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決意

クロから見た空の戦闘は酷いなんてものじゃなかった。

奇襲だと言うのに声を張り上げ突っ込んでいき、小鬼の1匹目掛けて思いきり槍を振り下ろす。

槍とは言っているが棒に砕いた石をくくっただけのものではろくにダメージを与えらる筈もなくら小鬼は1度距離を取るために空を突き飛ばした。

突き飛ばされて尻餅をついた空は直ぐに体勢を立て直そうとするが、その時には既に武器を拾った小鬼が迫る。


尻餅をついた状態のまま情けなく後ずさる空に幸運の女神が微笑んだ。


小脇に抱えていた槍の石突が小石に引っかかり、その反動で槍が上を向き、そこに小鬼が突っ込んだ。

槍は小鬼の喉に刺さり、自分の血で溺れるように小鬼は事切れズルズルと空に覆い被さるように倒れた。


「勝った…のか?」

「空が生き残り、奴が死んだ。だとするならば、勝ったのではないか?」

「そう…そうか。そう、なんだよな。俺がコイツを殺したんだよな。」


一方、クロはと言えば空が声を張り上げで突撃したお陰で小鬼は2匹とも注意が空へ向き、その隙を突き後ろから首に噛みつきそのままねじ切る。

何とも呆気ない幕引きであった。


それから空が立ち上がれるようになるのを待ち、2人は洞穴へ帰路につく。

2人はヒトが使っていたであろう鉄の剣とナイフ、革の盾、小鬼の持っていたレイピアと石の斧、そらから元はどちらの所有物かは分からないが革の巾着の様な袋とその中に入った干し肉やら水袋を持ち帰った。


夜、食欲の湧かない空は、飯もそこそこに洞穴を出て月を眺める。


「どうした、悩み事か?」


珍しく四足歩行をするクロがゴロゴロと喉を鳴らしながら頭を押しつけてくる。

腐ってもクロは猫なのだ。


「悩みって程じゃないんだけどさ、いつ死んでも構わないと思ってたんだ。いや、思ってるつもりだった。でも、死を目の当たりにして俺ビビっちゃったんだよ。死にたくないって本気で思ったんだ。それが何でか自分でも分からなくて。」

「ヒトとは実に難儀な生き物だな。死にたくないのなら生きれば良いではないか。腹が減って飯を食う事に理由がいるのか?ならば死にたくないと思うことに理由などいらないだろう。」

「うーん。そういうもんか。」

「そんなもんであろうよ。」


クロのどことなく的外れな気もする持論に首を傾げながらも空はこの世界で生きていくことを決意する。

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