第二部 第9話 消去対象
暗黒。
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静寂。
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深層管理者は、 完全に消滅していた。
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痕跡すらない。
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観測権限。
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存在情報。
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因果。
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全部。
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霧みたいに消えている。
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観測者達は、 動けなかった。
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理解不能。
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深層管理者。
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外界でも上位存在。
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その存在が。
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一瞬で終わった。
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しかも。
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何をされたのか、 誰も理解できていない。
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翔は、 静かに煙を吐く。
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「雑魚だったな」
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士郎が笑う。
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「お前、 マジで容赦ねぇな」
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翔は肩を竦めた。
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「殺し屋だからな」
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その時。
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暗黒全域へ、 巨大な警報音が響いた。
轟音。
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観測者達が、 一斉に震える。
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『緊急事態』
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『深層管理者消滅』
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『霧流反応確認』
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『消去対象認定』
静寂。
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その瞬間。
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暗黒の奥で。
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無数の“門”が開いた。
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光。
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黒。
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異形。
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無数の観測者軍。
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今までとは桁が違う。
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空間そのものが、 埋め尽くされていく。
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士郎が、 心底楽しそうに笑う。
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「いいじゃねぇか」
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「やっと戦争っぽくなってきた」
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観測者軍の中心。
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巨大な白い球体が、 ゆっくり浮かび上がる。
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惑星みたいな大きさ。
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その表面には、 無数の目が浮かんでいる。
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そして。
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声が響いた。
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『哀沢翔』
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『危険度修正完了』
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『最優先消去対象』
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『霧流拳継承者確認』
静寂。
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翔の目が、 少しだけ細まる。
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士郎が笑う。
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「お前、 有名人じゃねぇか」
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翔は煙草を指で弾いた。
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赤い火が、 暗黒へ消える。
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「昔、 ちょっと暴れただけだ」
静かな声。
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次の瞬間。
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観測者軍全域へ、 無数の光輪が展開された。
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空間封鎖。
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認識固定。
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因果拘束。
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完全包囲。
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観測者達が、 一斉に詠唱を始める。
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『対象封印開始』
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『霧流対策展開』
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『存在固定完了』
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――だが。
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翔は笑った。
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静かに。
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冷たく。
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「だから遅ぇんだよ」
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その瞬間。
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黒い霧が、 暗黒全域へ広がった。
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観測者達が揺れる。
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『認識阻害』
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『視界喪失』
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『追跡——』
静寂。
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次の瞬間。
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観測者軍が、 一斉に崩壊した。
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誰も見えない。
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何も分からない。
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ただ。
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無数の存在が、 同時に死んでいた。
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空間ごと。
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静かに。
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霧みたいに消えていく。
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士郎は、 腹を抱えて笑った。
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「ハハハッ!!」
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「お前、 本当に終わってんな!!」
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翔は、 気怠そうに歩き出す。
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「うるせぇよ」
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――その時。
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暗黒のさらに奥。
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今までとは比較にならない、 巨大な“何か”が。
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ゆっくり、 目を開いた。




