ブラックな仕事
知らなくていいコトが、世の中には 沢山ある。キレイ事だけでは 弱肉強食の世界を、生き抜く事は出来ない。
汚れ仕事だって、普通にある。
悪者の末路は、世間一般的に 決まっている。ソレは 自業自得、自己責任というモノだろう?
大人の事情
堪え性のないゴードンとカシラは、それでも 一泊目は 我慢した。ダンジョンの浅い層では、ドロップ肉や 小さい魔石狙いの、日帰り冒険者達が多く 人を襲うのにはむかないのだ。
目的地は、6層 宝石が掘れる、特別な層だ。盗賊団と 警備隊の50人超えの団体は、D級の魔物等 サクサク蹴散らし、3層まで 一直線に、ダンジョンを進んできた。
2泊目の夜である。
「今夜だろうのう?どうみるかね?」マシューおじいちゃんは、白身魚のフライをもぐもぐ食べながら、それぞれに目線を流した。
「今夜でしょうな?あの者達は、堪え性がごさいません。ハイエナの様な、粘り着く 不快な殺気が、全く隠せていませんからね?」執事長セバスチャンは、肉料理から 魔牛マツサカのステーキを、チョイス 桃色岩塩をふりかけた。
「魔牛マツサカのステーキ!最高ですね?執事長は 桃色岩塩で食べますか!不詳マリラは、王道のステーキソースにします!ふふふふっ!」メイド長マリラさん?緩みきってませんか?
「コック長スコットさんは、王宮の料理長をも凌ぐ スゴ腕の料理2なのですね?サクふわの白身魚のフライも、魔牛マツサカのステーキも 素晴らしい火入れ具合で、いくらでも食べられます!あー、襲って来る悪者達は パカラシティーの為にも、キレイに掃除しましょう!」フィンは、問題ありませんよと 笑って話す。
「イーサン坊っちゃんが、ここにおられないのは 本当に良かった!3歳で 対人戦は、まだ早いってもんですよ。勇者のタマゴなら、コレから 嫌というほど、対人戦もあるんだろうけど、もう少し 大人になってからでいいってもんです。」2枚目の ステーキを食べながら、料理長スコットは 少し不機嫌に話す。
「レディジャスティス様のおかげ様じゃのう?空間魔法の穴!?が、突然現れたのには 本当に驚いたが、ヒカル様の居場所に 繋がっておるとは、便利な穴じゃったのう!錬金術魔術で 何とか造りたいものじゃが、難しいじゃろうな。」
「小さな穴で、ワタクシ達は 入れませんでしたしね?全く ヒカルも、潜入調査は ナシのツブテで、殆ど 連絡もありませんでしたから。ホウレンソウが、なっていません!合流したら お説教です!しかし、レディジャスティスの加護を 貰えたのなら、僥倖このうえありません!」フィンも ステーキ2枚目!
「イーサン様の 勇者率、爆あがりでございます!合流したら お祝いの宴をいたしましょう!」コレから、50人との戦闘が待ち受けているのに、お祝いの宴の計画に 話し合いは進行していってる。
食後のお茶のあと、4人は ダンジョン散歩に出た。わざわざ奇襲を 誘ったのだ。結構な距離を歩いた。
「オホホホ、ちゃんと襲って下さいね?テントからは、やっぱり離れていないと 気持ちよくありませんからね?」マリラさん 笑顔が悪い!
「全員参加ですね?ゴードンもカシラも 一番後方でにいます。私が 切り込みますので、雑魚は 皆さんにお願いします。」薬草を 摘むふりをしながら、フィンもニヒルに笑った。
「これはこれは皆様こんばんは!ダンジョンの夜に 何をされているので?危のうござりますよ?ワタシどもが、護衛いたしますが 夜は危険度が増すので、夜出歩くのは お勧めいたしませんでございます!」宝石店のマネージャーは ホクホク顔が、だだ漏れだ。
「夜にしか咲かない、薬草があるのです。もう少し先に見かけていたので、お付き合いくださいますか?」執事長セバスチャンは、そういうと 散開する合図を出した。
「全員もれなく、戦闘に入ったようじゃの?儂も ボチボチ行くかの……悪者退治じゃ。」マシューおじいちゃんは、新兵器の ショットガンを、ガチャリとならした。
「彼奴等、本当にバカか!? 夜のダンジョンを ナメていやがる!まあ 棚ぼたのチャンスだし、チキンと襲って 皆殺し!お宝は 光金貨だっ!お前らっ 行くぞっ!!」カシラは 上機嫌だ。
「ガハハハっ!警備隊 出動!」ゴードンは 笑いが止まらない。
何故か散開する 4人のターゲットに、それぞれ12人程で襲う計画だ。楽勝のハズだ。
ピュー!と カシラの指笛が鳴った!全員で ○探検隊服を着た、獲物に襲いかかる!フィンに 普通の槍な刀剣で切り付けても、魔剣グラムで 武器ごと、真っ二つにされてしまう!!
