



子供。



老人。



母親。



店主。



痩せた民。



全部。



見ていた。



怖がっていない。



違う。



見ている。



期待。



少しだけ。



そんな目だった。



鎧の男が止まる。



剣が震える。



顔が歪む。



「な……」



掠れた声。



「何故だ……!」



怒り。



焦り。



恐怖。



全部が滲む。



「余の方が強い!!」



「金もある!!」



「兵もある!!」



「なのに何故!!」



若い男が止まる。



答えなんて知らない。



でも。



後ろを見る。



子供。



パン。



母親。



老人。



民。



全部がいる。



そして。



小さく息を吐いた。



静かな声。



「……知らない」



少し間。



鎧の男を見る。



震えている。



それでも。



逸らさない。



「でも」



民を見る。



「多分」



少し間。



「腹減ってる奴の前で」



静かな声。



「自分だけ腹いっぱいなのが」



少しだけ。



怒った目。



「ムカつくんだと思う」



風が止まった。



民達が少しだけ目を見開く。



そして。



老人が小さく呟く。



「……そうだ」



母親が涙を拭く。



「子供に食わせたかった……」



店主が俯く。



「ずっと……苦しかった」



声が少しずつ広がる。



鎧の男が。



初めて後退った。



違う。



空気に押された。



孤立。



初めて理解した。



誰も。



自分を見ていない。



士郎が少し笑う。



獰猛じゃない。



静かな目。



「ようやく」



少し間。



「それっぽくなってきたな」



翔が煙を吐く。



男を見る。



静かな声。



「まだ弱い」



少し間。



「でも」



煙が揺れる。



「民見て喋ってる」



静かな声。



「前よりマシだ」

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