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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第九章 『帝国崩壊編』
145/620

第145話 開戦前夜

帝国中央議会。



巨大な円形会議場。


赤い絨毯。


黄金の柱。


そして。


重苦しい空気。



帝国上層部。


元帥。


将軍。


貴族。


魔導院。



全員の前へ、一枚の資料が置かれていた。



『西園寺士郎』



静寂。



帝国元帥バルディウスが口を開く。


白髪。


巨体。


右目には古傷。



「確認する」


低い声。



「十三英雄戦争において、世界防衛戦線は壊滅的被害を受けた」



空気が重くなる。



「原因は一人」



資料へ刻まれた名前。



西園寺士郎。



元帥の瞳が細くなる。


「もはや人類単位での対処は不可能」


静寂。



「故に帝国は決断した」



次の瞬間。


巨大地図が展開される。



魔族領全域。


侵攻ルート。


兵站。


軍勢配置。



完全戦争。



将軍たちが笑う。


「数で押し潰せばいい」


「所詮は一人だ」


「国家には勝てん」



しかし。


一人だけ笑っていない男がいた。



帝国最強騎士。


レオンハルト。



黒い鎧。


鋭い眼光。


腰には長剣。



彼だけは知っている。


十三英雄戦争の記録を、全部読んだから。



“アレ”は、数でどうにかなる存在じゃない。



その時。


皇帝が立ち上がる。



帝国皇帝グラディウス。



黄金の外套。


圧倒的威圧。



「西園寺士郎は危険だ」


静寂。



「故に」


赤い瞳。


冷酷な声。



「帝国は、“怪物”を討つ」


轟音。



帝国軍総動員。


正式決定。



その頃。


魔王城。



リゼが資料を見ながら顔を引きつらせていた。


「いや待って待って待って」


「軍勢の数おかしくない!?」



グランがため息を吐く。


「帝国本気だからな」



数百万規模。


飛空戦艦。


古代魔導砲。


竜騎兵団。



世界最大軍事国家。



それが全部、士郎一人へ向く。



それでも。


士郎は笑っていた。



「いいじゃねぇか」


リゼが叫ぶ。


「よくない!!」



その時。


エレノアが士郎を見る。


赤い瞳。


少し険しい。



「……士郎」


静寂。



「本当に全部潰す気?」



士郎は少しだけ黙る。


黒い瞳。



戦争。


殺し。


敵。



今までなら、迷わなかった。



それでも。


今は違う。



十三英雄戦争。


原初。


侵食。



あの戦い以降。


ほんの少しだけ。


士郎の中で、何かが変わり始めていた。



それでも。


次の瞬間。


士郎は笑った。


獰猛に。



「向こうが来るなら潰す」


静寂。



エレノアは小さく目を伏せる。



その答えが、士郎らしいと分かっているから。

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