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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第二部『魔王と死神』 第二章 『王の死んだ世界編』
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第二部 第74話 ひと時の安堵


風だけが。


吹いていた。



もう。


誰も叫ばない。



鐘も。


怒号も。


ない。



ただ。


終わった。



それだけだった。



民達が。


呆然と立ち尽くす。



老人。


母親。


子供。



誰も。


動かない。



信じられない。



終わった。



あの領主が。


死んだ。



本当に。


終わった。



翔が、煙草を指で弾く。



灰が落ちる。



静かな声。



「飯」



少し間。



「まだあるか」



笑う者が、頭を抱えた。



『空気!!』



『今すげぇ空気だったろ!?』



士郎が、少し吹き出した。



「だな」


静かな声。



「腹減った」



その時。



小さな声。



「……あの」



子供だった。



あの。


肉を見ていた子供。



震えながら。


士郎を見る。



翔を見る。



怖い。



でも。


目を逸らさない。



「ありがとう……」



小さい声。



母親が、慌てて頭を下げる。



「す、すみません……!」



震えた声。



「でも……!」



涙が。


少し零れる。



「助かりました……」



沈黙。



一人。



また一人。



頭を下げ始める。



老人も。


店主も。


兵に怯えていた人達も。



恐怖。


畏怖。


感謝。



全部。


混ざっていた。



笑う者が、少し止まる。



『……あれ?』



『感謝されてる』



士郎が、少し眉を寄せた。



慣れてない。



違和感。



少し間。



そして。


鼻で笑う。



「礼は飯でいい」


静かな声。



笑う者が、数秒止まる。



『結局飯!?』



翔が、煙を吐く。



静かな目。



少し間。



「酒も」


静かな声。



民達が。


一瞬。


止まる。



そして。


誰かが。


小さく笑った。



張り詰めていた空気が。


少しだけ。


解けた。



遠く。


城が。


静かに沈黙していた。



王を失った国。



その長い混乱は。


まだ終わらない。



だが。



何かが。


少しだけ変わり始めていた。

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