流の一
ぼくはその頃派遣先を辞めてやろうか、と思っていた頃だった。
紹介が先だ。ぼくは就職氷河期第一期生、パワハラで大学院を途中までで辞めざるを得なくなり、仕方なく手に付いた技術だけで、技術職の派遣としてメンタルクリニックに通いながら何とか食っていた。
それと、「ぼく」と言っているけど、ぼくは男性じゃない。所謂LGBTQ(今はもっとさまざまな言い方をするようだけど)のQにあたる。トランスジェンダーではなくて、Xジェンダーというやつだ。まあ、何となく「LGBTQなんだな」という把握だけしてもらえればいい。
ぼくはその頃、暇にあかせてTwitter上でちょっとした「ごっこ遊び」をしていた。詳細は面倒だから省くけど、要はTRPGのテーブルがないもののようなことをやっていた。世界観とルールだけ提供されて、それにある程度添いながら独自の解釈で「おはなし」を共同制作するのだから、そう(ごっこ遊び)言ってしまって構わないだろう。
中心人物は何人かいた(ごっこ遊びをきらう面子ももちろんいたので)。ぼくの創作仲間のR、よくからんでいたので知り合ったM、同じくO、それらのやり取りが気になっていて仲間になったK。
ところで、ぼくはこのうちMのことがはじめから気に食わなかった。何故かと言うと、パクり癖があったからだ。例えば、こちらがカラスを連れて歩けば次のときカラスを連れたキャラが登場する、声を使った盲目のキャラが出て来れば声に特徴のある目にも支障のあるキャラが出て来る、そんな調子だ。悪びれもしないのだから余計にタチが悪い。ぼくも当時は「知り合い」だからな、というので強く言えず黙っていた。
ある日Rに「Rもやられてるよね」と聞いたことがあるが、Rも同意していた。
この時点で正すか、正したうえで切ればよかったと思っている。さもなければ、こんなことにはならなかった。
少なくとも、今のようなことには。