第101話 迎撃
魔王城。
轟音。
遠方。
爆発音が響いていた。
黒煙。
赤黒い空。
戦争の匂い。
◇
魔族姫アルシアは静かに立っていた。
白銀の髪。
漆黒のドレス。
紅い瞳。
その奥にあるのは歓喜。
久しぶりだった。
退屈ではない時間。
◇
「国境要塞の状況は?」
玉座の間。
魔族兵が膝をついたまま答える。
『第一防衛線突破』
『現在、第二防衛線にて交戦中』
『敵軍三万』
『聖騎士団確認』
『白銀騎士も出現』
空気が重くなる。
◇
アルシアは少し笑った。
「思ったより早いわね」
グランが顔をしかめる。
「いや十分ヤバいだろ……」
リゼも青ざめていた。
「三万って何!?」
◇
その時。
士郎が立ち上がる。
黒い靄。
赤黒い瞳。
静かな威圧。
玉座の間の空気が変わった。
魔族たちが自然に頭を垂れる。
◇
「行くか」
短い言葉。
だが。
それだけで空気が震えた。
◇
アルシアの紅い瞳が細くなる。
「待って」
静かな声。
だが。
挑発的だった。
「これは魔族領の戦争よ」
「まずは私が迎え撃つ」
士郎の黒い瞳が向く。
「勝てるのか?」
静寂。
◇
アルシアは笑った。
獰猛に。
轟音。
凄まじい魔力が解放される。
玉座の間が揺れる。
リゼが顔を引きつらせる。
「まだ強くなるの!?」
◇
白銀の髪が揺れる。
紅い瞳。
自信。
誇り。
「私は魔族姫よ」
「弱いわけないでしょ」
◇
だが。
士郎は笑った。
歓喜。
「いい」
強い。
それだけで興味が湧く。
◇
その時。
城外。
轟音。
さらに巨大な爆発。
魔族兵が叫ぶ。
『第二防衛線崩壊!!』
静寂。
空気が変わった。
◇
アルシアの笑みが消える。
紅い瞳。
冷える。
「……思ったより優秀ね」
次の瞬間。
士郎が笑った。
獰猛に。
「なら、なおさら行く」
黒い靄。
赤黒い瞳。
歓喜。
戦争。
強敵。
全部揃っている。
◇
アルシアは少しだけ黙った。
そして。
小さく笑う。
「……好きにしなさい」
紅い瞳。
楽しそうだった。
「でも」
ゆっくり士郎へ近づく。
至近距離。
そして。
笑う。
「私より目立ったら許さない」
リゼが小声で呟く。
「何その張り合い……」
◇
士郎は即答した。
「知らん」
グランが乾いた笑いを漏らす。
「相性いいのか悪いのか分かんねぇな……」
◇
その時。
魔王城の巨大門が開く。
轟音。
黒い空。
戦場へ続く道。
そして。
遠くで燃える炎。
◇
アルシアが歩き出す。
士郎も続く。
黒い靄。
赤黒い瞳。
その後ろを。
リゼたちが半泣きで追う。
◇
戦争が始まる。
人類最強クラス。
白銀騎士。
聖騎士団。
三万の軍勢。
そして。
迎え撃つのは。
怪物たちだった。




