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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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セファ元帥とセルゼ総大将

ブックマークありがとうございます。


今回の章は、ちょっと長いです。

「…余程、参っていたんだな…。まあ、普通そうだよなあ…」


「あ…。誰か来て静かになったみたいですね」


「…ああ、セファの元帥とセルゼの大将だな。あの大将のおかげで話が早くて助かったんだ」


二人は結界まで来ると それを確認するように観察し、何かを言い合ってからネイサンに向けて結界を指差しつつ手を振って来た。

良い歳のおじさん二人が嬉しそうに手を振っているので、仁は「ふふ…」と笑ってしまう。


「ジン。とりあえず、あの二人が通れる位の隙間を作ってくれ。入れたらすぐに閉じるんだ」


「はい」


仁が入り口を作ると、元帥と大将は少し警戒しながら入って来た。

後ろから兵士たちがなだれ込もうとしていたが、さっと閉じられた結界に阻まれて潰れていた。


「何をやっているんだ、お前らは…。さっさと休め。まだ終わったわけじゃないぞ。今の内に少しでも体を休めるんだ!」


大柄なおじさんが大きな声で叱咤すると、アタフタと結界から離れて野営の準備を始める。その様子をため息を付きながら確認した二人は、改めてネイサンたちの元に歩み寄った。


「…ネイサン、後ろから見ていたが…凄かったな!役職にいなければ、かぶりつきで見たかった!実に興奮したよ!」


大柄で丸い耳を頭に付けた熊のようなおじさんは、ネイサンの背中を叩きながら言う。

苦笑いのネイサンを見るに、こういう人らしい。もう一人のおじさんも筋骨隆々であるが、先のおじさんと違い知的な雰囲気である。


「…申し訳ない…アレはセファ元帥のシェロモ。私はセルゼ軍総大将のコーレシュ」


優雅な一礼を持って、仁とビイナに挨拶してきた。仁はどうしていいかわからず、ビイナより少し下がった。ビイナはそんな仁を見て口元を緩める。


「…セルゼの大将なら知ってると思うが…わしはビイナ。それと、こいつはネイサンとわしの弟子でジン。一応、覚えておくと良い」


ネイサンとビイナ、二人の弟子と紹介されて顔を真っ赤にして頭を下げる仁。

なんだか今日はビイナさんが優し過ぎて怖すぎる…!心の中で動揺を抑えようと必死である。


「ええ、ビイナ様。もちろん存じておりますとも。魔導魔術を学ぶ者にとっては指針であり大きな目標でもあります」


そう言って、もう一度ビイナに丁寧なお辞儀をする。

いつものビイナなら「堅苦しいのはごめんだ」と言いそうな所だが、泰然と構える姿は優美に映り…正直ビイナではないようだ。顔には出せないが、ビイナの外向きの顔を見たのが初めてだった仁は相当戸惑っていた。


「それから…ジン、でしたな?」


「はい…」


方向性は違うけれど、このヒトも渋くていい感じねぇ…目の保養になるわあ…。戸惑いながらも、まじまじと正面から見て思う仁。


「先程の結界と魔法、ビイナ様と共に成したとはいえ…実に素晴らしかった!今後とも是非我々と…」


「そこまでにしてくれ」


ネイサンがシェロモをいなして来てくれた。ホッとする仁。


「ネイサン、何を言うんだ。ここでしっかりと知り合っておかねば、また君たちのように隠遁されてしまった時に困るではないか!」


「…度の過ぎた力は混沌をもたらす。俺たちみたいのは、必要な時に動ければ良いんだよ」


頷くビイナ。仁は蚊帳の外気分でやりとりを見ている。


『ままー!このヒト気持ち悪いー!』


ユキからの念話にバッと後ろを振り向く。見ればシェロモがユキににじり寄っている。

ユキがハッキリと嫌がっているのに止めない感じなので、仁はつい…


「あたしの従魔にしつこくするなら、相応の覚悟をしてもらいますよ?」


強い口調で言い放ってしまった。軽く怒気も出てしまっている。


ユキちゃんは周りの空気を呼んで我慢していただけなのよ?そんな健気なユキちゃんを虐めるなんて許さないわ。セファの元帥だからって何よ。ライラさんの方がずっと強いわよ?


