寝床を探そう
「…知ってる天井だ」
マジかこれ、いわゆる一つの詰みだろ。
数時間前に見た天井と誰もいない村を眺める。
「一度死ぬと目覚めたところに戻るのか、もしくはセーブポイントにすらたどり着いてないのか?」
おそらく後者だろう、アタリを付けながらバカデカい独り言で状況を整理していく。
辺りは少なくとも現段階で行ける範囲では廃村と森しかない。
オレのステ、当然レベル1で職業はデフォルトである旅人と言う名の無職。
時間だけは変化しているようで霧がかったような朝から少し先も見えない夜になっている。
…さっきよりキツくなってるじゃんね。
いやちょっと休憩、これはゲーム時間が昼になるのを待つ方が良さそうだわ。
「とりあえず休憩だな」
オレはログアウトを選択して現実へ華麗なる撤退を遂げた。
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ここまでVRゲームを遊ぶにあたっての知識は学んできたが
実はこのゲームのことについては全くと言っていいほど下調べをしていない。
別に調べても良いんだけどやれる限りは1人のんびり進めてみたい所存だ。ニートは時間や効率に縛られない。
それはそれとしてどうするか、サブ垢作って助けに行くか?でもそれって中身は自分とはいえ《孤独な人生》とは違う気がする。
せっかくなら最後まで孤独に足掻いてみたいもんだ。
結論、もうちょっとだけ頑張ってみよう。
というわけで黙々とご飯を作り洗濯物を取り込んでいそいそゲーム部屋へ急ぐ。
今日の昼ごはんプチトマトがいい味出してたな、また買ってこよう。
♦︎
「ログインオッケー、時間はどんな感じかな?」
外が薄暗い、これは明朝なのか夜になりかけなのか分からないな。
街に向けて歩いていたときのことを考えると大体2時間で1日っぽい。
「普通に街を目指せばまた飢え死にするのは目に見えてるな」
じゃあどうすれば良いのか、頭では分かっているがオレの中のアツイ冒険者魂(今日はじめたて)が否定する。
「ウソだろ、オレは、オレはただ自由気ままな冒険がしたかっただけなんだぞ?」
オレは思わず声を震わせ呟いた
「ここを…開拓する…!」
次回、ぼっち村。ご期待ください。