第105話 魔王会議
魔王城。
最上階。
巨大な円卓の間。
重苦しい空気が漂っていた。
◇
並んでいるのは。
魔族領を支配する上位魔族たち。
竜人族。
鬼族。
吸血種。
魔導貴族。
どいつも、人類側なら国家級災害。
◇
だが今。
その全員が、黙っていた。
理由は一つ。
円卓最奥。
そこへ座る男。
◇
西園寺士郎。
黒い靄。
赤黒い瞳。
片肘をつきながら、退屈そうに座っている。
◇
リゼが小声で呟く。
「なんで普通に座ってるのこの人……」
グランも顔をしかめる。
「似合いすぎて怖ぇんだよ」
◇
アルシアは士郎の隣に立っている。
白銀の髪。
紅い瞳。
完全に補佐役みたいな立ち位置だった。
◇
その時。
鬼族の大男が低い声を出す。
『本当に、この男を王として認めるのか』
空気が張り詰める。
◇
別の魔族も続けた。
『強い』
『それは認める』
『だが、人間だ』
『我ら魔族の王になる資格があるのか?』
◇
リゼが顔をしかめる。
「また始まった……」
グランもため息を吐いた。
「まぁ当然だろ」
◇
アルシアは静かだった。
紅い瞳。
士郎を見る。
試している。
そんな視線。
◇
だが。
士郎本人は興味なさそうだった。
「別に認めなくていい」
静寂。
魔族たちの空気が止まる。
◇
士郎は頬杖をついたまま続ける。
「俺は王になるつもりもない」
「支配にも興味ない」
リゼが呆れる。
「じゃあ何でここいるのよ……」
士郎は即答した。
「強い奴が集まるからだ」
グランが頭を抱える。
「ブレねぇなコイツ……」
◇
その時。
円卓の一角。
黒衣の魔族が立ち上がる。
細身。
長髪。
黄金の瞳。
そして。
異常な殺気。
◇
『なら試させてもらおう』
空気が沈む。
上位魔族たちがざわついた。
「まさか……」
「ヴェルドか」
◇
魔剣侯ヴェルド。
魔王軍最高幹部クラス。
アルシア派ですら警戒する、純粋戦闘特化の怪物。
◇
ヴェルドは士郎を見る。
黄金の瞳。
獰猛な笑み。
『弱ければ殺す』
『強ければ従う』
『それだけだ』
◇
士郎は笑った。
歓喜。
「いいな」
リゼが即座にツッコむ。
「よくないから!!」
◇
その瞬間。
ヴェルドが消える。
超高速。
黒い斬撃。
空間を裂く魔剣。
◇
だが。
士郎は座ったまま。
黒い靄が揺れる。
斬撃が、触れる前に砕け散った。
轟音。
円卓の床が割れる。
◇
静寂。
ヴェルドの黄金の瞳が揺れる。
初めて。
驚愕。
◇
士郎は頬杖をついたまま笑った。
「終わりか?」
空気が凍る。
◇
ヴェルドの背中へ、冷や汗が流れる。
理解した。
格が違う。
目の前の男は。
もう“生物”として別次元。
◇
次の瞬間。
ヴェルドが膝をついた。
『……失礼した』
魔族たちが息を呑む。
魔剣侯ヴェルド。
その怪物が。
完全敗北を認めた。
◇
アルシアは静かに笑う。
「決まりね」
紅い瞳が細くなる。
「異論ある者は?」
誰も答えない。
答えられない。
◇
その時。
士郎が退屈そうに立ち上がる。
「終わったなら飯にしろ」
リゼが吹き出す。
「緊張感返して!!」
◇
だが。
魔族たちはもう理解していた。
西園寺士郎。
この男は。
歴代魔王とも違う。
支配者ですらない。
◇
もっと危険な何かだ、と。




