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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

黄金になる病にかかった私は癒しの第二王子様に出会って幸せになります

掲載日:2024/04/30

 私の身体は金になる。


 今日も屋敷でお義母さまとふたりきりの食事。テーブルの上の煌びやかなお皿の上には油が艶やかに光り輝いているステーキが丁寧に盛り付けられていた。見るだけでも胸やけするくらい油の多いステーキにナイフを入れる。いつもならば流れるような動きはお手のもの。なにせ、ナイフとフォークの並び、順番、動作など細かなところまでこの屋敷に来てから散々叩き込まれて体に染みついている。


 けれども。


 ——カチャリ。


「……」


 ギシリと軋む腕により、皿とナイフが音を立てる。

 私の病気が進行して、右肘が少し動かすのに手間取ってしまった。


 お義母さまは私がステーキを口に運ぶ所をずっと見つめている。私が無理やり咀嚼して飲み込むとニコニコと満足そうな表情になった。ナイフを使った時に大きな音を立ててしまったし、腕の動きが鈍いのはバレている、でもお義母さまが見ているのは私のマナーでは無い。


「オウラ、ほら沢山食べなさい」

「……はい」

「ところでオウラ。今日はどのくらい黄金症がすすんだのかしら?」


 お義母さまは悲しそうなそぶりをみせるが、それもいつものこと。この人は私の事に興味が無い。興味があるのは別のところ。この人が見つめるのは私の右腕。憂鬱な気持ちでドレスの裾を捲り上げて見せる。


「……また少し進行しました」


 右腕の関節辺りが黄金に変わっていた。


 また、私の身体が黄金になった。


 これが私の病気。身体が徐々に黄金に変わってしまうため、黄金病と呼ばれている。


 初めは皮膚の表面から黄金に変化し、徐々に身体の内部まで全て黄金に変わる病気だ。治療方法は殆どなく、唯一と言って良い治療には非常に高価な魔法薬が必要になる。


「オウラのために魔法薬は探しているのだけれど……薬はとても高価で希少だから手に入れるのが難しいの」

「……いいえ、手を尽くして頂き感謝致します」


 治す人は少ないので流通量がほぼ無いとても希少な薬なのだから入手すら困難だ。何故治す人が少ないのか。それは黄金症を発症するのが稀だという事と、身体を黄金にした方が金になると考える人が多いという事が理由としてある。


 黄金症で出来る黄金は流通している金よりずっと純度が高い。発症者の魔力を消費して金の純度が上がるのだという噂だってある。そんな貴重な黄金を消す魔法薬は流通してたって殆ど売れない。


 そして身体で黄金を作り続け、薬を使わないでいると、ある日突然、急激に病が進行して発症者が黄金の彫像となる。


 私の身体に広がる黄金の輝きで、目の前のお義母さまの目が輝く。私の全身をジロジロと眺め、黄金の痕跡を探している。あまりの居心地の悪さに目を伏せると、はらりと伸ばした髪が揺れ動く。髪は黄金ではない、今はまだ。


「身長もそろそろ伸びたのではなくて?」

「……少し伸びました」


 少しでも背が伸びれば、その分の黄金の量も増える。


「痩せているのだからしっかり食べて太りなさい」

「申し訳ありません、食欲があまり無くて……」


 私が肥え太れば、その分の黄金の量も増える。

 お義母さまが困ったようにため息をつく。


「良いわ、仕方がないのだけれど、寝る前に身体の黄金を削っておきなさい」

「……今晩、ですか?」


 皮膚から黄金になるから、身体の黄金部分を削れば病の進行を少しばかり遅らせる事ができる。

 しかし削りだした皮膚は完全な黄金になるものの、削られた私の身体は痛みが伴う大きな怪我が残るので、あまり頻繁には削りたくはない。


「15歳のお披露目会の招待状が来ているわ。学園に入る前のお披露目ね。王家の紋つきで参加は必須よ。身体の黄金はバレないよう削って隠しなさい。良いですね?」

「……はい」


 今晩身体を削っておけば、痛みがおさまって動けるだろうということらしい。


 まだ包帯が外せない右腕の二の腕を服の上からぎゅっとつかむ。


 削った皮膚が治る時も黄金に変わるから、また削っての繰り返しでずっと包帯が外せないまま。治療の為の魔法薬は高すぎるから、私の黄金が必要だ、と言われていて、私はまだ魔法薬を飲んだことが無い。