「っ!?」声をあげる間もなく バタバタと倒れる盗賊団や 警備隊員。
「あいつら 何をやってる?」少し離れて 戦闘を眺めていたゴードンとカシラは、首をかして 仲間が、まるで抵抗も出来ず バタバタ殺されらのを見た。
走り来るフィンの速さに、大慌てで ギンギラギンの宝剣を、ジャキンと抜いたゴードン、
「お前らっ何をしやがるっ!警備隊員を殺したら 犯罪奴隷落ちだぞっ!抵抗はやめろっ!」ツバを飛ばして フィンに言い募る。
「フン!悪者退治して 何が悪いと?ちゃんちゃらおかしいですね!?襲って来たのは 警備隊員と、盗賊団でしょうに?それでも 一応警備隊員とかなら、後腐れなく皆殺しですね?死人に口無し!ダンジョンの 養分になってもらいます!フフフ…アナタもダンジョンに 吸われてください。」フィンは ゴブリンにでも、話しかけるように ゴードンに最後通告した。
「なっ!何をっ!」ゴードンが、ギンギラギンの宝剣を振り上げた途端 フィンの魔剣グラムは、ゴードンの心臓を一突きした。
「ぐおっ!ぉぉぉぉ…」おかしな叫び声をあげながら、カシラは キャンプの方角へ、必死で走った。逃げなければと それしか考えられなかった。化け者が ゴードンを殺した、アイツ(フィン)は、魔人に違いない…アイツは 悪魔だ!自分は、悪辣な盗賊団のクセに 自分を襲う者は、更に悪者らしい。
はアッ…はぁハァハァっ…必死に走った先に 立ち塞がるのは、白髪頭の老人1人…弱い者に強いのが、盗賊団のカシラというものだ!
「じいさん!光金貨の入った アイテムBOXを出せっ!あんな化けモンに 付き合っちゃいられん!死んじまったら もともこもないからな!サッサと お宝を出しやがれっ!」曲刀を 振り被り、カシラは 老人に襲いかかる!勝つに決まっているのだ、カシラは 笑いながら、言い放った。が・・・
パア〜ん・・・と 轟音が一回。
カシラは、一瞬 自分の眉間に埋まる前の 凶悪な銃弾を 目視した!!ソレは 奇跡だろう!
しかし…それだけだ。カシラは タダの骸になったのだから。
「終わりましたね!?全く 作戦もなく、ただ 襲って来たので斬り伏せましたが、コレだけの人数そろえただけとは、無駄にも程がありまはよ!」
「後片付けは ダンジョンにまかせましょうぞ!しかし、悪者の持物でも 装備等ダンジョンが吸えない物は、パカラシティー復興資金として、拾わなくてはなりません。面倒くさいし 気分も良くありませんが、仕方ないですからね。」フィンとセバスチャンさんは、苦虫を噛み潰したような顔で 話している。
「家に帰るまでが 遠足です!じゃからのう、ひと晩眠れば 死体はダンジョンが吸ってしたうじゃろ、後始末は 明日じゃよ。テントに戻って 温泉にでも入ろうぞ?キレイサッパリ汚れは 落とさんとのう?」
「美味い肴を 用意しますぜ!!風呂あがりに 酒でケガレもすすぎましょうぜ!!」
「ソレっ!ソレよ!! 大人は そうでなくちゃあっ!」マリラさんは 明るく笑った!
パカラシティーの 悪者は、一掃された。まあ、終わり良ければ全て良し!だろう?
「さて、後始末もすんだんじゃが せっかくダンジョンに来たのだから、○○していきんじゃろ?」マシューおじいちゃんは 破顔した。
「そうでございますね?チャンスは モノにいたしませんと!」セバスチャンもいい笑顔だ。
「コレから、ゲットする石達は 個人的に貰っていいのですって!!興奮しますわっ!」
「岩塩も 鉱石にはいってますかね?幻の竜の涙(岩塩の名称)が 採れたらっ!!」
「願望が だだ漏れじゃのう、フォッフォ 3日じゃ!3日間自由時間とするからの?6層だけじゃぞ?掘って掘って掘りまくれ!お宝さがしじゃ!」マシューおじいちゃんの号令で いい大人達は、奇声をあげながら またもや散開した。
数日後、パカラシティーの 元ゴードンに屋敷に、某宝石店の店員が 訪ねて来た。サラは 仕方なく玄関で、店員の話しを聞く。
「何だッテ!? ゴードンがダンジョンから、お宝を持って帰って来たのかい!?ソレで このルビーのネックレスセットをつけて、今夜 打ち上げパーティに出て来いってか?フフン見せてみな?」サラは、小者店員が持っていた 小さくない、宝石箱を引ったくって開けた。血のように真っ赤な ルビのネックレスと ピアスのセットが、ギンギラギンと輝いている。
「ゴードンに、世界一美しく着飾ってみせるから、ちゃんと風呂に入って ダンジョンの汚れを落としておきなと、ちゃんと伝えときな!」と、サラは 手でお使いの店員を、追い払った。
鼻歌を ふんふんしながら、散らかり捲くって 足のふみ場もない、寝室の 豪奢なベットに座り、ルビーのネックレスを手にする‥。ズッシリ重いネックレスに、ふと違和感を覚えるが、サラは 今までで、一番高価で 大粒のルビーが、並ぶネックレスだから こんなモノだろうと、ルビーのネックレスを カチッと首につけた。ベットに座り 鏡になっている壁に、自分の姿を見た。ルビーのネックレスから 真っ赤な光がパアッとサラを囚えた!
「なっ!!?」………サラは、無防備過ぎた。人の姿になった期間が、長すぎた。
真っ赤な輝きが消えた時 そこには、散らかり捲くった寝室しかなかった。サラの姿も 宝石箱もなかった。




