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異世界はOKAMAの夢をみるのか  作者: ぶんさん
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仁とビイナ

ブックマークありがとうございます。

『…何だ。遅かったな。来ないのかと思ったぞ』


魔力を見つけるどころか、念話まで飛んできてちょっと焦る仁。

こんなに離れていても会話出来るものなの?それともサマエルだからなの?


『居てくれたのね…。ありがとう。あたしと従魔、他に二人が行くわ』

『おーう。お前がこっちに来た瞬間にオレはアメカーヤに飛ぶからな』


『…待って。アメカーヤに現れたのは、あなたの仲間?それとアメカーヤ兵に弱点はあるの?』

『さてな。確実なのは骨も残さず焼く事かね。さあ、さっさと来いよ』


仁の問いかけに簡単に答えるサマエル。仁も時間を掛けている場合では無いと分かっているので諦めた。


「…せんせー、ビイナさん。見つけました。ユキちゃんは影に入っていてね。…行きますよ…」


ネイサンは仁の肩に掴まり、ビイナは腕にしがみついた。さすがにネイサンの前で何度もおんぶされるのはイヤだったようだ。



「着きました。ここ、セファで間違いないですか?」


聞かれた二人は、ゆっくりと周りを見渡した。

間違いなく、セファとアメカーヤ、ツォルの国境に位置する渓谷のセファ側。下方からは激しい戦闘の音が聞こえてくる。兵士たちは剣で、魔術師は後方から魔法を放ちアメカーヤ軍を止めようとしている。


…わざわざこんなに条件のいい場所で待っててくれたなんて…やっぱりサマエルは信用できるヒトだわ…。仁は再認識した。


「ああ。間違いない。…お前さんの追った魔力の持ち主は、余程の事情通のようだな?」


少々、危険な目付きで仁を見るビイナだが、仁はただ頷く。


「…一気に制圧するか…」


状況を見ていたネイサンが言うが、ビイナが待ったをかける。


「なあ。この辺一帯を焼いていいなら、わしとジンで一息に片付くぞ?」


「おいおい…。凄い自信だな」


ネイサンがビイナを見て苦笑する。


「わしだけなら取りこぼすかもしれないが、ジンとやれば…まず逃げ場はないだろうからな」


意外な高評価に驚く仁。嬉しくて思わずニンマリしてしまう。


「…お前もこの状況で笑えるんだから大したもんだよな…」


呆れるネイサン。言われて顔を押さえる仁。


「…セファ側は想像以上に疲弊しているし、急いだ方が良いな」


「敵がアレじゃなあ…。ジン、魔力は大丈夫か?」


ビイナが聞く。


「はい。問題ないです」


「…これだけの距離を移動して問題ないってのも凄いな。さて。そういう事なら顔つなぎに行ってセファ軍を撤退させるように言ってくる。俺一人の方が交渉しやすいから、二人はここで待っていてくれ」


「分かった」


「あの…せんせー、ここまで念話は届きますか?」


「…どうだろうな。何でだ?」


「せんせーの用事が済んだら迎えに行けば早いなって」


「ああ…」ネイサンは納得したが、保証は無いと答えた。

通常使うのは相手が見える範囲らしい。やはりサマエルがおかしいのだろう。


『…ネイサン…見つけた…』


丁度良いタイミングでルアフが来た。これで連絡係は問題ない。


「よし。ルアフ行くぞ」


いつものように肩に乗るルアフと共に、ネイサンは走り去った。

その姿はあっという間に見えなくなる。


「せんせーって、本当に格好いい…」それに、頼りになるし…素敵だし…


うっとりした顔から知らず称賛の言葉が漏れている仁に「うへえ…」となるビイナ。

正直、ここまで惚れ込んで心酔するものどうかと思うよな…と思うのであった。


「…ビイナさん。せんせーを待つ間に、コレ食べませんか?」


ネイサンを見送った仁は、バスケットに入ったクッキーを差し出した。

もちろん、お茶もある。


「…こんな時に、こんな所で…ジン…」


ビイナは真面目くさった顔でつかつかと仁に近寄り、思い切りクッキーを頬張った。「美味い」嬉しそうな顔にニコニコとお茶を出す仁。


「だって、せんせーが居たら出せませんもの。戦闘に関しては凄く真面目っていうか…」


「…それは違うぞ。冒険者ってのは如何に荷物を少なく、かつ如何に必要なモノを持って行くかを考えなくてはいけないんだ。そうなると必然的にメシは傷みにくくて嵩張らない携帯食や固いパンになる。食える物があるだけ良いんだよ。状況次第では腹に何かを入れる事さえ出来ない事もあるしな。遠征中に美味い物を食うなんて発想自体がないんだ」


「そうなんですか?」


「お前さんがおかしいんだよ。普通はマジックバッグを持っていても容量の限界があるし 早いか遅いかの違いで時間経過もあるから、やっぱり荷物は吟味するしな?…第一、ネイサンは遠征中にお前さんが出した料理やマジックバッグに入れた料理は文句も無く残さずに食べてるんだろう?…な?出来る事なら美味い物を食べたいんだよ」


「…じゃあ、行く前にご飯にすれば良かったですね…」


シュンとする仁。


「いや…どの道、今は気が張っているだろうからな。このくらいが丁度良かったんじゃないかな」


クッキーをヒラヒラさせて見せるビイナ。

仁は大急ぎでネイサン用のペアバッグに軽い食事やお菓子、お茶を入れて満足そうに頷く。


「これで、せんせーの分も確保です」


「…全くなあ…魔法陣でマジックバッグなんて…良く思い付いたもんだよ…。というか、普通は魔法陣の描き換えなんて出来ないんだけれどなあ…」


仁はマジックバッグを作って怒られたのを思い出して、ちょっと体を小さくした。

そんな仁を見て苦笑するビイナ。しかし、笑みがすっと消え真面目な顔で仁を見る。


怖い…


仁は居心地の悪さに身動ぎする。また、ナニを目標にここに来たのか聞かれるのかしら…と思って言い訳を考えるが思いつかない。


「ビイナさん、怖い顔してますよぅ」


「…なあ、さっき言った作戦を実行すると多くのヒトを消滅させる事になるんだが…お前さんの覚悟は出来ているのか?」


あら、違った…。あたしを心配してくれていたのねえ…。

仁は薄く、寂し気な笑みを浮かべた。


「…ライラさんの時にも言いましたけれど…ソケネの手に掛かったヒトたちは、もうヒトじゃないんですよねぇ」


仁は戦闘の音さえなければ絶景であろう渓谷を寂し気に見つめる。


「…ヒトがヒトでなくなってしまったなら…せめて、その尊厳を守ってあげたいと思うのは…驕りでしょうか…」



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