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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第十一章 『魔王編』
215/464

第215話 理解者

夜。



黒い空。



世界は、 完全に西園寺士郎へ支配されていた。



誰も逆らわない。



誰も戦わない。



ただ。



怯えながら生きている。



その中心。



旧神都最上層。



崩壊した神殿の屋上で。



士郎は一人、 夜空を見上げていた。



黒いコート。



黒い瞳。



神を殺し。



世界を支配した男。



なのに。



その背中は、 どこまでも退屈そうだった。



その時。



後ろから、 足音が響く。



士郎は振り返らない。



「よく来れるな」


静かな声。



「俺の近くに」



返事。



「今さらでしょ?」


女の声。



セレナだった。



紫の瞳。



いつも通りの笑み。



だが。



その目だけは、 少しだけ寂しそうだった。



セレナは、 士郎の隣まで歩いてくる。



黒い重力が渦巻いている。



普通なら、 立っていることすらできない。



それでも。



セレナは平然としていた。



「世界を手に入れた気分は?」


静かな声。



士郎は、 興味なさそうに空を見る。



「別に」



「最初から、 こんなもんだと思ってた」



セレナは小さく笑う。



「ほんと、 かわいくない」



静寂。



風だけが吹く。



ふと。



セレナが呟いた。



「ねぇ」



「後悔とか、 ないの?」



士郎は黙っている。



神を殺した。



世界を壊した。



無数を踏み潰した。



それでも。



黒い瞳には、 何も映っていない。



そして。



「ねぇな」


静かな声。



「弱ぇ奴が潰れただけだ」



セレナは、 少しだけ目を伏せる。



悲しい。



でも。



分かっていた。



この男は、 最初からこういう怪物だった。



だから。



セレナは笑う。



優しく。



どこか諦めたみたいに。



「……ほんと、 最低」



士郎は鼻で笑う。



「今さらだろ」



セレナは、 静かに士郎を見る。



世界最強の怪物。



誰にも届かない王。



でも。



その背中は、 どこまでも孤独だった。



だから。



セレナは小さく呟く。



「ねぇ、 士郎」



「あなた、 退屈なんでしょ?」


静寂。



その瞬間だけ。



士郎の黒い瞳が、 ほんの僅かに揺れた。



だが。



次の瞬間には、 もう消えている。



「……さぁな」


静かな声。



夜風が吹く。



世界は跪いた。



なのに。



魔王だけは。



どこまでも、 満たされていなかった。

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