シスターの視点 — 「命の奇跡」
子どもたちの笑い声。
かたいパンの匂い。
ひび割れた窓から差し込む埃まみれの光。
それが私たちの日常だった。
休むことなく掃除をし、売れるものは何でも手作りしていた。
小さな硬貨一枚も、天からの贈り物のようだった。
パンの一切れを分け合うこと、それが私たちの静かな勝利だった。
子どもたちは知らなかったが、私たち大人は、毎日ただ生き延びるために戦っていた。
だけど――今日は違った。
彼女は、突然現れた。
その歩みは影のように静かで、
その声は痛みを含んだ、かすかな囁きだった。
私の目を直接見ることは、一度もなかった。
髪の前髪に隠されたその瞳は、まるでこの世界から隠れるようだった。
その肌は、雨上がりの土のような温かな茶色。
小さな細い体は、旅人というよりも、飢えた子どものようだった。
だけど、何よりも私を震えさせたのは――彼女の魂だった。
彼女には、世界のすべての存在が持つべき、
あの神聖な光が見えなかった。
無神論者でさえ、その魂には微かな火が灯っているものだ。
だが彼女には、それすらなかった。
――壊れた器。
ただ、それだけ。
それでも、彼女は私たちに純粋な奇跡を授けた。
聞いたこともない言葉で、静かに呪文を唱えた。
すると、目の前に小さな木が現れたのだ。
高さはわずか四十センチほど。
生命の色で塗られたような、鮮やかな鉢植えに植えられていた。
そして、その小さな枝には色とりどりの小さな果実がぶら下がっていた。
小さなバナナ、
手のひらサイズのスイカ、
宝石のように輝く赤いリンゴ、
黄金に輝くオレンジ、
甘い香りを放つ小さなパイナップル。
こんな果実、見たことがなかった。
しかも、その木は水も陽も必要としなかった。
生きて、育ち続ける不思議な命だった。
最初に手を伸ばしたのは、幼い子どもだった。
小さな果実を摘み、口に運び――そして叫んだ。
「シスター! 甘いよ!」
その声に続き、他の子どもたちも果実を摘み取り、笑い合った。
貧しさも空腹も悲しみも、その瞬間だけ消え去った。
私も恐る恐る一つ味わった。
――甘い。
――生きている。
――希望だ。
涙をこらえるのに必死だった。
彼女に感謝を伝えようとした。
抱きしめたかった。
失った子を取り戻した母親のように。
だけど、彼女は一歩、また一歩と後退った。
まるで傷ついた獣が、優しい手をも恐れるかのように。
そして、何も言わずに人混みの中へ消えていった。
今、この小さな木は孤児院の中心にある。
子どもたちは、毎日小さな果実を摘んで、笑顔を咲かせている。
木は、枯れない。
永遠に。
私は、今日確信した。
私たちの祈りは届いたのだ、と。
こうして、日記を閉じる。
蝋燭の炎が揺れ、夜の静寂が世界を包む中、
私は最後の祈りを捧げる。
どうか、あの小さな少女の傷を、癒してあげてください。
(ペンが止まり、蝋燭の光が消える。そして夜の静寂と共に、静かな祈りが天へと昇った。)