 私は……私はいつまで生きて居られるのか。


 ***


 お披露目会が行われる場所は王城。この国の第二王子が私と同じ歳らしい。さらに王子が王都の学園に入学する事もあって、今年は大々的に行われている。

 ホールでは煌びやかな世界が広がっているのを壁際に立ってやり過ごす。


(王子さまの周りは人だかりでいっぱいね。こちらにまで人目が無いのは良い事だわ)


 王子さまが気にならない訳ではないけれど、あそこまでの人だかりに突っ込みに行く程では無い。魔物に襲われる時もあんな感じになるのだろうかと思うほどの数だ。完全に身動きが取れなくなってしまった王子さまに同情してしまう。


 私は久々の外出なので、服が乱れて包帯が見えてないかどうかを何度も確かめておかないと。袖を伸ばし、頭を屈めて胸元足先を何度も見る。いくらドレスで身体の包帯を隠しているとはいえ、近くで見られれば見えてしまう。


「あんなに古いドレスで恥ずかしくないのかしら」

「肌を隠すなんて流行遅れのダサいデザインね」


 くすくす、と小声で笑い声が聞こえてきた。


 嫌な視線を感じ、顔を上げると令嬢たちが私を見て何やら笑いながら相談をしているようだった。眉を潜めた直後、令嬢たちが傾けたグラスを片手に近づいてくる。私は急いで彼女たちから逃げるようにして庭へと向かった。


 足早にホールから去っていく私は、すれ違った人物が振り返った事に気づかなかった。


「…………血の匂い?」


 ***


 背の高い木々が多い庭の影、ここならそう簡単には見つからない。


「ここなら誰も居なっ……!」


 周りばかりを気にしていたせいだ。袖が木に引っかかり、ドレスが大きく破れてしまった。おかげで包帯が解けて皮膚を削った腕が丸見えになっていた。私にとっては見慣れた傷だけれど、普通の人なら驚く。


「……巻き直さないと」


 一度包帯を全部解いた後で巻き直そうとした時、周囲には誰もいないことを確認したのに、頭上から声が降ってくる。


「酷い怪我じゃないか」

「っ、……誰……?」


 慌てて見上げた先にはこの世のものとは思えない程に美しい人が居た。整った目鼻立ちは彫刻のよう。短い銀髪は太陽の光でキラキラと輝いてダイヤモンドが降ってくるかと錯覚したくらい。


「……天使?」


 大きく見開かれた銀の瞳に吸い込まれてしまいそうだった。時間が止まった、そんな風に感じるくらい美しい。天使とはちょっと違うね、と銀髪の彼が私の腕を手に取る。


「酷い傷だね……でも治せるよ。少し良いかい?」

「え、えぇ」


 ふわりと使われた魔法に暖かさを感じた。


「……これ、私の肌……?」


 久々に見た綺麗な私の肌。削っていない綺麗な肌に驚きで思考が止まってしまう。怪我のない私自身の皮膚に思わず目に涙が馴染んでくる。


「綺麗だね」


 綺麗?

