休まらない休息
—異世界のカード:兵士。
カードは柔らかな動きで解き放たれ、暗い空に向かってホタルのように輝いた。その中心から姿を現したのは、影で作られた彫像のように無言の戦士、“兵士”だった。灰色の制服は闇に溶け込み、言葉もなく、高い場所へと静かに移動して警戒体勢に入った。
エリザベスはその姿を信頼し、まるで個人の護衛のように感じながら、根元が広がった木を見つけた。大きな木の根の間に体を丸め、まるで葉の毛布の下で眠る子猫のように身を潜めた。スカーフを即席の枕代わりにして、そっと目を閉じる。
ついに、静寂が訪れた。
夜風が頬を優しくなでる。その瞬間、彼女は冒険者ではなく、迷子の子どもが野宿しているようだった。まぶたは重く閉じていった。
その頃、約40メートル上の丘の茂みから、一つの影が音もなく現れた。
それは探検者でも冒険者でもなかった。獣を狙う狩人でもない。もっと卑しいものだった。
右手で輪を作り、親指と人差し指を目に当てて、まるで見えない望遠鏡のように覗き込んだ。それが癖だった。あるいは本当に視界が広がると信じていたのかもしれない。
「へへ… なんだこりゃぁ… 一人ぼっちのお嬢ちゃんか? しかも油断してやがる…」
目を細めて、歪んだ笑みを浮かべた。
「こりゃあ、いい獲物だ…! 親分に教えてやらねぇとな… 新しいオモチャ が手に入るってよ…! まだ歩いてるし、歌ってたぜ? ヒヒヒ…まあ、それも長くは続かねぇけどな!」
唾を地面に吐き捨て、満足そうに鼻で笑った。
彼の目には、“彼女”はただの「商品」でしかなかった。
「売ってもいいし、壊しても構わねぇ… 女なんざ道具と同じだろ?」
彼は“兵士”の存在に気づかなかった。
木陰に潜むその存在が、すでにすべてを見ていたことなど、知る由もない。
男は踵を返して、茂みの中へ駆けていった。森の中に消えていくその足音は、次の災いの始まりのように響いた。
その頃、エリザベスは穏やかな呼吸で眠っていた。
兵士は姿を闇に溶け込ませながら、わずかに首を傾けたが、まだ動かなかった。
まるで何かを察知したかのように、しかしまだ決定打はない。
夜は続いていた。けれど、その平穏は…一瞬の幻にすぎなかった。




