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五人目のいらない英雄譚

作者: 楠木静梨

 五人目なんていない、勇者様の英雄譚だ。勇者パーティーって、四人でいい。

 俺がそれに気づいたのは、魔王が討たれ世界が救われたときだった。


 まずは当然必須、大前提の勇者。

 遠距離攻撃の要である魔法使い。

 サポートと一部魔物に対する特効を持つ僧侶。

 中距離からの戦闘サポートや敵の攪乱、罠の看破が出来る盗賊。


 これだけで充分なんだ。

 全員が自分だけの役割を、自分だけの戦場を持ってる。



「戦士さん、僕達最前線組は一人にはなっちゃいけませんよ」



 ある日、野営中に勇者が言った。

 最初は戦略の話しだと思った――――前衛が一人だと不意の攻撃を受け負傷する確率が二倍以上に跳ね上がる。

 だが、それを勇者はすぐに否定。

 それだけの話しなら遠距離からのサポートでいくらでも対処は可能だと言い放ったうえで、その腰にて眠る聖剣を撫でながら話した。



「僕達と違い、魔法使いさんは戦場全体を見て火力援護なんかをする。僧侶さんも回復の祈祷なんかを味方全体の状態を把握して使うし、盗賊さんだって僕達の立ち位置、次の行動を敵以上に見てる――――だけど僕達は敵陣の中に飛び込んで、見えるのは斬るべき相手だけ。そんな状況に身を置き続けると、どうにも仲間を忘れて孤独に思えて来るんです――――だから一人ではいけない。敵ばかりの視野の端、どんなに小さくとも共に戦う仲間が見えなきゃいけない。僕はいつも、たまに見える戦士さんに心を救われています」



 世界を救う奴がいるなら、きっとこいつ以外だとその時は思った。

 戦いの中で孤独を恐れ、克服どころか逃れようとする――――こんな甘ちゃんに同伴したのが俺にとって運の尽き。

 どこかでこのパーティーは瓦解する。

 そう心の底から思ってた。

 

 だが直ぐに手のひらを返した――――こいつしか世界を救えない。

 その核心を持ち、事実間違いじゃなかった。


 平時じゃあんな甘ったれた事言いながら、ひとたび戦場に出れば無双の逸話を絶えず更新し続ける。

 やれ十分足らずで山賊団を壊滅させただとか、やれ一撃で竜の首を断ち切っただとか、夢の様な逸話を世界各地で。


 そんな奴の横に居続けたからか、すっかり勘違いさせられた――――俺も伝説に残れるんだって。

 こんな奴の頼りになれてるんだって。

 

 驕りに気づいたのは旅立ちから五年が過ぎた頃。

 俺は魔王軍幹部との戦闘で僧侶でも回復に時間がかかる様な深手を負い、近くの村で療養することになった。

 

 ここまで一緒に来た仲間だ。

 俺の力が必要、俺の回復を待って旅を再開する。

 そう信じてた――――だが、勇者の取った選択肢は即出発。

 なんでも魔王軍の侵攻速度が以前に増して加速しているらしい。


 一人取り残され治療に専念しながらも、回復したならばすぐに駆け付けると心に誓った。

 前衛で孤独を感じているであろう勇者を安心させてやろうと、それだけを支えに傷を癒し、体が戦闘可能なレベルに戻るよう励んだ。


 だがあの日、世界に祝砲が響いた。


 魔王討伐、勇者一行がやり遂げたのだと――――俺って、いらなかったんだ。


 前衛の戦闘力は聖剣を持つ勇者に劣り、魔法使いの様な遠距離攻撃は無く、僧侶並みの状況把握能力なんてないし、盗賊の器用さは試そうと思っただけで手が攣る。


 勇者は魔王との激戦中、仲間の援護で孤独でない事を再確認し、前衛で仲間を巻き込む心配はないと全力の聖剣の光で魔王を切り裂いた。


 俺が居なくても変わりない偉業は永遠に語り継がれる。


 卑屈な話だがこれが史実に残る結論。


 

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