 きらきらの優しい笑顔の天使だ。私の肌よりも綺麗な笑顔だ。

 驚きで口を開いたり閉じたりしか出来ず、固まってしまった。

 銀髪の天使さまは王城を見て冷や汗を流して動揺していた。


「……しまった。先生が来るなんて聞いてない!?」

「?」

「ごめんね。僕はもう戻らないと」


 そう言って彼は瞬きの間に、煙のように消えてしまったのであった。


「あ、お礼を……言っていませんでした……」


 消えてしまった後、お礼を言って居なかった事を私は思い出して少し後悔した。


「もう一度会えるかしら……?」


 一度見れば忘れない方が不思議なほど美しいひと。

 名前すら聞けなかった銀髪の天使さまに。


 ***


 お披露目会での天使さまとの出会いから少し日が経ち、私は学園に入学していた。魔力がほとんどない私は学園の錬金術科で錬金術について学んでいる。学園に入学してからは私はひたすら人との関わりを避けていた。


 私が向かう先は誰にも使われていなかった研究室。


「今日こそ……!」


 私は講義以外の時間は全て魔法薬の研究をさせて貰っている。本来なら使わせて貰えないのだけれど、私は教授に必死に交渉して特別に使用許可がおりた。


 その目的は黄金症を治療する為の魔法薬を作るため。


 銀髪の天使さまに治療してもらった後、綺麗になった肌に嬉しくて嬉しくてひとり部屋で飛び上がって喜んだ。けれど、私の黄金症はそこまで簡単にはいかなかった。私の身体は再び黄金になってしまっていた。根っこの部分から治療しないと表面だけでは完治しないらしい。


