第二部 第80話 王の喧嘩
「王様やるなら」
◇
少し笑う。
◇
「まず喧嘩からだ」
◇
広場の空気が。
止まった。
◇
若い男が固まる。
◇
「……は?」
静かな声。
◇
笑う者が頭を抱えた。
◇
『始まった!!』
◇
『士郎式教育!!』
◇
『だいたい暴力!!』
◇
士郎が顎で示す。
◇
鎧の男。
◇
商人。
◇
神官。
◇
地主。
◇
さっきまで。
王を名乗っていた連中。
◇
「お前が王やりたいなら」
静かな声。
◇
少し間。
◇
「まず黙らせろ」
◇
男が目を見開く。
◇
「む、無理だろ!?」
◇
震えた声。
◇
「俺そんな強くない!!」
◇
士郎が鼻で笑った。
◇
「知ってる」
静かな声。
◇
「だからやれ」
◇
広場が静まる。
◇
翔が煙を吐く。
◇
静かな目。
◇
男を見る。
◇
「弱いなら」
◇
少し間。
◇
「口でも意地でも使え」
◇
静かな声。
◇
「何もせず負ける方がダサい」
◇
笑う者が数秒止まる。
◇
『翔がわりとちゃんと教えてる!?』
◇
男が止まる。
◇
怖い。
◇
強くない。
◇
相手は。
鎧。
金。
権力。
◇
全部ある。
◇
自分は。
何もない。
◇
でも。
◇
後ろを見る。
◇
子供。
◇
民。
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痩せた顔。
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怯えた目。
◇
全部。
見えた。
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沈黙。
◇
そして。
小さく息を吐く。
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震える足。
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前へ出る。
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鎧の男が鼻で笑う。
◇
「平民風情が」
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商人も笑う。
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神官も笑う。
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地主も笑う。
◇
馬鹿にする。
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若い男が拳を握る。
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震えている。
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それでも。
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逃げない。
◇
静かな声。
◇
「……あんたら」
◇
少し間。
◇
民を見る。
◇
そして。
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震えながら言った。
◇
「腹減ってる奴見て」
◇
「何とも思わなかったのか」
◇
沈黙。
◇
広場が。
止まった。




