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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第十一章 『魔王編』
214/464

第214話 決別

王都。



静かだった。



世界は、 既に西園寺士郎へ屈服している。



戦争は終わった。



神は死んだ。



誰も逆らわない。



それでも。



空気だけは、 重かった。



黒い空。



世界全土を覆う重力。



人々は、 息を潜めて生きていた。



その頃。


王城最上階。



リゼは、 一人で空を見上げていた。



震えている。



怖い。



苦しい。



それでも。



目を逸らせない。



そこにいるのは。



ずっと追い続けた男だから。



その時。



背後に、 黒い重力が現れる。


静寂。



リゼが振り返る。



そして。



息を呑んだ。



西園寺士郎。



黒いコート。



黒い瞳。



圧倒的存在感。



だが。



その姿だけは、 どこまでも変わっていなかった。



リゼの瞳が揺れる。



「……士郎」


小さな声。



士郎は、 興味なさそうに窓の外を見る。



「随分静かになったな」



それだけ。



まるで。



世界崩壊すら、 どうでもいいみたいに。



リゼは唇を噛む。



言いたいことが、 山ほどある。



怖かった。



苦しかった。



止めたかった。



でも。



目の前の男は。



もう。



自分の知っている士郎じゃない。



それでも。



リゼは震える声で言った。



「……もう、 やめて」


静寂。



士郎は、 ゆっくりリゼを見る。



黒い瞳。



感情はない。



ただ。



少しだけ、 不思議そうだった。



「なんで?」


静かな声。



リゼが息を呑む。



士郎は本当に、 分かっていない。



壊した。



殺した。



世界を踏み潰した。



なのに。



悪いことだと、 一切思っていない。



リゼの瞳から、 涙が零れる。



「もう…… 誰も幸せじゃない」


小さな声。



「こんなの、 間違ってる……」


静寂。



士郎は数秒、 黙っていた。



そして。



興味なさそうに、 目を逸らす。



「関係ねぇよ」


静かな声。



「弱ぇから潰れた」



リゼの肩が震える。



理解してしまった。



届かない。



もう。



この怪物には。



何を言っても。



士郎は窓際へ向かう。



黒い重力が揺れる。



そして。



振り返りもせずに言った。



「お前は、 弱ぇくせに生き残った」



「運が良かったな」


静寂。



リゼは泣いていた。



声も出せず。



ただ。



崩れていくみたいに。



その時。



士郎が、 ほんの僅かに立ち止まる。



だが。



結局。


何も言わなかった。



黒い重力。



次の瞬間。



西園寺士郎は、 静かに消えた。



残されたリゼだけが。



泣き続けていた。

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