 私は今日も文献から読み取った材料とレシピで実験を繰り返す。沸騰した時の音の変化で次の材料を入れるタイミングが決まる。

 じっと耳をすませ——


「…………外が騒がしい……?」


 突然がらりと扉が開き、見覚えのある銀髪が研究室に飛び込んできた。


 互いに目が合う。天使さまは私の腕を見て驚いた表情をしたあと、外を気にして扉を勢いよく閉めてから、机の陰で屈み、焦ったように人差し指を口の前に立てた。

 魔法を使ったのだろう、天使さまの姿がすっと消えてしまったその直後、煌びやかな令嬢たちが扉を開いて研究室に入ってくる。


「アルジェント様はどこ!?」

「どちら様ですか?」

「良いから答えなさい!」

「……ここには貴方以外誰も来ていないわ。あと、ここでは繊細な実験をしているから静かにして欲しいの」

「そう。居ないのね。……アルジェント様はこんな気持ち悪い場所には来ないでしょう」


 じろじろと研究室内に不躾な視線を投げた後、彼女らは騒がしく出て行った。


「……もう出てきても大丈夫ですよ」


 そうして静かになった研究室で、魔法を解除したのかアルジェントは姿を再び現した。


 私は彼がアルジェント第二王子だったなんて知らなかった。けれど、その美しさにも納得だ。


「助かったよ」

「どうしてあんなに追われているのですか?」

「婚約者がまだ決まって無くてね……」


 渋い表情の天使様……アルジェント様を見れば分かる。追いかけていたのはきっとお相手候補の方々なのだろう。


「俺の事よりもその腕は……黄金症だったの?」

「えぇ、その……」

「……俺の魔法で治したのは……君が削った傷だったんだね」


 私の腕を手に取る。


「黄金症の事は知っているよ。治療出来た例は片手で数えられる程しか無いと。その全てが発症から一週間以内の治療だと」

「アルジェント様」


 知っていた。私のように発症してから何年も経っている人で完治した例は無いのだと。


「私の怪我を治してくれたのはアルジェント様です。お礼が遅くなって申し訳ありません。あの日はありがとうございます」

「君は、強いね」


 強いだなんて初めて言われて、なんだかこそばゆい気持ちを隠して微笑んだ。


「ここで魔法薬を作っているの?」

「えぇ、黄金症の治療薬が記されている文献を読み解いたのです。……けれど、問題がありまして……当時の材料をそのまま入手する事は出来ず、少し手こずっています」

「文献か、古くて貴重な物を使用していることがよくあるね。そうだ」


 アルジェント第二王子が何かを取り出して実験台に置く。


「先日、瘴気の穴を塞ぐための野外訓練で珍しい物を見つけたんだ。これまで人の立ち入らない場所だったから君の探し物があるかも。何か使えそうな物はある?」

「えっと、材料として使えるものは……この種は?」


 何かの皮や蔓、乾燥させた葉など、見慣れない物ばかりだったがひとつ気になる物があった。


「見た事無い種だったから拾ったんだ。使えそう?」

「魔法薬の材料としての記載はありませんが、育てれば綺麗な花が咲き、種は魔力を含むのだとか」

「あげるよ。それより君、また削ったでしょ」

「どうして分かるんですか?」

「少しだけ鼻がきくんだ」


 そうしてアルジェント様に触れると、また暖かな魔法で全身を包まれる。


「……ありがとうございます」

「またここに来てもいい?」

「えぇ勿論です」


 そして彼はまた治療に来るからと念押しして研究室を去っていった。


 ***


 今日はいつ来て下さるのだろうか。扉の外をそわそわと何度も眺めながら研究を続ける。


 待ち望んだ足音と扉がノックされる音がする。どうぞ、と声をかければ特徴的な銀髪の天使さまがひょっこり顔を出す。


「今日は魔法薬の研究進んだ?」

「実は全然駄目でした。上手くいきません」

「あの、さ」

「どうしました?」


 アルジェント様の様子がいつもと違っていたような気がした。何かあったのだろうか。


「いや、なんでも無い。それよりまた削ったね?」

「私ってそんなに分かりやすいでしょうか」

「分かるよ。いつも見ているからね」


 私が身体の黄金を削って怪我しているのはすぐに分かるらしい。


 けれど、それ以上はバレてはいけない。隠さないと。

 魔法薬の研究をしていた副産物で、怪我の回復が出来るポーションを作れるようになったこと。……それを使っていないことを。


「そっ、そうだ! この前、頂いた種を植えてみたのです。ほら、芽が出てきました!」

「へぇ、ちゃんと芽が出るものなんだ」


 この他愛のない毎日のやり取りの為に。アル様の回復魔法の方が好きだから、なんて言い訳を胸に閉まって。伝えることが出来ない私は狡い人間だ。


「また来るよ」

「えぇ、また」


 そしてまたお互いに研究室で会う約束をして別れる。


 ***


 今日も研究の日々、上手くいかない事ばかりだ。それに今日、彼はいつ足を運んで下さるのだろうか。研究の時以外は全く会えない彼を思って扉を見つめる。……来た。


「オウラ、今日の進み具合はどう?」

「また駄目でした」

「見たところ完成品のようだよ」

「……いいえ、文献には魔法薬は透明な薬だと記載されているのです。このままで飲んでみても何の変化もありませんでした」

