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一頁の物語  作者: Keiたま
8/8

こんなトリップ

「ジュュューゥゥッ…」


うんうん、中々にこのフライパンもどき、使えるかもしんない。ってことは、この土は何か…うん、良く分かんないけれども、他にも鍋や鉄板的なものを作るのにも有効なのかも知れない。

「………」

うん。やってみればいい話。明日早速作ってみましょうか!時間は…うむ、沢山すぎる程、あるからね…



おはようございます、こんにちは、こんばんは。

お目に掛けて頂いたご挨拶並べてみました。


誰に話しかけてる訳でもなく、脳内にての会話。

いずれ、今、この状況から抜け出せたとき、本にでもしたためられたら使ってみましょう。


それではそんな時の為にも、今現在、私が、どこで、何を、しているのか。

何故、そんなことになったのか。


ええ、自分の為にも思い返してみましょうか。

状況の把握と整理は今後の為にも…ええ、はい。とりあえず、脳内のフィルムを巻き戻してみましょう。




私の名前は鈴木花。

ええ、知ってますよ、平凡中の平凡な名前なのは。子が付いたらある意味日本で一番有名な女のコかもしれない。…ごめんなさい、コ、では無いです。

あら、イヤだ。名前でこんなに脱線しちゃって…。

改めて。

鈴木花。37…に誕生日が来ればなる、今36歳の独身女。10年前はアラサーで悲鳴をあげ、誕生日まではまだアラフォーでは無い、と抗っている…おっと、また脱線。

独身女、ということで、実家からはもちろん自立、あ、実家で過ごしているからって自立してないという…はい、ごめんなさい。

あくまでも、私が自分に科してる価値観、ということで話を進めます。

鈴木花、36歳、独身、女。国は鹿児島。東京に出てくるも、金銭的にやってられんと住まいは東京でも超田舎!東京にも良いとこあったんだね!家の実家と同じじゃん。と多少の違いはあるものの、住めば都とここに住んで早10年。

地元での就職も突然の倒産で職を失い、全国的に就職難な時に地元では就職できず。で、就職のために上京してきたけど3年は我慢して転職した。今の会社に不平不満が無いとは言えないが、どこへ行ったって同じこと。今はそれなりに折り合いつけて、ムダに肩に付いた名前とそれに見合う生活の保証で楽しく生きている。それが、うーん…体感で半年。実際は3ヶ月と少し。

そう、それまでは確かにその暮らしをしていた。

思い返してもハッキリとした事は今でも分からないが、記憶にあるのは眩い程の明り。そのあとの暗闇。そして気付いたら…もう、この場にいた、ということ。

本当にそれだけ。


あの日、と言っていいのかは分からないが最後に鮮明に覚えているのは同僚と夕食を食べに行った夜が最後。

でも、次の日、なんとなく出社したような気もするので、最期の記憶では無いんじゃないかなぁ、と。


となると、最後にある記憶と最期と思われる記憶に数日なり差がまずあるわけで。




そして今、住んでいるのはジャングル?森?な、ワケで…

だって、地元でみるような植物があると思いきや、南国ッポイ植物。地元も実は亜熱帯、といわれる地方だし。森よりもジャングルに近いのじゃなかろうか。でもトラとか出てきたら死ぬし。希望的に森。熊さんなら…うん、ムリか。でも森、が生きていけそうな気がする。

地元での生活もいわゆる地方都市ではなく、地方の田舎なので、自然と寄り添って生活する方に傾いていたわけで。テレビもネットも車もあるけれど、時給できるものは種を撒いて季節の旬にあやかり、自然の神様達にお礼と称して派手に奉り上げたり、たまには違う国の神様にもミーハーしてみるために親せきから血抜きした鶏を貰ったり、と地方の田舎の年齢に見合う生活をしていた。

ので、同じ年齢の東京の同僚と話が噛み合わなかったりしたけれど、今、とても感謝している次第です。


ここに来て直ぐには状況がつかめずただ、ただボーゼンと座り込んでいた。でも年の功、ってこういうとき使えるのね、座り込んでも何も変わらない、と立ちあがりとりあえずここがどこなのか、町はあるのか、近いのか、出られるのか。

