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神になったライオン様

作者: 一発出来茶太郎

 ワシは、永遠の命をもらった。


 1994年3月9日 日本の和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで産湯に浸かった。

 それからの、3年間は母の許で元気いっぱいに育った。母親から母乳をもらいすくすくと育った。小さい時には人間に抱かれて写真を撮ったり、可愛らしい子ライオンだった。


 1997年7月には京都市動物園に移った。名は『ナイル』ワシの祖国ナイル川の様に大きな男になれと言う宿命を持った名がつけられていた。

「ガオー‼」

毎朝良く叫んだ。生まれも育ちも生粋の日本男児だが祖国アフリカを思い良く叫んだ。

 『マリー』と夫婦になり2年の月日が流れ『マリー』はこの世をさった。

後妻を探していたワシは同郷の4歳年下の『きく』と見合いすることとなった。『きく』はワシの名と不釣り合いなため、『クリス』と改名させられたのだった。この経緯のせいでワシは『クリス』に頭が上がらなかった。常に『クリス』の後で、猫じゃらし遊びも『クリス』が飽きた後に遊んだのだった。寝る場所も『クリス』が一番ええ所に陣取ってワシは2番目だった。

たぶん名前を変えられた腹いせで『クリス』は怒っていたんだと思う。

毛づくろいも、毎日の日課だった。『クリス』は女王様だから仕方ない。

ここも、昨今の日本男児の象徴でもあるのかもしれない。尻に引かれる旦那様的な風景だった。

そんな『クリス』も可愛くて仕方がなかった。

毎日、飼育員の方が馬肉を持ってきてくれるのが楽しみだった。

日がな一日日向ぼっこをして、入園者達に不愛想さを見せつけてやったり、自由に暮らせた。

狭い空間であったが居心地は良かった。

 2017年1月2日『クリス』に先立たれた。

 17年間かかあ天下であったが楽しくやってきた。

 それからも馬肉や鶏肉などを一日に5キロは食べられていた。

 それが2019年2月には2キロも食べられなくなってしまった。

 飼育員の松永さんはワシが何でも丸呑みするため、肉を小さく切り刻んだり、鳥の骨尾砕いて与えてくれている。餌にはサプリメントやビタミン剤も混ぜてくれているそうな。

 しかし、歳には勝てず体重も『ナイル』と別れてから20キロ減った。

 足の爪とぎもままならず、麻酔を打ってもらい、手術をしてもらった。

 もう飼育員の力なくしては生きられない運命も悟った。

 でもワシは百獣の王ライオンだ。煮ても焼いてもライオンだ。

 最後までけたたましく生き抜いてやる。もう25歳人間で言えば100歳越え。

 たかが25年されど25年、生き抜こう日1日を1日ずつ。

 でも毎日ワシを見に来てくれる来園者が居るそれでいい。それが、励みになる。

 巷ではご長寿ライオン様として崇められはじめてきた。ワシに会うと長生き出来ると噂が広がりお年寄りが拝みに来るようになった。

 人間なら、まだ20代の若造でも自然界では10年、飼育下でも20年が良い方。

 ワシは生き過ぎた?のかも知れない。

 ワシを安楽死させる話も出てきているというが?

 でもワシは自力で生き自然に死ぬ。それが自然のさだめ。



 しかし、人間は勝手なものじゃった。このワシに永遠の命、さだめを与えやがった。


 長生きしたライオン様として神にされてしまった。


 剥製と言う永遠の姿に変えられ、動物園のお堂に崇められてしまった。


これも一興。


ワシを撫でると100年生きられる。


そう言って人が集まる。


人間の生き仏かのー。


百獣の王らしく気高く居座ってやろうかのお‼


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