第131話 総攻撃
魔王城北部戦線。
◇
黒い空。
崩壊する大地。
空間を埋め尽くす黒い靄。
◇
そして。
士郎の背後で蠢く、巨大な原初の影。
◇
兵士たちは完全に怯えていた。
「無理だ……」
「あんなの勝てるわけ……」
「逃げろ……!」
◇
しかし。
逃げ場などない。
◇
もしここで敗ければ。
世界が終わる。
◇
シグルドが剣を構える。
白銀の刃。
青い瞳。
真っ直ぐ士郎を見る。
◇
「総攻撃を開始する」
静かな声。
それでも。
戦場全体へ響いた。
◇
その瞬間。
十三英雄たちが同時に動く。
◇
アッシュ。
神速突撃。
槍撃連打。
◇
ガレス。
超重量斧。
真正面突破。
◇
ミリア。
数千規模魔法陣展開。
空間封鎖。
◇
さらに。
後方。
◇
無数の魔導砲が並ぶ。
世界防衛戦線。
総火力。
◇
リゼが顔を青ざめさせる。
「ちょ、ちょっと待って……!」
「これ戦争じゃなくて世界滅亡規模なんだけど!?」
グランも乾いた笑いを漏らす。
「今さらだろ……」
◇
その時。
士郎が笑った。
歓喜。
◇
「いい」
轟音。
黒い靄が膨張する。
◇
アッシュの槍が迫る。
神速。
だが。
士郎は片手で掴む。
静寂。
◇
そのまま振り回す。
轟音。
アッシュが砲弾みたいに吹き飛ぶ。
◇
ガレスの斧が振り下ろされる。
士郎は拳で迎え撃つ。
激突。
衝撃波。
空が割れる。
◇
ガレスが笑う。
「最高だ化け物ォ!!」
◇
その瞬間。
ミリアの術式が完成する。
◇
超級拘束結界。
数千重封印。
古代禁呪。
◇
巨大魔法陣が、士郎ごと戦場を包み込む。
◇
ミリアが叫ぶ。
「今!!」
◇
次の瞬間。
全魔導砲、一斉発射。
轟音。
◇
世界防衛戦線最大火力。
超級殲滅砲撃。
◇
光が戦場を飲み込む。
兵士たちが目を覆う。
◇
大地蒸発。
空間焼却。
完全消滅級。
◇
リゼが息を呑む。
「士郎……」
静寂。
◇
誰もが思った。
終わった、と。
◇
しかし。
次の瞬間。
光の中で、黒い何かが動いた。
◇
ミリアの顔が凍る。
「……嘘」
◇
黒い靄。
ゆっくり。
砲撃を押し返している。
◇
あり得ない。
世界最大火力を、存在そのものが拒絶していた。
◇
その時。
光の中から、士郎が現れる。
◇
黒い紋様はさらに広がっている。
赤黒い瞳。
以前より濃い。
◇
それでも。
笑っていた。
歓喜。
◇
「最高だ」
その瞬間。
黒い影が咆哮する。
轟音。
◇
空間が裂ける。
◇
そして。
士郎の周囲へ、無数の黒い裂け目が開いた。
◇
ミリアが絶叫する。
「下がって!!」
◇
遅い。
◇
次の瞬間。
裂け目から、黒い腕が現れた。




