第221話 再会
玉座。
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静寂。
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世界は跪いていた。
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人類。
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魔族。
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竜族。
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全てが、 西園寺士郎を王として受け入れている。
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逆らう者はいない。
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戦争もない。
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神も死んだ。
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完全支配。
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それなのに。
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玉座に座る士郎は、 どこまでも退屈そうだった。
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頬杖。
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黒い瞳。
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虚ろな視線。
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世界すら、 もう刺激にならない。
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その時。
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玉座の間の扉が、 ゆっくり開く。
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誰も通すはずがない。
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だが。
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兵士達の声も聞こえない。
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静かだった。
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足音。
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ゆっくり。
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気怠そうに。
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そして。
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男が現れる。
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黒いコート。
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鋭い目。
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口元には、 不敵な笑み。
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士郎の黒い瞳が、 初めて大きく揺れた。
静寂。
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男は、 玉座を見上げる。
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そして。
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呆れたように笑った。
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「随分デカくなったな」
静かな声。
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「お前」
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玉座の間の空気が止まる。
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誰だ。
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何故。
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魔王を前に、 平然としていられる。
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アルシアが息を呑む。
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セレナが目を細める。
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エレノアですら、 僅かに表情を変えた。
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だが。
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士郎だけは。
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数秒、 黙っていた。
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そして。
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ゆっくり立ち上がる。
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黒い重力が揺れる。
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世界そのものが、 震える。
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それでも。
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士郎は笑っていた。
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今までで初めて。
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心の底から。
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獰猛に。
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楽しそうに。
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「……おせぇよ」
静かな声。
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男は肩を竦める。
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「悪ぃ悪ぃ」
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「死ぬのに時間かかった」
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哀沢翔。
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西園寺士郎が。
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唯一。
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“対等”と認めた男。
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翔は、 世界を支配した魔王を見ても。
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何一つ変わらない。
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怖がりもしない。
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跪きもしない。
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ただ。
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昔みたいに笑う。
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「で?」
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「退屈してんだろ?」
静寂。
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その瞬間。
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士郎の黒い瞳から。
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初めて。
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空虚が消えた。
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獰猛な笑み。
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圧倒的重力。
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そして。
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久しぶりに。
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西園寺士郎は、 心の底から笑った。
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「……あぁ」
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「やっと、 面白くなってきた」




