イーチェと再会する
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魔法陣の近くにイーチェとナーリが立って居たのだ。
ネイサンも驚いてナーリに話しかける。
「ねえね!」
抱き合う二人。仁もイーチェも再会が嬉しくて仕方ない。
ユキも二人の周りを跳ね回って喜んでいる。
「でも、どうして?」
「夕べ知らせを貰ってマーロウに相談したら飛竜兵を一騎、貸してくれたんですよ。滅多な事では使えないけれど、ネイサンの役に立てるならと」
皆に一度に説明したいから…と側に来たナーリが答えた。
「ナーリさん。いっちゃんのお世話、ありがとうございます」
仁は深く頭を下げる。
「こちらこそ、イーチェとの毎日は楽しくて困るくらいですよ!」と慌ててそれを止めるナーリ。
「空を飛べば、王宮までもあっという間でしたよ。怖かったですけども。けれども王宮に着いたら、お二人共いないというし…イーチェの機嫌はどんどん悪くなるし…」
「だって!ねえねと会いたかったのに!」
頬を膨らませて抗議するイーチェ。可愛すぎると抱き締める仁。
「じゃあ、ここまでも飛龍で来たのか?」
ネイサンが聞いた。ナーリは頭を振ってイーチェを見る。その顔は既に父親のようだ。
「飛龍はすぐに返したよ。貴重だからね。でも、王宮の転移魔法陣を見たイーチェがね…これなら少し手を加えれば 自分の魔力でもっと効率良く簡単に発動出来るって言い出して。魔術師たちが止める間もなく、さっさと描き換えてしまったんだ」
得意げに頷くイーチェに苦笑するナーリ。短期間でずいぶんと仲が良くなったようで少し寂しい仁である。
「ビイナ様のおかげ…」
「そうだな。この魔法陣なら、連続で複数回使っても疲れまいよ」
ニコリと笑いかけるイーチェの頭を撫でるビイナ。教え子の成長は嬉しいものだ。
「…とりあえず一度、王宮に戻るか?」
「あの…ここが信頼できる人に任せられるなら、直接セファに行きませんか?」
ネイサンの問いかけに、イーチェとの時間を取りたがると思った仁が意外な事を言い出した。
「セファに行くって言っても…お前さん、行った事ないだろうし知り合いもいないだろう?」
仁は少しばかり歯切れ悪く「知り合いというか…知っている魔力というか…」と答えて黙り込んだ。さすがに魔族の事は言えないので困る。
「…まさか、ソケネを追うつもりじゃ…」
ビイナの言葉に驚いて、慌てて頭をぶんぶん振って否定する仁。さすがにまだ、そんな無謀な真似はしたくない。セファに居るとは限らないし、するとしたら最期の時だ。
ポン、と頭に手を置かれてドキッとする仁。しかしネイサンは問いただすつもりは無いようだ。
「行けるなら、その方が良いだろうな。軍の魔術師は優秀なのが多いが後方支援が主だし、俺たちほど自由が利くのは居ないだろうからな」
「…まあ、ネイサンが言うなら仕方ないか…」
わしはあんまり表に出たくないんだがなあ…ぼやくビイナ。
ビイナ、ネイサン、仁。この三人で、恐らくは正規軍一軍以上の働きが出来るのではないだろうか…。ここに来てから漏れ聞いた冒険者たちの話を脳裏に思い浮かべ、ナーリは一人 身震いした。
*
セファに行くと決めたビイナとネイサンは、それぞれ王宮宛てに書簡をしたためてイーチェに渡した。
「君はこれからは王宮で生活する事になるのだ。書簡を渡す程度の案件位こなせなくては困る」と言うビイナの主張からだったが、任せられたイーチェは「ふんす!」と鼻息も荒くガッツポーズで答えて周りを和ませた。
そして、ネイサンは主な冒険者に今後の行動を説明してハームやエルに後を任せる。
「…なあ、ネイサン」
アロンが、イーチェと仁が戯れているのを見ながら聞いた。
「何だ?」
「なんで、ねえねなんだ?」
「…俺に聞くな…」
何故、どいつもこいつも俺に聞くのか…。ネイサンはため息をついた。
その肩には、まだルアフが乗っている。別に体重がかかるわけでもないので構わないのだが、常に目に入るのは鬱陶しい。
『ルアフ、お前もジンの魔法で移動するか?』
『私も行くけど、飛んでいく』
『わかった。なら、向こうで会おう』
ルアフは頷いてネイサンから離れて仁の元に行く。
『ジン、もっと魔力が欲しい』
『ルアフ、ままに甘えすぎ!』
「…駄目よぅ、ユキちゃん。でも、なんでかしら?」
ルアフは、自分は空を飛んでいくからだと説明した。仁は「分かったわ」とルアフに魔力を分ける。魔力を貰い受けながら、ふと思い出したようにルアフは仁に聞く。
『ねえ。何で魔法使わなくなったの?』
仁は、ちょっとドキンとした。さりげなくビイナの目もこちらを向いたのを感じる。そういえば、ルアフさんのは普通の念話とはと少し違うのかしらね?ルアフさんが見える人には聞こえる感じ?
「特に理由は無いのよ?やってみたら効率良く魔力が使えたからなの」
嘘ではない。
『やっぱり、ジンはおかしい…』
一言残して空に舞い上がっていく。こういう時のルアフさんは精霊っぽくて本当に綺麗よねえ…仁は見送りながら思うのだった。




