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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第十章 『神殺し編』
180/464

第180話 器

神界総攻撃。



無数の神槍。


神罰。


神威砲撃。



空そのものが、 黄金に染まっていた。



その中心。



黒。



西園寺士郎だけが、 真正面から神々を押し返していた。



轟音。



黒い重力が、 神槍群を圧壊する。



神威砲撃が、 触れた瞬間に呑み込まれる。



兵士たちは、 もはや声も出ない。



神々。



そして。


それを一人で蹂躙する怪物。



完全に。


世界の外側の戦いだった。



その時。


エレノアが士郎を見る。


赤い瞳。


険しい顔。



「……侵食が速すぎる」


小さな声。



リゼが振り向く。


「え……?」



エレノアは唇を噛む。



「このままだと、 士郎が消える」


静寂。



リゼの顔が青ざめる。


「消えるって……」



エレノアは空を見る。



黒い重力。


神威。



そして。


士郎の全身を覆う、 原初の侵食。



「原初は、 本来“器”を持たない」


静かな声。



「存在そのものが災厄」



「だから普通の人間なら、 触れた瞬間に壊れる」



グランが息を呑む。



「だが士郎は……」



エレノアが続ける。



「耐えてる」


静寂。



「あり得ないほど」



その時。


上位神が再び声を発した。



『異常個体』


世界へ響く声。



『器の自我が、 未だ残存』



『理解不能』



その瞬間。


士郎の黒い瞳が、 わずかに揺れる。



自我。



残存。



最近。


自分でも分かっている。



少しずつ。


自分が変わっていることを。



頭の奥で、 原初の声が笑う。



『お前はお前だ』



『だから壊せ』



『全部』



士郎は小さく笑った。



だが。


その笑みは、 どこか空っぽだった。



その時。


黄金の門の奥。



さらに巨大な神威が漏れ出す。


轟音。



兵士たちが絶叫する。


「まだ来るのか!?」



エレノアの顔色が変わる。



「……違う」


小さな声。



「来るんじゃない」


静寂。



「天上そのものが、 降りてくる」



グランが目を細める。



「お前、 何を知ってる」


静寂。



エレノアは少し黙る。



赤い瞳。



その奥に。


初めて。


焦りが見えた。



そして。


低く呟く。



「私は、 原初を殺したいだけよ」


静寂。



リゼが目を見開く。


「……は?」



だが。


エレノアは士郎から目を離さない。



黒い怪物。



西園寺士郎。



そして。


小さく呟いた。



「そのために、 あいつが必要だった」



その頃。


崩れた鐘楼の上。



セレナが静かに空を見上げていた。


紫の瞳。



黄金の門。


神々。


原初。



全部が、 最悪の形で噛み合い始めている。



だが。


セレナの視線は、 神々ではなく。



士郎だけを見ていた。



黒い紋様。


黒い瞳。



壊れていく怪物。



セレナは小さく目を伏せる。



「……あなた、 まだ残ってるのね」


静かな声。



「あんな姿になっても」



遠く。


神々へ笑う士郎。



その笑みの奥に、 まだ微かに残る“人間”。



セレナはどこか苦しそうに呟く。



「だから私は、 あなたを見捨てられないのよ」

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