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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第八章 『魔王覚醒編』
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第126話 黒天

魔王城北部戦線。



静寂。


ほんの一瞬だけ。


戦場が止まっていた。



理由は一つ。


シグルドの剣が、西園寺士郎へ届いたから。



頬を流れる血。


かすり傷。


それだけ。



それでも。


十分異常だった。



兵士たちが震える。


「傷を……」


「黒き災厄に……!」


希望。


絶望の中で、初めて見えた可能性。



しかし。


シグルドだけは理解していた。



避けられていた。


防げていた。


なのに。


士郎は受けた。



士郎は血を拭う。


黒い瞳。


獰猛な笑み。



「悪くねぇ」


その瞬間。


轟音。


黒い靄が爆発した。



シグルドが即座に後退する。


速い。


それでも。


士郎はさらに速かった。



踏み込み。


拳。


超近距離。



シグルドが剣で受ける。


轟音。


白銀の剣が軋む。


地面崩壊。



兵士たちが吹き飛ぶ。


リゼが叫ぶ。


「だから規模ぉ!!」



ガレスが笑いながら乱入する。


巨大斧。


真正面。


「一人占めしてんじゃねぇ!!」



斧が振り下ろされる。


士郎は笑った。


歓喜。



拳。


激突。


轟音。


衝撃波で空気が裂けた。



ガレスの腕が痺れる。


それでも。


笑みは深くなる。


「最高だテメェ!!」



その時。


空中。


数百の魔法陣。


ミリア。


蒼い魔眼。



「拘束する」


静かな声。


次の瞬間。


無数の光鎖が士郎へ放たれる。



超級拘束術式。


古代禁呪級。



鎖が士郎の身体へ絡みつく。


空間固定。


重力封鎖。


魔力圧縮。



兵士たちが歓声を上げる。


「止めた!!」


「今だ!!」



しかし。


士郎は笑っていた。


黒い瞳。


歓喜。



「いいな」


次の瞬間。


黒い靄が膨張する。


轟音。



拘束術式が砕け散った。


空間そのものが割れる。



ミリアの蒼い魔眼が揺れる。


「……ッ!」



その瞬間。


アッシュが背後へ回る。


神速。


槍撃。



士郎の死角。


完璧なタイミング。



それでも。


士郎は振り向かない。



肘打ち。


轟音。



アッシュの槍が弾き飛ばされる。


灰色の瞳が揺れる。



士郎は笑っていた。


完全に。


戦場そのものを楽しんでいる。



その時。


頭の奥で、また声が響く。


『壊せ』


『殺せ』


『喰らえ』



士郎の笑みが、僅かに歪む。



黒い靄が濃くなる。


空気が重くなる。



ミリアが気づいた。


蒼い魔眼。


険しい顔。



「まずい……」


シグルドも察する。


「あの力がまた——」



それでも。


士郎は止まらない。


歓喜。


戦闘。


殺気。



全部が、内側の“何か”を刺激している。



そして。


次の瞬間。


黒い靄が空へ噴き上がった。


轟音。



空が、黒く染まり始める。



兵士たちが震える。


「な、何だ……」


「空が……」


「黒い……!」



黒雲。


重力異常。


空間軋み。


まるで。


世界そのものが悲鳴を上げていた。



エレノアの赤い瞳が揺れる。


「……早すぎる」


アルシアも笑みを消す。



あれはもう、普通の魔力暴走じゃない。



“世界侵食”。



士郎の存在そのものが、周囲を書き換え始めている。



その時。


士郎が空を見上げる。


黒い天。


歪む世界。



そして。


獰猛に笑った。



「最高だ」

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