短編ネタ拝み屋
単なるネタです
オカルト物大好きなんです。
今日も今日とて夜道を歩く。
「…なんであたしが…」
花の女子高生が、何故、危ない夜道を歩かねばならん。しかも、ここのところ毎日と言ってよいほど。
我が家は先祖代々拝み屋家業を営んでいる。といっても、副業で・だが。その筋の人や地元の…まぁ、昔からの御近所さん達。知ってる人は知っている、というぐらいの知名度だ。
由緒“正しき”ってわけでもない。初代とかは知らないけれど、少なくとも曾祖父母からは、なし崩しに営んでいる。このご時世、妖怪だー幽霊だーで、食っていけるのは一部の派手な方々。唯でさえ怪しい職種。だが何かと頼まれるものだから、辞めるに止められず。というところだ。
「幸か不幸か、“血筋”っての?は繋がってるし、対処法もそれなりにあるしねぇ」
我が家全員、例に漏れず霊媒体質。あ、婿入りな父は違うか。祖母の場合は親戚婚姻だったから問題なく霊媒体質だけれど。
《フン、時代が時代ならお前も姫様だったろうにな》
「葉…かんべーん、姫とか。今の時代に生まれてラッキーっすよ」
《ハハッ欲がないな》
そう言ってヒョイ、とあたしの肩に乗ってきた葉は、三叉の黒猫妖怪だ。あたしの相棒。
《で?今夜のお相手は?》
「ムッフー!葉ちゃん喜べ!最近原因不明に起こる謎の器物破損!しかしてその実態や如何に!」
《…朔、遂に壊れたか》
「葉さん辛辣ーっ!あっはー、この高揚した気持ちぶつけてイイヨネー?連日連夜、この如何し難い気持ち、其処の君に捧げるわっ!」
ビシィと指差したあたしの先にいたものは。
《…貴様ダレダ?》
《…朔、ただの八つ当たりの相手にしては、随分小物だが…自我を持った人形か…少しは手加減してやれよ》
「んーまぁ頭には入れとく」
そう言って臨制体勢に入る。
人の想いをその身に宿す人形は、媒体となりやすい。
大事にされた分だけまた、大事にされなかった分だけ、人に還してくる。
「…一体アンタは何をされたんだろうね…?」
マリオネットであるこの人形の武器は糸。巧みに此方へ仕掛けてくる。細い分だけ見失いがちで、地味に攻撃力がある。
「…っっ…カスッた…お風呂でシミルだろーな…」
油断して避けきれなかった糸の先端が腕に赤い線を引く。
「…朔」
うっわぁはいっ!! 葉さんが低っくい声で呟く。…怒ってらっしゃる…
んもー過保護なんだから。まぁそれだけじゃないけどさ。
「お説教はごめんだからキミ、これで最後ね。悪く思わないでね!」
そう言ってあたしは腕の数珠に力を込め…弓を具現化する。
懐から取り出した札をまたも力を込め矢に変え
『射!!』
人形に狙いを定め、射る。線を描いて向かう矢が――先端から五つに分かれ人形を取り囲み…
『!!…ぎゃっ…』
圧縮して
『ポンッ』
元の札に戻る。
『…なんだ、式神にでもする気か?その札…』
さっきまで怒っていた葉も、仕事終了とあって溜飲を下げてくれたようだ…良かった、ばぁちゃんとのダブルタッグはキツいもんがある。
とりあえず今晩のノルマ達成、往々にして帰路を辿る
御拝読ありがとうございました。
つたない文章ですが、少しでも暇潰しになりますれば幸いです