「そう、か。そうなのか。研究には時間がかかるからね。鉢植えの種も育ってそろそろ花が咲く。君の研究だってちゃんと芽が出る。君は学園一の錬金術の秀才だろ?」

「ふふ、なんだかくすぐったいです。えぇ、少しずつですが進んでいますもの」

「削った身体が痛むだろう、手を」

「いつもありがとうございます、天才アル様」

「任せてくれ。歴史上最も魔力量が多い魔法の大天才だからね」


 そしてまた暖かな魔法に包まれる。

 私は知っている。いつも彼が人一倍、それ以上に努力している事を。 


 ***


 なんでもない日が続く日々だった。

 今日もアル様が足を運んでくださった。


「見てくださいアル様! 綺麗な花が咲きました!」

「白くて美しい花だ」

「……表情が暗いですが、どうかされましたか?」


 アル様はいつも以上に暗い表情だ。


「王都の近くに瘴気の穴が出来たらしい」

「誰も立ち入らない森の奥だそうですね。少し大きいのだとか」

「僕が向かう事になった」

「大魔法使いのアル様なら無事に穴を塞ぐ事ができましょう! でも、お気をつけてください」

「……オウラもメンバーに選ばれていたんだ」

「私も、ですか?」

「君の錬金術師としての腕を買われたのが理由のひとつ。そしてもうひとつの理由に……黄金症の人は瘴気の影響を受けづらいからだ、と」

「……また身体の黄金が増えましたものね」

「オウラは僕が守る」

「頼もしいです。けれど、この秀才も頼りにしてくださいまし」


 アル様の暗い顔を吹き飛ばせますように。と、私は胸を叩き、微笑んだ。


「アル様と共に外に出るのがとても楽しみです」


 アル様は緊張した面持ちをようやく緩めてくださりました。

 本当に楽しみなのです。

 この研究室以外でアル様と一緒に過ごすのは初めて会った時以来なのですから。


 ***


 錬金術師の私は主に穴を塞ぐ為の要因として選ばれた。今回向かう瘴気の穴は通常のものよりも大きい。アル様の魔力量なら余裕で塞ぐことが出来るとはいえ、道中も魔物が蔓延っている為、瘴気の穴を塞げる錬金術師科の私や、道中の魔物を倒せる騎士科のトップふたりでチームを組んで向かう。

 もちろんチームメンバーは瘴気を防ぐ事が出来たり、耐性のある者たちが選ばれた。


 指揮をとるのはもちろんアル様だ。


「皆が無事に帰ることが一番の目標だ」


 このメンバーなら何事もなければ全員無事に帰って来られる。でも、私だけは恐らく帰れない。


 今朝から黄金の進みが急速に進んでいる。

 この具合ならきっと今日中には……


「オウラ、どうかした?」

「いえ、なんでもありません。……あ、そういえばお渡しする物があるのです」


 私は小さな袋をアル様に手渡した。


「これは、植物の実?」

「アル様に頂いた植物が今朝実っておりました。これを食べれば魔力が回復します。もしもの時にご使用ください」

「もう実がなったんだね。ありがとう」


「あれが瘴気の穴……? ……聞いていたよりもかなり大きいね」

「早く塞ぎましょう」


 騎士科のふたりが周囲の警戒をしている間に私とアル様で穴を塞ぎにかかる。


「これは、かなり魔力を消費させられるね。さっさと済ませよう」

「はい」


 私の作った穴塞ぎ爆弾とアル様の魔法があればすぐに終わった。大穴をガッチリ固まり一安心、と思ったその時。


「アルジェント様!」


 近くに大きな魔物が突進してくる。森に住む動物が瘴気に当てられて魔物となってしまったもの。


 騎士科のふたりが突進してきた魔物に対峙した瞬間の事、反対側から私たちを遥かに上回る大きさの魔物が襲いかかってきた。

 私は咄嗟にアル様の前に飛び出し——


「アル様!?」


 ——背中に大きな爪の一閃を食らった。


「オウラ!? お前はっ!」


 とんでもない魔力の圧力を背後に感じ、魔物の断末魔が聞こえて沈黙する。

 そしてアル様は私の背中を見て息を呑む。


「オウラ……?」

「安心してください。私に怪我はありません」


 黄金が身体中を侵食しており、先ほどの怪我では痛みすら感じなかった。けれど。


「けれど、もう身体が動かないようです」


 ぱきぱきと身体の中まで固まっていくのを感じる。


「嘘だ……こんな急に。どうして今日なんだ!?」


 何度も何度も回復魔法をかけるアル様。アル様は知っているはずなのに、黄金症は回復魔法じゃ治療出来ないと。アル様は焦りと混乱で気づいていない。首を振るにももう動かない。魔力が無くなったのか私が渡した実を口に運んでいた。


「こんなに進行しているのなら今日ここに来るより研究を……!」

「私は、アル様と、の時間が欲しかった」


 霞む視界でアル様が涙しているのが見えた。


「僕も、君の黄金じゃなくて……! 欲しいのは君との日々なんだよ!」


 嬉しい、と言おうにも口がろくに動かなくなっていた。目も見えない。音すらももう聞こえない。

 口に柔らかな感覚と、喉に液体が伝っていった感覚を最後に私の意識が途絶えた。


 ***


 暖かな日差しを瞼に感じてふと目を開く。


「ここ、は」

「おはよう、オウラ」


 目覚めたまばゆい景色の中で、銀髪の天使が私を出迎えてくれていた。

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