…仁の比較対象が、すでにヒトで無くなっている…


シェロモも仁の本気に晒されて正気に戻ったらしい。脂汗をかきながらギギギ…とぎこちない動きで仁の方を向く。

ネイサンもビイナも「これは仕方ない」と静観を決め込み、コーレシュもそれに倣った。


「いや…あの、ですな、実に可愛くて美しい従魔で…つい…」


「…主の許可もなく近付いたら、従魔に敵認定されて殺されても仕方ないんですよ?知っていますよね?もしそれでこの子が咎を受けるっていうなら、あたしは金輪際セファの為には動きませんからね」


ユキは仁が味方してくれたが嬉しくて、足にすりすりしている。


「……」


固まるシェロモ。仁から受けた印象が柔らかかったので、ここまでキッチリ言われるとは思わなかった。力が抜けてガクリと膝を付くシェロモ。


「すまん…」


一言、言って項垂れた。丸い耳がショボンとして可愛いが、仁はまだ怒っている。しかし元々が温和な性格だ。怒りを持続させるのも疲れる。

何も言わずユキを連れてネイサンの元に戻り、後は成り行きに任せようと決めた。


ネイサンとビイナは口元を押さえて笑いを堪えていた。

仁が他人に向かってここまでハッキリとモノを言うのも珍しかったし、さっきの豪快な元帥が項垂れてしょんぼりしているおじさんなのも面白かったのだ。


「…ジン、お前さん、あれが誰だか分かってて言ったんだよな?」


片手で口元を隠しながらビイナが聞いてきた。


「もちろんですよぉ。でも、ユキちゃんを虐めるヒトには容赦しませんよ?」


「んふっ…じゃあ、どうしたら許してくれますか?」


さりげなく笑っていたコーレシュが聞いた。

仁はちょっと考えて、気になった事を言ってみた。


「…あのお耳、触らせてくれるかしら…?」


どはっ! そんな感じで三人は遂に噴出してしまった。

何でそんなの笑うのか分からずに首を傾げる仁。ユキにも聞いてみるがわからない。


結界の向こうでは目の利く者が元帥が膝をついて呆然としているのに気が付いて指を差していたし、ネイサンたちが笑っているらしいのと合わせて不思議そうに見ていた。


「はは…耳は勘弁してあげて下さい…。獣人の耳は主君と伴侶しか触ってはいけないらしいので…」


「あら…そうなんですねぇ?残念だわ…」

きっとモフモフして気持ちいいと思うんだけれど…。


仁はまだ座り込んでいるシェロモを見やった。そして少し首を傾げて考えてから、キラキラと瞳を輝かせて悪戯っ子のような表情を浮かべるとシェロモに近付いた。


「…ねえ!シェロモさん!その耳、触らせて?」


突然の行動にコーレシュが驚いた。

ネイサンとビイナは仁の意図が分かったので放っておいた。二人で目配せして含み笑いを漏らす。


「え、ちょっと、それは…ネイサン、ビイナ様、止めて下さいよ…!」


「大丈夫だよ。落ち着け、コーレシュ」


ネイサンの言葉にオロオロするコーレシュだが、ネイサンもビイナも優し気な表情で仁を見ているので少し落ち着く。


「そ、それは…あのですな…」


「耳を触らせてくれたら、許してあげますよ?」


「い…いや…あの…」


ジリジリと後退するシェロモとにじり寄る仁。ついさっきシェロモがユキにしていたのと変わらない。コーレシュも「ああ、なるほど」と会得がいって傍観を決めた。


「どうしたんです?ちょっと触らせてくれれば良いんですよぉ?」


手をワキワキと動かしながらニッコリと口元だけの笑みで迫る仁に、どう逃げようか考えていたシェロモがはたと気が付いた顔をした。脳筋とはいえ、さすがに元帥を務めるだけあって回転は速いようだ。


「ああ…なるほど…」


額に手の平をピシャリと当てたシェロモ。頭をくしゃくしゃと掻いて、改めて仁を見る。


「…今、貴殿がしているのは…さっきのワシの行動なんだな…?そうか…こんなに嫌な事だったんだな…。本当にすまなかった…!」


仁は、今度は心からの笑みを浮かべてシェロモを見た。

その優しい笑みに、一瞬心を捕らわれるシェロモ。頭を振って払う。


「分かって下さったなら良いんです。獣人のヒトには大事な耳なんですよね?あたしも、ごめんなさい」


仁は自分もひどい事をしたと謝った。それに慌てるシェロモ。

傍観していたネイサンは「なんというか…あいつの、ああいう所には勝てない気がするな…」とビイナに漏らし、ビイナも「結構なヒトたらしだよな」と答える。

コーレシュは「なるほど、こういうやり方もあるんですね」と呟いた。



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