…もし無理なら、水と、雨風凌げる場所…火、の確保ができたなら万々歳だよなぁ、なんてぼんやり考えながら歩く。


地元でも、やたらめったら山の中を歩くのは危険だと、年寄り勢からは口酸っぱく、耳タコに聞かされていた。だから、というわけでもないけれど、むやみにわからないところをただただ、歩くより、自分が居た地点から離れ過ぎない位に歩いて回った。

居た地点を真ん中として、まず真っ直ぐ。要は東西南北に回ろうと考えたのだ。ま、回ったのは北から左回りに、だけれど。北、東、南。特に風景が変わることなく。

あ、でも、それぞれに魅力的な木の実や野草はあったが。

最後の西。すばらしい‼洞窟とその先に細々とした山水が流れていた。ちょっとした岩の窪みに貯まっては上から下から流れていたので、非常に助かる‼

うん、寝床はここに決定だな。でも、一旦、戻ってみようと距離を測る。気分的に、だけれど。



で、出だしに戻る訳だが。

洞窟もコウモリらしき動物の寝ぐら位で、問題もなく。水は確保、生で食べれる野草や木の実もあった。思ってたよりもトラやクマなどには遭遇せず、ハトやウサギ位の獣には会えた。

たまたま、水場の先を探索したら粘土質の土を発見。ちょっと頑張って、拙い知識で、縄文時代の火お越しをやってみた。それで、動物を狩った。皿や道具を作った。



「うーーーん、美味しい……くない」


罠で引掛りあたしの血と肉となったウサギさん。元々、ウサギは筋肉質だし、好き嫌いもある味だから…はあるが。イヤイヤ、塩コショウ位は欲しい。そうだよね…こんな場所では塩なんて…山椒魚の実があれば…

ま、こんな感じでここに3ヶ月半位住んでた訳ですよ。



<キンッ、ガザガサ、ガャガャ……>

遠くの方からいつもと違う音がする。

え、なに?あたし今沐浴してるんだけど…獣でも人…?でも今の状況は、あたし的によろしく無い。

えぇー…気持ち悪いけど、洗った服、着なきゃ…と、一応、キャミソールとスカートを着たところだった。

ちょうどあたしの真後ろにあった木の方から…


『あんた…ここで暮らしてる、の?』

「?」


振り返ったら、黒装束の黒髪、なんて事はなく。髪は焦げ茶色で見慣れた色だけれど、上着は白に何だか紋章のような物が金の刺繍されて、まぁ、ズボンは紺の落ち着いた物。肩、腕、脛位にステンレスっぽい当て、っていうのかな、がされていて。

わー、人だぁ‼何て虚ろに思っていました。何せ、突然すぎる人。脳が追い付かずに。


それからは色々省いて。

だってね、脳が追い付かずにいたのよ。堪忍して。




「サミュエル樣、こちらがその飼料の資料でしゅ」

クスクス…目の前の現在雇用主に笑われた。うーーーん、やっぱり、こちらの発音は難しい…

「何で、ハナは飼料の資料は言えるのに最後の、です、が発音できないんだろうね?まぁ、かわいいから、イイケド」

そういう、サミュエル樣はこの国の第5王子。けれども、正妃の二番目の王子。継承権が遠い訳では無い立場にあられる。色々あって。

きれいな薄い茶色。日の当たりによっては金色にも見える髪を、バッサリと短発にされている。…あの日言ったのをまだ気にされてるのか…でもあたしとしては好感過ぎて何も言えない。

「ねぇ。もうイイデショ?」

そう言って、あたしの背後に立ち、両肩に手を乗せる、あの時振り返った先に居た彼、はあたしの居候先の家主。毎回、暗部の特権を使ってあたしを拐いにくる。

……そろそろ、自立しなくては。


そう考えていると、

「(クスクス…)仕方ないね、いいよ。今日は思ったより、ハナを仕事に縛りつけてしまったから。…ゆっくり、

休ませてあげて?」

こうして、本日の業務を終了し家主と一緒に帰宅したのであった。


暫く厄介して、サミュエル様にも自立のむねを伝え、辞職し、暗部故に多忙な家主には会えず、屋敷の皆に言伝てを頼んで屋敷を出たあたしを怒り狂って探しに来る家主。それを端から爆笑しながら見ているサミュエル様。そんなこんながあったのはまた後日の話。

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