表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

ハーゲット領の息子②

翌日早速ソルと一緒に植えた。

込めた思い出は色々。

尊敬する父と遊んだ記憶や、領民の温かい笑顔。

その他にもいろんな楽しい記憶を種に込めた。


「早く咲くといいなぁ」


それから一週間僕はこの花につきっきりだった。

ソルとテネシアはしばらくここに滞在することになったらしい。

僕としては遊び相手がいるのはうれしいので大歓迎だった。


「そういえば、ウィリーはお母さんはいないの?」

「うん、僕を生んですぐに死んじゃったんだって。だからあんまり覚えてないんだ。」

「そっか」


そして変わったことが一つ。アイリスはテネシアとよく喋るようになった。

やはり年の近い女性同士仲が良くなるのは当たり前なんだろうか。

何故か少し悔しかった。

そして一週間後、


「!」

「ほ~、これまた綺麗に咲いたな~」


僕の植えた種はものの見事に咲いていた。

それらは目を見張るほど綺麗な色をしていた。

花弁は赤やオレンジ、黄色などの暖色系がほとんど。


「す、すごいほんとに咲いた…」

「いやぁ、咲いて良かったよ。計画が台無しになるとこだった」

「ほんとですよ…」


雨降ったときはどうなると思った事やら…

よし、これで花冠を作ろう。それをアイリスにプレゼントするんだ。

僕はすぐに花冠の制作に取り掛かった。

手先が器用じゃない分すごく苦労したが。


―――


そして夜。僕はアイリスの部屋に向かった。

彼女の部屋のドアをコンコンとノックした。


「ア、アイリス今いいかな…?」

「え、あ、はい。」


ガチャと扉が開く。

そこにいたのは就寝前のアイリスだった。

いつもと違う寝間着姿に少し興奮してしまった。


「どうしましたか?こんな夜更けに…」

「あ、あえっと少し話したくて…」


女の子特有の甘い香りが部屋からする。


「え、ええ。分かりました。とりあえず、どうぞ入ってください。」


アイリスは戸惑いながら部屋に上がらせてくれた。


「………」

「………」


2人並んで姿勢よく正座をしている。

いつも普通に話が出来ているのに、なんでか言葉が出てこない。

何か話題を探すために、ふと目線を部屋に迎えると窓際にいくつか植木鉢が置いてあった。


「あ、アイリスも植物育ててるんだ?」

「え、ああ、最近育て始めまして…」

「そ、そうなんだ。僕も最近花を育て始めてさ。」

「そうなんですか」


よし、話題が花にいった。あげるならこのタイミングだ。

そして僕は後ろに隠していた花冠を彼女の前に出した。


「こ、これ。僕が育てた花で作ったやつなんだ。」

「………綺麗ですね。」

「そ、そう。これ君にあげるよ」

「え、い、頂けません! ウィリー様からこのようなもの…」

「いいから!日頃の感謝の気持ちだよ。受け取って」


半ば強引に彼女に渡した。


「これ被ってみてよ。」


僕は彼女に花冠を被るよう促した。


「はい。こう…ですか?」


花冠を被った瞬間、彼女は目に大粒の涙を浮かべていた。

僕にとっては一瞬だったけど、きっと彼女には長い時間に感じただろう。

僕も涙を流す彼女を見て泣いた。そして彼女を抱き寄せた。


「僕、絶対にアイリスを幸せにするから。」


でも大粒の涙があふれる彼女の眼は、何故か虚ろな目をしているように見えた。


―――


それから二日後。

あれ以降花を育てるのにハマってしまい、ガーデニングが趣味になりそうだった。

アイリスも自室で花を育ててたし、一緒に花壇とか作って二人で作業出来たら幸せだろうなぁ。

そんなことを思いながら僕は彼女の自室に向かった。


軋む床板の音に気も向けず、気分良く廊下を歩く。

そして彼女の部屋の前につくと、ノックをした。


「アイリス!またなんかお話しよー!」


返事がない。どうしてだろう。


「アイリス?」


しばらく待っても何の返事もない。なんだか心配になって来た。

意を決して


「あ、開けるよ…?」


僕はゆっくりとドアノブに手を掛けた。

何故か息を潜めて、静かにドアを開ける。

月光が窓から差し込み、部屋の中を青白く照らしていた。

その光の中に、一つの影が浮かび上がる。

シルエットは驚くほど鮮明で、現実離れした光景に目を疑った。

宙に何かが漂っている。

細い線―恐らくロープか紐のようなものが天井から垂れ下がり、その先端に得体の知れない物体が括り付けられていた。


「なにこれ?」


僕は呟いた。

好奇心と不安が入り混じる中、足が勝手に動き出す。

その得体の知れない物体に、一歩、また一歩と近づいていく。意を決して

ガサッっと何かが足にぶつかった。拾い上げると、寒色の美しい花冠。

それをとにかく拾い上げ、再度その物体に近づいていく。

月の光が少しずつその表面を照らし出す。輪郭が見えてきた。

そして、ある特徴的な形が目に入った瞬間、僕の体が凍りついた。


「アイリス…?」

②です。不穏な空気になってきた…というかなってますね

感想やコメントお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