第二部 第65話 偽王
乾いた風が吹いていた。
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荒野。
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崩れた道。
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遠く。
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黒煙。
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城。
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巨大だった。
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だが。
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違和感。
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豪華。
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派手。
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民が痩せているのに。
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城だけが肥えていた。
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翔が煙を吐く。
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静かな目。
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城を見る。
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「趣味悪いな」
静かな声。
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笑う者が頷いた。
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『分かる』
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『無駄に金かかってるタイプ』
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『嫌な予感しかしない』
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士郎は笑わない。
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冷たい目。
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ただ。
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城を見ていた。
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街道。
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痩せた民。
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荷車。
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兵。
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怒号。
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殴打。
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「急げ!!」
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「税を納めろ!!」
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老人が倒れる。
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袋。
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食料。
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地面へ散る。
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兵が鼻で笑った。
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「遅ぇんだよ」
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蹴る。
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老人が呻く。
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子供が泣いた。
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「やめて……!」
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笑う者が顔を歪める。
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『あー……』
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『終わった』
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翔が煙草を指で弾く。
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灰が落ちる。
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静かな声。
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「殺すか?」
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士郎が止まる。
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笑わない。
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静か。
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冷たい。
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怖い。
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ただ。
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怖い。
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兵が老人の髪を掴む。
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「逆らうなら——」
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その瞬間。
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空気が沈んだ。
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兵達が止まる。
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呼吸ができない。
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膝が震える。
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本能が叫んでいた。
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危険。
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逃げろ。
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士郎が歩く。
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ゆっくり。
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静かな目。
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冷たい。
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そして。
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少しだけ笑った。
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冷えている。
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「王様ごっこ」
静かな声。
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「流行ってんのか?」
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兵が初めて恐怖した。
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「な、なんだお前——」
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遅い。
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地面が沈む。
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兵達の身体が叩き伏せられる。
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絶叫。
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骨が軋む。
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老人が震える。
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子供が泣き止む。
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士郎が兵を見下ろした。
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静かな声。
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「偉い奴呼べ」
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冷たく笑う。
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「話がある」
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遠く。
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城の上空で。
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何かが。
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静かに目を開いた。




