第205話 怪物
天上。
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静寂。
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最奥神ゼルヴァの胸を。
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西園寺士郎の腕が、 貫いていた。
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白い神威が漏れ出す。
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天上そのものが、 崩壊音を上げていた。
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神々は動けない。
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誰も。
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理解できなかった。
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神々の頂点。
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絶対者。
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その存在が。
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“暴力だけ”で、 ねじ伏せられている。
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士郎は笑った。
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黒い瞳。
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そこには。
勝利の喜びすらない。
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ただ。
壊すことを楽しむ、 怪物だけがいた。
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「どうした」
静かな声。
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「神様ってのは、 もっと強ぇんじゃなかったのか?」
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ゼルヴァは、 静かに士郎を見る。
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白い存在。
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その身体には、 巨大な亀裂が走っていた。
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それでも。
消えない。
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崩れながらも。
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なお立っている。
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『……なるほど』
静かな声。
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『お前は、 原初とは違う』
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士郎は鼻で笑う。
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「当たり前だろ」
黒い瞳。
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「俺を、 あんな雑魚と一緒にすんな」
静寂。
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その瞬間。
神々が凍りついた。
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原初。
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世界の終わり。
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神々が最も恐れた存在。
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その存在すら。
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士郎は、 完全に見下していた。
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その時。
頭の奥。
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原初の声は、 もう聞こえない。
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完全沈黙。
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蹂躙された。
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支配された。
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西園寺士郎という、 更なる怪物に。
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その瞬間。
轟音。
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黒い重力が、 ゼルヴァを内側から破壊する。
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白い神威障壁。
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完全崩壊。
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ゼルヴァの身体が、 大きく砕け始めた。
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神々が絶叫する。
『ゼルヴァ様ァァァ!!』
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『天上維持不能!!』
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『崩壊する!!』
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その時。
地上。
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空が砕けていた。
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黒く染まる世界。
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崩壊する天。
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人々は震えていた。
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ただ。
誰も目を逸らせない。
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本能が理解している。
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今。
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世界の頂点が、 生まれようとしている。
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その頃。
崩れた鐘楼。
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セレナが、 静かに空を見上げていた。
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紫の瞳。
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恐怖はない。
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ただ。
納得だけがあった。
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「……やっぱり」
静かな声。
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「あなたは、 そういう男なのね」
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神も。
原初も。
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全部踏み潰して。
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それでも、 止まらない怪物。
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セレナは小さく笑う。
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「ほんと、 最低」
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だが。
その目は、 少しだけ嬉しそうだった。




