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最強の殺し屋、異世界で魔王になる  作者: 竜堂さくら
第七章 『十三英雄戦争編』
115/501

第115話 魔王の器

黒い雨が降っていた。


国境都市レグナス。


崩壊した街。


悲鳴。


炎。


そして。


空間そのものを歪める黒い靄。



中心に立つのは。


西園寺士郎。



赤黒い瞳。


揺れる黒い魔力。


以前より明らかに濃い。


まるで。


“人間”という枠から溢れ始めていた。



アッシュが血を吐きながら立っている。


槍は半壊。


呼吸も乱れている。


それでも。


灰色の瞳は、まだ死んでいない。



士郎はそれを見て笑った。


「まだやるか?」


歓喜。


ただ。


その声に、以前とは違う重さが混ざっていた。



リゼが顔をしかめる。


「……なんか変」


グランも士郎を見る。


「圧が増してる」



その時。


士郎の黒い靄が膨れ上がる。


轟音。


重力暴走。


周囲の建物が勝手に崩壊し始めた。



兵士たちが絶叫する。


「街が……!」


「近づくだけで潰れる!?」



士郎本人は気づいていない。


いや。


制御できていない。



エレノアが険しい顔になる。


「限界が近いわね……」


アルシアも笑みを消していた。


紅い瞳。


真剣。



その時。


アッシュが槍を構える。


血まみれ。


それでも。


英雄として立つ。



「西園寺士郎」


低い声。


「お前は危険だ」


静寂。



士郎は笑う。


けれど。


少しだけ苛立っていた。


「今さらか?」


「違う」


アッシュの灰色の瞳。


真っ直ぐ士郎を見る。



「お前自身が、壊れ始めている」


空気が止まる。



リゼの顔色が変わる。


エレノアは黙ったまま。


否定しない。



士郎の黒い瞳が細くなる。


「……何が言いたい」


その瞬間。


黒い靄が爆発的に膨張した。


轟音。


地面陥没。


兵士たちが吹き飛ぶ。



アッシュが歯を食いしばる。


「それだ」


「お前、もう制御できてないだろ」


静寂。



士郎は答えない。


ただ。


拳を握る。


違和感。


確かにある。


力が増え続けている。


しかも。


止まらない。



その時。


頭の奥で声が響いた。


『もっと壊せ』


静寂。



士郎の瞳が揺れる。


一瞬だけ。


本当に一瞬だけ。



リゼが気づく。


「……士郎?」



次の瞬間。


士郎は笑った。


無理やりみたいに。


「上等だ」


黒い靄が膨れ上がる。


歓喜。


狂気。


全部混ざる。



「壊れるほど強くなれるなら」


赤黒い瞳。


獰猛な笑み。


「最高じゃねぇか」



エレノアが目を伏せる。


アルシアも黙る。


二人とも理解していた。



西園寺士郎は今。


“魔王の器”では終わらない場所へ、進み始めている。



その瞬間。


空が裂けた。


轟音。


巨大魔法陣。



全員が顔を上げる。


リゼが息を呑む。


「……まだ来るの?」



空から。


無数の光が降ってきていた。


聖騎士団。


魔導師団。


そして。


その中心。



銀髪の女。


蒼い魔眼。


膨大な魔力。



十三英雄。


大賢者ミリア。



彼女は士郎を見下ろし、静かに呟く。


「……確かに怪物ね」


蒼い魔眼が細くなる。


「なら、ここで消えてもらうわ」

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