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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第十一章 『魔王編』
224/464

第224話 霧流

玉座の間。



静寂。



世界の支配者達が、 跪いていた。



アルシア。



セレナ。



エレノア。



各国王。



誰一人、 顔を上げられない。



その中心。



西園寺士郎。



世界を支配した魔王。



そして。



その隣で。



哀沢翔だけが、 気怠そうに立っていた。



煙草の煙。



無防備な姿。



だが。



誰も近づけない。



本能が理解していた。



この男もまた、 怪物だと。



その時。



一人の上位魔族が、 低く唸る。



『……無礼だ』



『魔王様の隣に、 貴様ごときが立つな』



巨大な殺気。



玉座の間が震える。



それでも。



翔は振り返りもしない。



煙草を咥えたまま。



「うるせぇな」


静かな声。



次の瞬間。



上位魔族の首が落ちた。


静寂。



誰も見えなかった。



斬撃も。



移動も。



殺気すらない。



ただ。



気付いた時には、 死んでいた。



血が落ちる。



上位魔族の身体が、 ゆっくり崩れていく。



霧みたいに。



存在そのものが、 消えていく。



アルシアが目を見開く。



「……なに、 今の」


小さな声。



理解できない。



速さじゃない。



魔力でもない。



もっと異質。



翔は、 いつの間にか魔族の背後に立っていた。



黒い瞳。



冷たい目。



「今、 話してんだけど?」



その瞬間。



黒い霧が、 静かに揺れる。



空気が消える。



気配が消える。



存在感そのものが、 霧散していく。



セレナですら、 一瞬見失った。



エレノアが、 静かに目を細める。



「……なるほど」



「存在干渉型」



翔は肩を竦める。



「霧流」


静かな声。



「相手の気を崩して、 存在ごと殺す」



「まぁ、 殺し専用だな」


静寂。



誰も動けない。



理解してしまった。



この男もまた。



普通の強者じゃない。



世界そのものから、 外れている。



その時。



玉座の上で。



士郎だけが笑った。



獰猛に。



心底楽しそうに。



「やっぱいいな」



「その殺し方」



翔は吹き出す。



「お前ほど、 うるさくねぇだろ」



士郎は立ち上がる。



黒い重力が揺れる。



世界が震える。



だが。



翔だけは、 何一つ変わらない。



恐れない。



跪かない。



ただ。



昔みたいに笑う。



「で?」



「もう飽きたんだろ? この世界」


静寂。



士郎は、 黒い空を見上げた。



世界。



玉座。



支配。



全部どうでもいい。



その向こう。



もっと強い何か。



もっと壊し甲斐のある何か。



それだけが、 今の士郎を動かしていた。



士郎は獰猛に笑う。



「……行くか」



翔も笑った。



怪物みたいに。

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