面倒くさがりな小学生
この世には面倒なことばかりだ、なんて達観したことを言ってもよくなるのはあとどれくらい先のことだろう。
なんせ僕はまだ学生の身で社会の怖さも挫折の痛さも失う心苦しさも知らない。何も知らないのだ。
それでも面倒だと毎日感じているのだから、大人になったら一体どれほど面倒だと感じてしまうのか、考えたくもない。
あぁ、ほら、また面倒ごとがやってきた。
「何ぼーっとしてんだ?もうすぐ昼休み終わるぞ?」
僕は一人でいるのが好きだと散々言ってきているのにどうしてこの少女は毎日毎日話しかけてくるのだろう。
あぁ、面倒だ。
「あ、いま面倒だって思っただろ?お前顔に出やすいんだよ。」
僕はノートを取り出す。何か言い返すのにも一苦労だ。
『うるさい、話すの面倒。紙の無駄。あっち行って。」
乱雑に描いた文字を見せつける。
「じゃあ何も返さなくて良いよ。勝手に話すから。」
暇人かこいつは。
『うるさいから嫌、壁とやって。』
「壁は表情変わんないけど君はよく表情変わるから全然違うよ。ほら、今も嫌そうな顔してるし。」
楽しそうに笑いやがって、何が面白いんだ。
『人に嫌なことしたらダメだって先生も言ってただろう?』
「何小学生みたいなこと言ってんの?ジョークのつもり?」
『いや、小学生だろ。』
「でも来年中学生だよ?」
『じゃあまだ小学生だな』
「確かに、頭いいね。」
さっきから何言ってんだこいつは。
「あ、もうすぐチャイムが鳴るね。じゃあまた次の休み時間の時にでも様子見にくるよ。」
『いらない』と描いた僕の文字も見ずにどこかに行ってしまった。
僕はまだ小学生だから社会の怖さなんて知らない。何かに本気で打ち込んだことなんてないから挫折の痛さも知らない。最初からないものが多いから失う怖さも知らない。
でも、あの少女とこうして話していると、やはり面倒だと感じてしまう。
あぁ、また次の休み時間もきっと隣の教室からわざわざちょっかいを出しに来るのだろうな。面倒だ。